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1937☆『思い出の索引』★でんでんむし@アーカイブス☆わたしたちが生きてきた時代とは… [年表]

 われわれはどこから来て、どこへ行こうとしているのだろうか…? 
 中島京子さんの『小さいおうち』のタイトルを見たときに、すぐに思い浮かんだのはバージニア・リー・バートンの絵本(The Little House)であった。石井桃子訳の岩波書店版『ちいさいおうち』を買ったのも、ずいぶん昔のことになるが…。
 ちいさいおうちが、長い年月の間、そこに建ち続け、その間に住む人も周囲の環境もだんだんどんどん変わってしまい…という、なかなかすばらしい長く記憶に残る名作絵本だった。
 中島京子さんの『小さいおうち』は、昭和10年に“東京郊外”(当時の、だから武蔵境とか田園調布ではない、下落合か下北沢あたりだったかもしれない)に建った。2014年8月8日の朝日新聞に寄稿した“「戦前」という時代”のなかで、彼女はこう書いている。
 日常の中に入り込んでくる戦争の予兆とは、人々の慢性的な無関心、報道の怠惰あるいは自粛、そして法整備などによる権力からの抑圧の三つが作用して、「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿状態が作られることに始まるのではないだろうか。その状態が準備されたところに本当の戦争がやってきたら、後戻りすることはほんとうに難しくなる。平和な日常は必ずしも戦争の非日常性と相反するものではなく、気味悪くも同居してしまえるのだと、歴史は教えている。


1937mark.jpg昭和12年 丁丑(ひのとうし)
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◯英・伊が地中海の現状維持を守る紳士協定。
◯ユーゴ・ブルガリアが永世友好条約に調印。
◯米で不況が深刻化。自動車・鉄鋼の争議が頻発。
◯仏、大資本に譲歩して人民戦線要綱を休止。
◯伊・ユーゴ中立不可侵条約に調印。
◯スペイン内戦で、フランコ軍を支援するドイツ空軍がゲルニカを空襲。
◯ソ連の赤軍参謀長トハチェフスキー元帥ら8名の首脳が秘密会議でスターリンに粛清される。赤軍大粛清続く。
◯アイルランド新憲法制定、国名をエールとする。
◯スペインのフランコ軍、ビルバオを占領。
◯独・伊がスペイン内乱不干渉委員会から脱退。
◯英、パレスチナの独立に関するピール勧告を公表。パレスチナ地区をユダヤ教徒をアラブに分割することを勧告。
◯シオニスト会議はピール勧告を受諾するも、アラブ会議は勧告拒否とユダヤ人移民の即時中止を決議。
◯ローマ法王庁がスペインのフランコ政権を承認。
◯米ルーズベルト大統領、シカゴで独日を侵略国家として「隔離」すべきと演説。
◯スペイン政府がバレンシアからバルセロナへ移る。
◯メキシコがスタンダード石油の採掘権を国有化。
◯独ヒトラーが秘密首脳会談で、広域生活圏獲得のための戦争計画を提示。
◯伊が日独防共協定に参加。国際連盟も脱退。
◯ブラジルで大統領の独裁制確立。
◯仏、共和制転覆右翼暴動計画が発覚。
◯ビルマがインドから分離、英国の準自治州に。
◯伊ムッソリーニがリビアを訪問、イスラム教徒の保護を約束。

◯共産党が改めて第二次国共合作を提案し、国民党も三中全会で受け入れ。
◯盧溝橋事件を受け、共産党が対日全面交戦を呼びかけ。
◯蒋介石が周恩来と会談。対日抗戦の総動員令を下す。
◯西北の紅軍が国民革命軍第八路軍となる。蒋介石が朱徳を軍長に任命。
◯共産党が抗日救国十大綱領を発表。
◯国民政府が日本軍の行為を国際連盟に提訴。国際連盟総会で日本軍による中国の都市空爆に対する非難決議を満場一致で可決。
◯共産党中執が国共合作を宣言。蒋介石も共産党も同志として抗日救国に合作することを望むと談話。(第二次国共合作の成立)
◯国際連盟の諮問委員会で日本の軍事行動を九か国条約・不戦条約違反とする決議採択、総会でも決議。
◯国民政府が重慶などの奥地へ政府機関を移転。

