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名蔵アンパルは石垣島の自然のゆりかごラムサール条約指定の湿地で国指定の鳥獣保護区で(43) (石垣島だより シーズン2) [石垣島だより]

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 石垣島の西部海岸で大きく凹んでいるのが名蔵湾で、この湾奥にあるのが名蔵アンパルと呼ばれる湿地帯である。
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 湿地帯と言っても、日光や箱根にあるようなのではなく、一面マングローブの森が広がり、潮が満ちるとその裾まで海水が入り込んできて、潮が引くと砂と泥の干潟が広がる。なので、道もなく人が入り込む余地がほとんどない。
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 そのため、いわゆる観光地としてはあまり目立たない。川平湾に行く観光バスも、名蔵大橋を渡るときにちょっとだけスピードを落としはするが、それだけで通りすぎてしまう。
 橋の脇の駐車場に一時停車する「わ印」の人たちも、せいぜいが橋の欄干から眺めるだけである。
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 島の人は「アンパル」と呼び習わしているようで、地理院地図でもその表記になっている。その意味は「網張=あみをはる」というところからきたとされているが、正確なことはわからない。ラムサール条約でも「名蔵アンパル」と地名を冠して、場所の特定をしている。
 岬もないので、「岬めぐり」で項目を立てるわけにいかないが、入江の中に降りてみたり、アンパルの中にできるだけ接近してみようと考えた。
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 名蔵の集落はアンパルの中心からは1.5キロ以上東に引いていて、道路も大きく迂回している。そこから畑の中を突っ切って、アンパルの林に近づいて行く道はあるいは地図にもないルートがあるのかもしれないが、不用意に入り込むこともできそうにない。
 そこで、名蔵大橋を通る道路の脇から、橋の下に降りたり、入江の岸に降りる道を探ってみた。
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 しかし、そこからもアンパルの横っ腹を遠くに見るだけでは、どうも様子がよくわからない。
 せいぜい、ヤエヤマヒルギの幼木がちょろちょろとあるくらいだ。これらも、アンパルの林から引き潮に乗って流れついてきたのが、根を下ろし芽を出したものだろう。入江の南のほうには、そうしてできたようなかたまりがいくつも小島のように見えている。
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 アンパルの入江が海につながるのは、名蔵大橋の下の狭い水道だけだが、海に流れ出たヤエヤマヒルギの種が、名蔵湾の岸でも根を下ろしているところがある。
 名蔵大橋の北に設けられた駐車スペースには、大きな案内板が三つも建てられている。三つとも環境省那覇自然環境事務所のもので、これを全部読めば、名蔵アンパルについてはだいたいわかる。
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 そこはまた、「やいま村入口」というバス停になっている。アンパルに近づく方法として、これがあったな。
 八重山の古い民家を移築保存(大浜信泉の生家もある)している石垣やいま村は、観光バスのコースになっているが、ここからアンパルに降りることができるかもしれない。降りられないまでも、すぐ上から眺めることができるだろう。
 沖縄の民謡などを三線(さんしん)で生演奏している家に集まっている観光客を横目に、下る道を探して降りていく。誰もアンパルには興味がないらしく、人影はまったくない。
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 下まで降りると、木道より立派な通路が、林の中を水辺まで続いているが、その距離はあまり長くない。
 ここに行ったときはちょうど潮が引いていたので、木々の間の向こうの方に水面が見えるだけであったが、根方の砂泥の中にはマングローブの気根のようなものが、たくさんぽこぽことある。これがヒルギダマシか。
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 だが、カニもトビハゼも鳥も、生物らしいものは見えない。静かに、ただ時が過ぎていた。後で地図を見て検証してみると、この水面は名蔵川だった。
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 日本のラムサール条約湿地は、名蔵アンパルが指定された2005(平成17)年当時は36か所だったが、2012(平成24)年には46か所に増えている。
 そもそも、ラムサール条約とは、人間の生活を支える重要な生態系として、幅広く湿地の保全と湿地の「賢明な利用(Wise Use:ワイズユース)」を提唱し、そのために対話(情報交換等)、教育、参加、啓発活動(CEPA:Communication, Education, Participation and Awareness)を進めることを大切にしていこうという国際条約で、世界中の自然保護に大きな役割を担っている。
 「ラムサール」というのは、その湿地に関する条約(Convention on Wetlands)が採択された国際会議の開催地イランの都市の名なのである。
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 木道のそばには、こんな看板も…。環境省の看板にも同じようなものがあったが、これは名蔵に伝わる古謡「アンパルヌミダガーマユンタ」の歌詞と説明で、なんでもアンパルのさまざまなカニ(13種の名が出てくる)が、ヒダカガニの生年を祝うためにそれぞれいろんな係の役目を分担して負って、宴会を盛り上げる…という内容らしい。
 実に、おもしろい。こういう歌をつくって歌う人の心根のやさしさ、純朴さに胸を打たれる。地元の人が昔からこの湿地とともに生きてきたという証であろう。こういうのって、外国でも大受けするのではないかと思うけど…。
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▼国土地理院 「地理院地図」
24.397522, 124.148185
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dendenmushi.gif沖縄地方(2014/04 記)

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タグ:沖縄県
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