でんでんむし@アーカイブス★むかしの人は言いました=その07 臨時特別連載「道歌」 [番外DB]
明治天皇の御製は非常に数が多く、数え上げれば数万首にも及ぶと言われています。いったい何万首あるのか知りませんが、数だけでもすごいですね。現在でも、その一部は通販で扱っている商品になったりしていますから、比較的容易に目にすることができますが、そうした明治天皇の歌の特徴は、「道歌」そのもののような歌が多いことでしょう。
これは、それまでの天皇が御簾のなかにあって、公家たちに囲まれて花鳥風月を詠んでいたのに比べると、初めて自分の統治すべき国と国民を意識し、世間や人の世のありかたを考えたからではないかと、でんでんむしは想像しています。
若い天皇が、国民の先頭に立って自ら善導していこう、というような気概が感じられる歌を多く残しています。
白雲の よそにもとむな 世の人の まことに道ぞ しきしまの道
天皇の歌は天皇の言葉そのものですが、宮中にかぎらず、そういう歌にして何かを伝えていこうという方法が、昔から国のずみずみにまで行き渡り、みんながそれを理解していたことは、大変に優れた文化だと言えます。
今では、外国人がときに驚嘆する日本人の誠実さ、真面目さ、勤勉さ、社会的な意識と連携…などなど、日本人の美点の多くは、「道歌」のような指針を、長年にわたって多くの人たちが共有してくることができたからではないか、というのは我田引水でしょうか。(以下は、明治天皇の御製ではありません。為念。でも、御製が道歌のどこかに紛れ込んでいないと断言もできません。)
07 誠ひとつは…
世の人の 心は千々に わかれても 誠ひとつは かわらざりけり
十人は 十色なりける 世の人の 誠は心 一つなりけり
咲く花の 色香にまして 恋しきは 人の心の 誠なりけり
聞き分ける 心の内の 誠こそ 教えによらぬ 悟りなりけり
誰も皆 持つものながら 誠より 重きものこそ 世になしと知れ
一声も ほととぎすより 聞きたきは 誠の道を かたる世の人
二重三重 七重八重垣 つくるとも 通わざらめや 人の真心
湊川 水はかれても あふるるは 人の心の 誠なりけり
善きことは 真似になりとも するがよし 何時しか馴れて 誠にぞなる
善し悪しの 鏡に写る 影法師 よくよく見れば 我が姿なり
善き悪しき こときらいなく 常に見よ 人のうえこそ 我が鏡なれ
立ち向かう 人の心は 鏡なり おのが心を 写しても見ん
鏡見て 影はずかしと 思うなら はやく心を 改めよ人
影見つつ こころ粧ろう 人あらば いかに鏡の 嬉しからまし
目に聞いて 耳に見るなら 疑わじ おのずからなる 軒の玉水
よき人を みれば我が身も 磨かれて 鏡に向かう 心地こそすれ
わが心 かがみにうつる ものならば さこそ醜き 姿なるらめ
私を 離れてみれば 心ほど 明るき鏡 世になかりけり
智恵ありと 思える智慧に さへられて あわれ誠の 道を失う
世の中に 親につかうる 誠こそ よろずの道の 基なりけれ
(2014/03/28 記)
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