1496 下ノ崎=下北郡佐井村大字長後(青森県)前には素通りしていたので今回は福浦港に降りてみた [岬めぐり]
下北半島のマサカリの刃に当たる部分は、仏ヶ浦に代表されるような断崖の海岸線が大間崎から北海岬まで南北47キロに渡って続くが、厳密に言うとその切れ味の鋭そうなところは南半分、福浦の下ノ崎から北海岬までの22キロくらいと言ってよいだろう。
西の津軽海峡に向いた刃の、ちょうど中間にある福浦港で、ポーラスターを下船したのもそのためだ。が、前述のとおり同乗の他の客はみんなその一つ前の牛滝港で降りていて、それは仏ヶ浦観光の遊覧船に乗り換えるためだった。
みなさんが用のない福浦までやってきたのは、下ノ崎と福浦崎チェックのためで、当方は前に行ったことがある仏ヶ浦には今回は用がないので、ポーラスターで往復通り過ぎる。
下ノ崎から北には、佐井村と大間町の境界にある津鼻崎まで岬がなく、その間北北東に17キロもある。
下ノ崎と福浦崎に挟まれた狭い入江の奥にある福浦港には、ほんのわずかな隙間を縫うようにして、船は岸壁に着く。操船技術もかなりの慣れが必要だろうと素人にもわかるくらいだ。船を迎えに出ていた係の人に聞くと、少し風や波があると、福浦港には寄らずに行ってしまうことも多いという。
でんでんむしが降りたので、誰も乗客がいなくなったポーラスターは、また狭い水路を抜けて佐井港へ向かっていった。その船が次の便で折り返してくるまで、この福浦で待つことになるが、自転車で港までやってきていた係の人にくっついて、民宿兼シーラインの切符売り場まで行き、帰りの乗船券を買っておく。
岬の付け根部分の斜面に、小さな赤い鳥居と祠があるのがなにやら微笑ましく思えるのも、この好天気のせいかもしれない。空も海も青く澄んでいて、これといってなにひとつ見せ場のない港を明るく映えさせてくれる。
下ノ崎の先端の向こう、遠くに霞んで見えるのは、津軽半島北部の高野崎と龍飛崎。そして津軽海峡を挟んで右手に薄く見えるのは北海道の南端部で、その先端は白神岬となる。
この間の海の下は、深いところでは水深140メートルあり、その海底からさらに100メートル下の地中を青函トンネルが通っているわけだ。ここからいちばん近いところで39キロ先の海面下にあるトンネルの全長は約54キロ近くあるが、そのうち海の下になるのは23キロちょっと。そんな海の底なんかにトンネルを掘ったりしたら、底が割れて海水が浸入してくるのではないかという素人の心配も、あながち杞憂ではない。海底から100メートル下というのは、そういうリスクも計算されたうえでの深さであるらしい。その海底トンネルを、現在では北海道新幹線が1日に13往復していることになる。
でんでんむしも何度かそこを通り抜けたが、そんなときに東40キロにある海岸のことなど、まったく思いも浮かばない。見えないということは、そういうことなのだ。
下ノ崎から遠く見える海の下を想像してみるが、これひとつとってみても人間のやることには限りない驚異を覚える。その割には、その同じ人間がつくる国の政治や社会などでは、何度選挙をやってみてもまったく進歩もなく、相変わらずのように思える。
▼国土地理院 「地理院地図」
41度19分42.78秒 140度48分8.07秒
東北地方(2017/09/05 訪問)
タグ:青森県
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