1120 潮掛鼻＝佐渡市西三川（新潟県）肝心の岬はどうやら道路の下敷きになってしまったらしいのだが…

　“日本海の底”を見る河ヶ瀬崎から、北へ行く道路がなくなっているのには、少々あせった。その証拠には、その現場写真が一枚もない。とにかく、その崖崩れをなんとか渡り切るのに懸命であったらしい。

　崩れそうにない足場を探しながら、ヤブと岩の崩れた崖のなかを乗り越えて、ようやく北の道があるところに辿り着いたら、ほっとしてしまい、前の方は見ても後ろを振り返って見る余裕もなかったようだ。

　崖崩れを後にすると、そこは椿尾で、眼の前には弁天岩、潮掛鼻、赤岩、そしていちばん先端に鋭くとんがっているのが田切須崎となる。

　弁天岩のところで、未舗装の狭い道は、羽茂小泊の山の上から下ってきた国道350号線につながり、国道がカーブするところに、駐車して休憩できるスペースが張り出している。その東屋の前に、また佐渡ジオパークの説明看板があった。

　今度は、「おしよせた日本海」である。この一連の看板、これで南の瓜生崎から数えると三枚目だが、タイトルでおもしろそうに見せようという意欲はおおいに買える。が、その姿勢と肝心の看板の説明のレベルが、うまくマッチしていないのが惜しい。

　「弁天岩周辺には、佐渡島が日本海にのみ込まれていく様子が残されています。」という以下の説明は、でんでんむしのような頭の悪い人間にはなかなか要点を理解するのにホネだ。こどもたちにも、これではわかるまい。

　“ジオジイ”と“ジオコ”も、ここでは沈黙せざるを得なかったようだ。

　要するにこの道路の向こうの斜面から弁天岩の海岸まで、やはり1700万年前の地層面が連続しており、その上には崖崩れなどで落ちてきた陸成の堆積層がある。そしてその上に海成の砂岩堆積層がかぶさっているので、この頃にこの付近も日本海の底に沈んでいた。それがまた隆起して、現在のようになっている、ということだろう。

　伊豆大島のジオパークでも感じていたことだが、ジオパークの意義をもっと一般に広く周知するためにも、もっと専門家の知識を一般レベルにどうおろしていくか、その説明の仕方自体から考えなおすべきなのだ。

　国道350号線は、ここから少しの間だけ海岸線を走り、バスでここを北へ佐和田方面向かって小木線で行くと、バス停は椿尾・高崎・西三川ＧＰ・西三川・鉄砲鼻・田切須南・田切須…と続いていく。

　途中、西三川のところからは、バスの便によっては谷筋を少しだけ奥に入った西三川ＧＰに寄っていくのもある。“ＧＰ”ってナニ？　“ゴールド・パーク”のこと。

　そうか、思い出したぞ。西三川は佐渡で最初の頃に砂金がでたところだった。

　バスがこのＧＰ前で転回するとき、建物の中を覗いてみたら、砂と水を流す樋のようなものが並んでいるのが見えた。運転手さんに、ここ今でも砂金が採れるんですかと聞いたら、彼いわく「潮干狩りのようなもんです」。

　なるほど。うまいことを言う。それにしても、砂金では養殖のあさりを撒くような具合にはいくまいが…。

　「鉄砲鼻」というバス停があるのも気になるが、これは国土地理院の地図には表記がない。なんらかのいわくがあってそういう名がバス停にだけは残っているのだろうが、こういう場合、まずたいていの場合はその答えがない。見つからない。行政も観光なんたらもみんなそんなことには知らん顔をして平気でいるのが、でんでんむしにはどうも理解できないのだが…。

　鉄砲鼻は、西三川と田切須南の間で、弁天岩のほうから見ると、大きな岩が海中に飛び出したところのようだ。

　そうだった。肝心の潮掛鼻を忘れてはいけない。なにしろこれは潮掛鼻の項なのだから…と思えども、実はここは道路が拡張されるときに、どうやらその下敷きになってしまったらしい。

　高崎のバス停の白い箱のような待合所がある、その西三河寄りの先で、広い道路は大きくカーブしている。ちょうどこの辺りが、かつては潮掛鼻と呼ばれた岬があった…そうだったはずなのである。

▼国土地理院　「地理院地図」
37.895547, 138.289148

信越地方（2014/05/15訪問）

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