南北に10キロも続く真栄里という地域の南の端っこに日陰を求め(51)(シーズン3) [石垣島だより]
初めて石垣島へやってきて、10日ほどかけて八重山の島々をめぐったのは、1992〜3年のことだった。ちょうど30数年勤めた会社を辞めて、初めてまとまった時間が自由になったときで、さあどこへ行こう、というときに迷わず選んだのが八重山だった。
以来、八重山とはふしぎな縁ができて、何度か行っているが、八重山の岬めぐりもひととおり終わっているので、今回は短期滞在。
旧空港に近くても何のメリットもないが、まだ泊まったことがない真栄里(まえさと)のホテルにした。
真栄里というのは、石垣島の地域名のひとつで、島の南端部にその中心がある。もう古い話になった甲子園出場で話題になった八重山商工がある付近から、珊瑚礁の海岸に沿って東に、マックスバリューもサンエーもしまむらもメイクマンもと、大型ショッピングセンターが集まるところやゴルフ場やANAのホテルがある地域である。
ここにはマックやミスドもあるし、TSUTAYAもある。その並びには沖縄県庁の八重山支所や刑務所まであるのだ。だが、マックにミスドがあっても、本土の地方都市にあるような街並みを想像してくると、その印象はずいぶん違うだろう。
そこから北へ行くと、旧空港跡地が広がり、そこから北はほとんど牧場と田畑、あるいは未利用地ばかりとなる。途中には三和(みわ)や於茂登(おもと)といった集落を細くなってつなぎながら、真栄里はついに於茂登岳まで達するのである。
標高526メートルの於茂登岳は、石垣島の最高点であるばかりでなく、沖縄県の最高峰でもあるが、そのてっぺんに近いところまで、真栄里という地域は広がっている。
あんまりふしぎでおもしろいので、前にも書いた記憶があるが、石垣島の地域分けはこの於茂登岳から放射状に広がっている。それは全部ではなく、於茂登岳の山頂付近(これがまたおもしろいのだが、その頂点は山頂より北東に500メートルほどずれている)に集まってくるのは、真栄里のほか、時計回りに平得(ひらえ)、登野城(とのしろ)、名蔵(なぐら)、川平(かびら)、桴海(ふかい)の6地域だけなのだ。
その様子は、地図でなければわからないが、国土地理院ではだめなので、こういう場合はMapionのほうが役に立つ。なにしろその線引きときたら、「真栄里をなにがなんでも於茂登岳まで引っ張っていくぞ!」という、明確な意思がなければとうていできないような線の引き方をやっている。
これら6地域はどれもみな海岸線をかかえているので、於茂登岳から海岸までを取り込む境界線で仕切られている。その線引きは複雑にでこぼこしているが、各境界線が集まる山頂付近では、はっきりした直線で放射状なのだ。
このような線引きができた理由としては、入会権などが想像できる。だが、まだこれの原因や歴史的ないきさつについては調べていない。調べようと思いながらそのままになっていた。
だが、今回はもっぱらこの真栄里の海岸近くで、だらだらとすることにしていた。ほかの島へもどこへも行かない。島内もうろうろしない。真栄里だけで、それも海岸の付近だけ…。
4月の石垣島は、もう本土の真夏である。
Tシャツ一枚に長目の半パンツにゾウリ、というスタイルでも、背中から照りつける太陽が焼き付くような感じがある。なので、あまりうろうろもできない。
もっぱら、ゴルフ場の端にある数本のデイゴなどの樹木がつくる日陰の、草の上に座り込んで、文庫本を読んで過ごす。こういうときも、やはり電子書籍よりは紙の本でしょう…。そう思うのは、もうでんでんむしも古い時代の人間になったから、だろうか。
真栄里といっても長く広いので、山頂付近からここ海岸までは10キロ以上も離れている。したがって、於茂登岳も遠くその頭を覗かせているだけである。
沖縄地方(2015/04/01 訪問)
タグ:沖縄県
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