◉衆議院で浜田国松代議士が軍部を攻撃し、寺内陸相と割腹問答になる。
◉広田内閣が総辞職、宇垣一成に組閣命令、陸軍の反対により辞退。
◉労農無産協議会が政党化へ、日本無産党。
◉文部省が「国体の本義」を刊行。全国の学校、社会教化団体などへ20万部配布し皇国史観など徹底。(以後5年間にわたって130万部を配布)
◉林銑十郎に組閣命令、これまた陸相後任で組閣難航。
◉政友・民政の両党が林内閣退陣要求、総辞職により近衛内閣。
◉盧溝橋で日中両軍が衝突。日本国と中華民国間に日中戦争開始。(盧溝橋事件)当時は「北支事変」→「支那事変」。
◉日本政府、華北へ派兵を声明。日本軍、華北で総攻撃を開始。
◉通州の保安隊が反乱、華北各地の日本軍留守部隊や日本人居留民ら180人が殺害される。(通州事件)
◉上海で大山海軍中尉が射殺される。
◉上海で海軍陸戦隊と中国軍が交戦開始。
◉2.26事件の民間関係者、北一輝、西田税らに死刑判決、執行。
◉兵役の服役・在営期限を延長。
◉国民精神総動員中央連盟の設立。
◉全日本労働総同盟大会で、事変中の罷業中止と戦争支持を決議。
◉内閣情報部、朝鮮人に「皇国臣民の誓詞」を配布。
◉日本軍が膠州湾に上陸。
◉駐華の独大使が日本の和平条件について中国側と会談。(トラウトマン工作)
◉日本軍が上海を占領する。
◉日本軍が南京城を陥落、南京を占領する。
◉山川均ら労農派の学者・知識人など417人を一斉検挙。(第一次人民戦線事件)
◉日本無産党、日本労働組合全国評議会に結社禁止。
◉政府が全国全戸に「我々は何をなすべきか」と題する小冊子を配布。
◉東京帝大の矢内原忠雄教授、右翼教授らから言論活動が非愛国的と非難され辞職。
◉商工省、臨時輸出入許可規則を公布。綿花、化粧品、オレンジ、紅茶などの贅沢品の輸入と軍事資材の輸出を禁止。
◉大本営令公示、宮中に大本営を置く。

・この年に亡くなった人にはこんな人も…。森永太一郎。河東碧梧桐。北一輝。中原中也。木下尚江。ハワード・フィリップス・ラヴクラフト。ジョージ・ガーシュウィン。グリエルモ・マルコーニ。ピエール・ド・クーベルタン。アーネスト・ラザフォード。モーリス・ラヴェル。

◎山本有三『路傍の石』朝日新聞に連載開始。
◎名古屋城の金のシャチほこウロコ58枚が盗まれる。
◎永井荷風「濹東綺譚」東京朝日新聞に連載開始。
◎第1回の文化勲章授与式。長岡半太郎、本多光太郎、木村栄、佐佐木信綱、幸田露伴、岡田三郎助、藤島武二、竹内栖鳳、横山大観が受章。
◎日蓮宗系の殉教的宗徒集団「日蓮会」の5人が皇居・国会議事堂前などで切腹を図る。(死のう団事件)
◎朝日新聞社社機、純国産航空機“神風号”が完成し、訪欧飛行。
◎横光利一『旅愁』東京日日新聞・大阪毎日新聞で連載開始。
◎“奇跡の人”ヘレン・ケラー女史が来日。
◎トヨタ自動車工業の設立。
◎後楽園球場開場。記念のオールスター戦で巨人の水原が初ホームラン。
◎東京浅草に国際劇場開場。松竹少女歌劇団「國際東京おどり」公演。
◎NHKのラジオ聴取者が300万を突破。
◎日本通運の設立。
◎牧口常三郎らが東京で創価教育学会正式発会式。
◎大阪市立電気科学館に初のプラネタリュウム設置。
◎大阪の御堂筋拡張工事が完了。幅44メートルの大幹線道路に。
◎千代田光学(ミノルタカメラ)距離計つきカメラについで、初の二眼レフ「ミノルタフレックス」を発売。
◎米映画『オーケストラの少女』日比谷劇場で公開、外国映画空前の大ヒットとなる。

