1237 長手鼻=岩船郡粟島浦村(新潟県)丸山から西の岬よりすぐ北の立島のほうが目立っているんだけど… [岬めぐり]

釜谷での短い休憩を終えて、「シーバード」が港を出ると、すぐに行く手に見えてくるかたちのよい山がある。これが丸山(184メートル)で、そこから西に延びる尾根の先が長手鼻である。

44メートルのピークが突き出た周囲は、すべて切り立つ断崖で、粟島の西海岸で目立っている断崖は、そのいずれもが海食崖(かいしょくがい)ということになるのだろうか。

いくつかある西海岸の岬は、どこも岩がその海食をかろうじて食い止めて残った、そんな印象が強い。まあ、それはここだけのことではなく、多かれ少なかれ、岬として残る部分には同様の要因があるといっていいのだろうが…。

しばらく丸山と長手鼻を眺めているうちに、船がだんだん岬に近づいていく…。と、それにつれて岬の先にもうひとつの岬が姿を現すようになる。

これも三角の大きなとんがり帽子。

82メートルの高さがあるので、ここらでは長手鼻よりは圧倒的に目立っているこれも、丸く周囲に断崖をまとっている。これには立島という名がついているので、岬ではない。もともと島だったから岬名ではなく島の名があるわけで、それは実際には砂州で繋がった陸繋島(りくけいとう)となった現在でも変わらない。

では、この立島の陸とのつながりが、たとえば隆起などでより完全になったときにここは岬になるのだろうか? おそらく、それはあるまい。今後地形がどう変わっても、かなり長い間ここの名はやはり立島のままだろう。

立島と粟島を繫いでいる砂州の上の崖に、地理院地図では「∴ 粟島のオオミズナギドリおよびウミウ繁殖地」という表記がある。
地図の「∴ 」マークについては、これまでも岬の周辺にそれが現れるつど触れてきている。国土地理院のそれとMapionのそれとが、ずいぶん意味を異にしていることも前に書いていたが、ここはMapionでも記している。
地理院地図の「∴ 」マークには、ずいぶん昔の指定による史跡・天然記念物なども多いが、ここが国指定の天然記念物になったのは、1972(昭和47)年のことだ。
長岡技術科学大学の山本麻希先生の報告(新潟県粟島におけるオオミズナギドリ調査)によると、次のようにいう。(これも日付の表記がないPDFが単体で流れている。)
1970年代には、立島と呼ばれる海からつきでた岩の頂上部だけでオオミズナギドリの繁殖が確認され、繁殖個体数は約7000羽と推定されていた。
その後、立山及び丸山地区が国の天然記念物に指定された際、丸山斜面の水田や田畑は放棄され、人間が農地として利用しなくなったことから、オオミズナギドリの繁殖地は立島からその向かいの丸山の斜面に拡大し、1990年に約20000羽が繁殖していると推定された。近年、天然記念物に指定された地域に隣接するエビスヶ鼻地区にもオオミズナギドリの繁殖が確認され、繁殖地がさらに北へ拡大傾向を示している。
2008〜2010年にかけて丸山地区、エビスヶ鼻地区にある営巣地をGPSでマッピングし、巣穴の営巣密度と巣穴利用率を用いて粟島の繁殖個体数は約84000羽と推定され、日本海側の大規模繁殖地となっていることが明らかになった。
「その後、立山…」とあるのは立島の間違いだろうが、その立島こそが、オオミズナギドリの繁殖地が最初に観測された場所だったのだ。けれども、島の崖を見てもそれらしいものはありそうにない…。もう、北へ移っていったから、ここには残っていないのか。

▼国土地理院 「地理院地図」
38度27分33.18秒 139度13分19.94秒




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