1228 備瀬崎=国頭郡本部町字備瀬(沖縄県)本部半島北西端の岬付近は隆起サンゴ礁の特徴を示しているので… [岬めぐり]

本部半島の北西端でとんがっている備瀬崎は、辺土名から南の国道からでも遙か遠くに見えていた。だが、岬の先は細く薄い板のようで、遠目にははっきりしていなかった。その先端とおぼしき右手には、先のとんがった三悪帽子のような小山が、ぴょんと飛び出ているのがわかった。
今帰仁城跡入口から再びバスを待って乗るが、10分もしないで備瀬出口のバス停で降りる。ここから北へフクギの家囲いで守られた備瀬の集落をつっきったところに備瀬崎はある。

名護から北回りでくると、備瀬出口の次のバス停が備瀬入口である。地図を見て、岬までは歩けば入口より出口のほうが近いと判断して出口で降りたのだが、とくに一方通行で出口と入口がありというふうでもなかった。

フクギに囲まれた集落は細い路地がめぐらされ、そのところどころに店や民宿の案内板が出ている。備瀬の集落は、三角の角の西側海岸に沿って細長く伸びており、東側は道もあまりなく畑と未利用地ばかりだが、海岸線は東の方が自然のままに残されているようだ。ビセザキビーチなどという名もあり、観光水牛車まであるらしいこの岬の周辺に関する情報は、結構多い。超有名とはいえないがちょっと穴場的なポイント、といったところか。
それらの情報のほとんどが揃ってフクギに言及していて、民宿の名前にも使われているので、それがここのシンボルなのだろう。八重山ではさほどめずらしくないフクギも、本島ではそう多くないのか。
いずれにしても、西海岸に発達した集落に吹きつける、強い西風を受け止める役目をもって植えられたものであろう。

備瀬崎は、小さな島の北端に名付けられた名前で、そこには灯台もある。島と本島の間は水路が隔てているが、大潮の干潮時には歩いて渡ることもできそうな感じだ。

灯台の先には、裾を絶え間なく打ち寄せる波で削られた、琉球石灰岩の岩山がある。岩山というより単なる岩でしょうと思う人は、その右をよくよく目を凝らしてみてください。

そう、左右に2人の釣り人が写っている(大潮でなくとも渡れるのか?)。それが人間の大きさですから岩山といってもいいだろうと…。

岬の左手に、あの三角帽子が写っている。これは対岸にある伊江島の172メートルの独立峰・城山(ぐすくやま)である。平べったい伊江島でちょこんと目立っているこの山も、その名からしてグスク時代からの城があった場所なのであろう。
備瀬崎からは、東西に横長い伊江島を東横から見ていることになる。

本部町(もとぶちょう)のほうにも、似たような三角小山がたくさん集まっている場所があるらしい。そこまでは行けなかったが、地図で見ると“なんとか原(ばる)”という地名が、ずっと連続して続くなだらかな台地を、備瀬崎から南東方向へ行った丘陵地帯(山里から大堂付近)には、石灰岩のなせるカルスト地形が展開していると、本部町博物館ページにあった。
その丘陵山地の南が、本部町と名護市との境界線の山嶺で、付近には八重岳・安和岳・嘉津宇岳と450メートルくらいのピークが3つ集まっている。

北東から南西方向に、ちょっと斜めに伸びている沖縄本島は、地形的には山々が連続する北部地域と、なだらかな台地状の丘が続く南部地域に分けられるが、これがだいたいグスク時代の北山の領域であったことは前項の「番外:今帰仁城跡」のところでも述べた。
そして、その違いは地形の見た目だけでなく、島の成因にもかかわっているようだ。

つまり、本島最高峰の那覇岳(503メートル)をはじめとして、西銘岳(420.1メートル)などの山が連なっている沖縄本島の脊梁を形成している山地帯は大陸から分離した(または大陸付近の海底が隆起した)陸島であり、中南部の200メートル以下の低い丘陵地帯は隆起サンゴ礁によってできたものである。
100キロにわたって縦に細長く、幅は広くても20キロもない沖縄本島は、そのふたつの異なる成因による陸地が混在してできている。
隆起サンゴ礁は、すでに八重山などでもお馴染みだが、大陸から分離した陸島というのは、南西諸島にも日本海によって大陸と分断された日本列島と同じ成因で興味深い。日本列島も南西諸島も(そして千島列島も)、ともに弧状列島だが、その弧の描くカーブが微妙に違っているのが前から何となくぼんやりと気になっていた。

しかし…。それもさることながら、本部半島はどっちなんだろう。

備瀬崎のなだらかな岬へと続く傾斜地は、ヤンバルの山地とは趣を異にする。本部半島一帯は石灰岩でできているとなれば、ここはヤンバルの続きの陸島ではなくて、隆起サンゴ礁によってできた中南部と同じ成因によることになるのではないか…と想像はできるのだが。
▼国土地理院 「地理院地図」
26度42分43.46秒 127度52分36.53秒




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