1490 鼻繰崎=青森市大字久栗坂(青森県)久栗坂石の採石場に削られつつある岬は白茶けて… [岬めぐり]
こことまったく同じ名前の岬が、ここから北北東に16.4キロ離れた平内町は夏泊半島東岸にある鼻繰崎で、そこには2009年に訪問していた。どうもこのふたつの岬に直接的な関係はなさそうで、同名なのはただの偶然なのだろう。
ただ、「鼻繰」の意味については、もうひとつある岡山県玉野市の鼻操鼻(467 鼻操鼻=玉野市日比(岡山県)どこまでも引きずっていくものは…?)の項で私見を述べていた。
「鼻繰」の読みは「はなくり」とするのが普通だろうが、「はなくくり」としているものもある。本来、漢字の読みとしては、「くくり」は「括り」であるから、「繰」でそう読ませるのは無理がある。それに、もともと「くる」と「くくる」は「く」が一字多いだけで混同しがちだが、意味的にはまったく別のことだ。
ここの鼻繰崎が「はなくくりざき」だとした情報は、多分にここの字地名「久栗坂=くくりざか」に引きずられた可能性が高いようにも思える。もっとも、読みは文字記録に残りにくいものなので、よほど確かな記録がなければ、断定はしにくい。こちらも文献で確認したわけではなく、直感的なイメージで判断しているだけだ。
玉野市の鼻操鼻の項でも述べたのだが、鼻繰とウシの鼻につける金属のワッカについての関連も気になる。ウシを引いて「操縦する」ことが「鼻繰り」の意味だとすれば、ずいぶんつながりはよくなるからだ。
あくまで、でんでんむしの勝手な直感と推測だが、岬名のほうがもともとあって、ここの字地名久栗坂は後から字を当てはめたものではないだろうか。そして、それはこの岬が昔から採石場であったことと関係があるのではないだろうか。イメージですが、採石場から切り出した石を運ぶ車をウシに引かせた…とかね。勝手な想像は広がるんですよ。
久栗坂の鼻繰崎は、まったく知らなかったけど、久栗坂石という石の産地だった。産出量もあまり多くなさそうだが、一部では有名らしいこの石は、エクステリアや彫刻の材料としても使われているようだ。この石が、野内石とも呼ばれることもあるのは、鼻栗崎の西半分は青森市大字野内に属しているからだ。
青い森鉄道からは駅もつくってもらえず見放されているが、港もある久栗坂の町には現在でもいくつもの石材店がある。
鼻繰崎も、車窓からだけではよくわからないが、バッコノ崎と違ってこちらのほうは、浅虫温泉の海岸からも目立って見えている。
午後の陽の下では逆光になるが、遠目にもいかにも採石場らしい段差になったフォルムと白茶けた斜面の様子がはっきりとわかる。
この久栗坂石の鉱脈は、岬の先端だけではなく、内陸にまで伸びているようで、川上神社を横っ腹につけた山だけでなく、青い森鉄道の線路を越えて南の山野峠と久栗坂トンネルの付近まで、採石の跡がある。
浅虫温泉から眺める鼻繰崎の背後にあるのは青森市内中心部で、その右手の山並みのなかに岩木山1,625メートルも、雲に半分隠れながらある。
久栗坂トンネルというのは、青森東バイパスになっている国道4号線にあるトンネルだが、驚いたことにその名前で検索すると、曰く心霊スポット、心霊マップ、恐怖体験などというフレーズがソロゾロ出てきて、そういう情報をせっせと書きこんでいる人が多いことのほうがずいぶん怖い。
▼国土地理院 「地理院地図」
40度52分19.86秒 140度50分10.66秒
東北地方(2017/09/04 訪問)
タグ:東北地方
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