1080 東崎=八重山郡与那国町与那国(沖縄県)21年前に断念した与那国東端訪問の宿願はついに果たされた [岬めぐり]
「東崎」は「ひがしざき」でも「あずまさき」でもない、「あがりざき」と読む。同じ日本とはいえ、標準語の首都からは南西に2000キロ以上も離れているこの与那国(よなぐに)までくると、ただの方言とかいう認識の枠をもとうに越えている。
サツマイモを横にしたような形の、一島一町のこの島で、イモの東の端っこに飛び出しているのが東崎=あがりざきで、反対側西の端が西崎=いりざきとなっている。島の形も両端の岬も、左右対称だ。
日本最西端の西崎には、前にも来ているが、東崎はこれが初めてである。というのは、前には宿で借りた自転車で、えっちらおっちらと東へ向かっていたのだが、その途中で激しい雨に見舞われた。しばらく、集落のはずれの墓地の近くで、倉庫か何かの狭い軒を探して雨宿りをしていたのだが、なかなか止まない雨で東崎まで行くのを断念して、以来21年間そのままになっていた。
西表島の上空をかすめて、30分も西へ飛んできたデ・ハビランドQ100は、島の北海岸にある空港に着く。すぐに島でひとつしかないタクシー会社に電話して東崎まで行こうと思って電話すると、全部出払っていて40分くらいすれば空くのでその頃また電話してくれ、という。
しかたがない。ホテルまでそう遠くはないので先にホテルまで歩こうと、リュックを背負って歩き始めた。すると、後ろからきた車が停まって、乗って行けと運転していた女性が声を掛けてくれた。こういうことは、岬めぐりではめったにないことで、後部座席には人がいたので助手席にありがたく乗せてもらった。
短い道中の間に聞かれて、歩いていた事情を話すと「それはうちのお客さんが使ってるからだわ」という。と、すぐに降りるホテルの前に来てしまったので降りてしまったが、後で考えてみるともう少しちゃんと聞いておくべきだった。
見送った車には何も書いてなかったが、どうやらその人も祖納で旅館かホテルをやっていて、自分たちの客を迎えに空港へ行っていたものらしい。小さな親切にどう報いるというすべもないが、せめて宿の名前でも聞いておけばよかった。最近、遅ればせに後から気がついて思うことが多い。
改めてホテルに呼んできてもらったタクシーは、その名も最西端観光タクシー。ホテルからティンダバナ(遠くからもわかる与那国のシンボル的な岩の崖で、祖納集落の上に張り出している)の下を東に向かい、祖納の集落を過ぎ、前に自転車で挫折した墓地を抜け、サトウキビ畑のなかを通ると、今度は尾根の上を自動車道が尽きるまで進む。
そこからは、徒歩で岬の上に向かうが、この岬を含めた一帯は、東牧場になっている。なるほど、岬への道の周囲にはたくさんの落し物が落ちているが、同じ落し物でも微妙な違いがあって、それを見れば落とし主がわかる。これはどうやら、牛のものではなく馬のものだ。
ほらね、馬がちゃんといる。
なだらかな起伏のある岬を、灯台目指して斜面を上る。灯台の下は、すっぽりと切り立って海に落ちている。岬のピークは70メートルを超え、そこから東はいきなり垂直の崖になっている。
灯台のあるピークの左下には牧場の一部らしい斜面があって、そこを一本の道が走って四角いスペースで終わっている。ヘリポートのようだと思ったのだが、よく考えてみるとヘリポートなど緊急時に必要とされるものがある場所としては、こんな集落から遠く離れた島の東端がふさわしいとはいえない。
北側の海岸線は、ところどころ砂浜もあり、沖縄電力の風車二基とサンゴ礁の縁取りときれいな景色をつくっている。地図に「∴ 先島諸島火番盛」とあるのは、風車の先のこんもりしたところだろうが、ここまでくれば別に人工的な塔を築かなくても、どこでも見張り台の役には立ちそうだ。地理院地図では、火番盛(ひばんむい)には、これまた日本語とは思えない「ダティグチディ」という呼び名が振ってある。それが、実質的にその役割を果たして効果を発揮していたのは、いったいいつのどのくらいの時期で、そのときにどんなことがあったのだろうか。
それは、いくら日本歴史の本を読んでみてもわからないことである。
その先のサンゴ礁が岸辺に寄ったところに、青い貨物船が座礁している。若いタクシーの運転手さんが言うには先ごろの台風で遭難したもので、近く解体も始まる予定だという。難破船がよく見えるところがありますよ、と言ってくれたがその気はなかった。
しかし、これも後になって思えば、やはりあの時船がよく見える場所へ連れて行ってもらっていたほうがよかった。そうすれば、難破船はともかく、そこから東崎を見れば、切り立つ断崖の上ギリギリに立つ灯台の姿が、はっきり写せただろうに…。そのほうが、より岬らしい姿が見えたはずだ。
どうも、頭の回転が悪くなったようで、いかんナ。
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南側の海岸の先には、軍艦岩とかサンニヌ台という奇岩景勝の地もあるらしいので、そこへ行ってくれというと、そっちもやはり台風で崖が崩れたために通行止めになっているので行けないんだと…。
▼国土地理院 「地理院地図」
24.461802, 123.043085
沖縄地方(2014/02/17訪問)
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