◎内閣情報部が国民歌『愛国行進曲』の歌詞募集、発表演奏会を開く。
◎東京と京都の両帝大と東京と広島の両文理大に、国体および日本精神に関する講座を新設。
◎映画の冒頭に「挙国一致」「銃後を護れ!」などの標語を映し出す。
◎国体明徴、教学刷新で中学校以上の教授内容を大刷新。
◎日本産業が満州重工業開発に改組。総裁鮎川義介。26の国策会社の経営権が満州重工に集約され、統制経済の実験。
◎兵役法を改正、徴兵検査基準を引き下げ。徴兵逃れの学生に監視。
◎準戦時下として駅名表示板からローマ字表記が消える。
◎37年ぶりの郵便料金値上げ、はがきが5厘値上げで2銭に。
◎乃木大将の2銭切手を始め、昭和切手で図案を全面改訂。
◎NHK「国民唱歌」放送開始、第一回は『海ゆかば』。
◎NHK日中戦争の前線将兵慰問の「皇軍慰問の夕べ」を放送。
◎陸地測量部の地図の大部分が販売禁止になる。
◎神奈川県の三浦半島が要塞化、カメラの持ち歩きが禁止される。

◎東京帝国ホテルが時局に鑑み、今後いっさいのクリスマス・ダンスを中止。
◎内務省がレコードに出版法を適用、卑俗な流行歌を発禁に。(きっかけとなったのは二葉あき子の『だまっててね』
◎日中戦争で皮革やゴムが統制、下駄履き運動が盛んになる。
◎化粧品の錫チューブが禁止される。
◎軍馬の欠乏により、馬の移動が制限される。
◎燃料不足のため、東京の銭湯で朝湯が廃止される。
◎ブリキの統制で飲料水の王冠もメーカーへの配給制になる。
◎「小倉百人一首」に代わり「愛国百人一首」。ただし、国民には不評で麻雀が流行る。
◎全国で千人針、慰問袋づくりが盛んになる。出征幟や小旗の需要が増え、旗屋が繁盛。
◎内務省が活動写真の時間とフィルムの長さを制限。
◎日本婦人団体連盟、時局対策運動のひとつとして「白米食をやめましょう」運動。
◎東京市が出征将兵の留守宅門口に「出征兵士の家」という表札をつける。
◎日本洋裁家連盟主催で、非常時婦人活動服展覧会開催。
◎愛国婦人会、大日本国防婦人会、大日本連合婦人会、同女子青年団が、国民精神総動員中央連盟に包含される。

■流 行:臨戦映画「報国邁進」「皇軍一度起たば」など
■映 画:邦:真実一路・人情紙風船・浅草の灯。洋:女だけの都・我等の仲間・オーケストラの少女・大いなる幻影(反戦的と公開禁止)
■ 本 :石坂洋次郎/若い人・川端康成/雪国・永井荷風/濹東綺譚・火野葦平/糞尿譚・豊田正子/綴方教室
■ 歌 :人生の並木路・青い背広で・別れのブルース・露営の歌・軍国の母 童謡:かもめの水兵さん・かわいい魚屋さん・赤い帽子白い帽子・
■ことば:馬鹿は死ななきゃなおらない・パーマネントはやめましょう

dendenmushi.gif(2014/09/07 でんでんむし蛇足の記)
 最初の山東出兵からちょうど10年後に起きるのが盧溝橋事件で、歴史的には本格的な軍事衝突となるここからが“宣戦布告なき戦争”の始まり、ということになるのだろう。これまでも、いろんな本を読んで多少は知ったつもりでいたこともあったが、改めてこの年表整理の作業をやってみて、よくわかったことがある。それが、盧溝橋事件が起きると、たちまちのうちに日本全国が「非常時」一色に染められていく、その様子だった。
 こんなふうにして、否応なしに戦争に駆り立てられ追い立てられていくのだ。
 でんでんむしの父には、母を同じくする妹もひとりあったが、この人がこの年に嫁いでいる。この人が結婚した相手の仕事の関係で、満州へ渡るのだが、それが何年のことだったのか。記録がないのでわからない。だが、結局この“おばさん”は、再び本土の土を踏むことがなかった。
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