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892 黒崎鼻=宗像市鐘崎・遠賀郡岡垣町波津(福岡県)白波をたてて沖から押し寄せる波音も響き渡る [岬めぐり]

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 日本の岬の名前ではいちばん多いのは。「黒崎」という名で全国に50もある。そのほかに「黒崎鼻」というのも7か所あるのだが、「黒崎の鼻」と「黒崎ノ鼻」というのも各1ある。読み方となると、濁ったり濁らなかったりいろいろその土地による変化があって、一筋縄ではいかないが、ここのは「くろさきばな」と呼んでいるようだ。
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 鐘ノ岬から波津城まで、およそ4キロ近くはほぼ東西に海岸線が延びている。その中間に出っ張っているのがこの黒崎鼻で、宗像市と岡垣町の境界を分けている岬である。
 岩磯が周囲を取り巻く岬は、近くで見ると大きさも手頃で、なかなかきれいにまとまった岬、という印象がある。
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 少し離れて見ると、逆光になるためか、岬全体が黒々として見える。これがやはり、名前の由来なのだろう。
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 黒崎鼻は、湯川山から流れる尾根のひとつが海に達するところだが、岬を横断する道路が旧道と新道と二筋あって、小山がふたつあるように見えている。その新道の峠の上には、宗像市と岡垣町の、それぞれ標識が立っている。
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 よく市境・町境には「ようこそ」とか「またきてね」とか、観光案内を意識した標識もあるのだが、ここのは非常にシンプルな公式のものだけ。
 この海岸線の西側鐘ノ岬寄りは砂浜が続いているが、東側波津城までは岩磯ばかりになる。しかも、波打ち際が道路の護岸ぎりぎりまで押し寄せていて、白波が絶え間なく打ち続けている。海岸沿いには平地がほとんどないためか、人家も見当たらない。波津城寄りには南の山に向かう道があって、そこを入れば奥には集落もあるようだが、海岸を歩いている分には、時折車が通る以外は、まったく波と風の音しかしない。
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 海岸道路の脇には、こんなものも。石碑には“福足神社祭神御上陸霊地”とある。この辺の神様は海からやってくるのだ。この海岸から白波の寄せる海を眺めていると、神様がその波に乗ってやってきそうな気がしてくる。
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 その福足神社とは、どこにあるのだろうか。湯川へ入る道の尾根上には、景石(奇石)神社というのがあるが、これと関連もあるらしい。『筑前国続風土記』によると、福足神社にも“石担(かた)げ”という石に関する祭事があるようだ。その詳細は不明なのだが、なんでも海中に入って足に触れた石を担ぎ上げて、積み上げる、というもののようだ。
 福足神社は、須惠村の産靈(うぶすな)神だったというが、その村の名も今の地図ではどこだかわからない。祭神は市杵島姫神だが、それを「藝州嚴嶋より勧請せし時、神まず此所にあがらせ給ふ」という。
 こういうことになると、わからないことが次々にでてくる。ここからすぐ近くの宗像神社の辺津宮には市杵島姫神が祀られているのだから、わざわざ遠く広島くんだりまで出向いて勧請してこなくてもよさそうなものではないか、と思うのは普通であろう。
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 とにかく、その市杵島姫神が厳島から海を渡って(海の神様だから遠路の航海は心配なかっただろうが)はるばるやってきたとき、この地に上陸したということなのか。
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 “担ぐ”というからには、いくらか大きめの石だろうが、この標石の回りにも小石が積んであるのは、だんだん小さい石で代用するようになったのだろうか。もともとは、この場所にそれら祭事に縁のあるなにかがあったのだろう。それは道路の工事で、なくなったのかも知れない。それではあまりにも神様に申し訳がない。そこで、わずかにこの標石だけでも印に残している、という感じがなんとなく強い。
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 東から黒崎鼻を望むと、その背景には織幡神社のある鐘ノ岬と向かい合う地島の南端が見える。そして、その間の奥には、宗像神社の聖地でもある大島が浮かんでいる。
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 市杵島姫神を祀るという社は、地島にも神湊にもあるし、芦屋にもあるので、この付近ではめずらしくないのは、当然のように思える。地島の場合、宗像第三の神を勧請して、その名を安芸の厳島に倣って厳島明神とした、と『筑前国続風土記』はいうので、いろいろなパターンがあったのだろう。

 この項についてコメントをちょうだいしていた keitokuchinさんの「正見行脚」ブログは、たいへんな情報量ですが、再度ご本人から内容の特定をしていただきましたので、リンクしておきます。

  [景石神社(1)]福足神社の神霊上陸地と奇石宮 

▼国土地理院 電子国土ポータル(Web.NEXT)
33.888836, 130.542892
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dendenmushi.gif九州地方(2012/10/31訪問)

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タグ:福岡県
きた!みた!印(35)  コメント(4)  トラックバック(1) 
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きた!みた!印 35

コメント 4

keitokuchin

でんでんむし様
岬の旅 楽しく拝見させていただいています。
ところで、福足神社のご神霊上陸地でのお祭りですが、今も続いています。小生の下記のブログが参考になれば幸甚です。よろしくお願いします。
・正見行脚「福足神社の石かたげの絵馬」。
・正見行脚[景石神社(1)]福足神社の神霊上陸地と奇石宮。
・正見行脚[景石神社(2)]福足神社の神霊上陸地と奇石社。
以上

by keitokuchin (2015-04-11 21:12) 

dendenmushi

@ keitokuchin さんの「正見行脚」はすごいですね。宗像神社を中心としたこの付近は、たいへんな厚みをもった地層が堆積しているという印象を、岬めぐりでも感じていました。
しかし…せっかく奇石宮や絵馬などご紹介いただいたのですが、40までみたけど“福足神社”が出てこない…(×_×)
検索ができればいいんでしょうが…。目次とか…。
また探してみますが、とにかく、ありがとうございました。
by dendenmushi (2015-04-13 17:00) 

keitokuchin

でんでんむし様
気が付かないまま、すっかり返事が遅れてしまいました。
正見行脚「福足神社の石かたげの絵馬」をリンクしてください。
by keitokuchin (2017-05-19 13:28) 

dendenmushi

@keitokuchinさん、ありがとうございました。リンクを加えさせていただきました。

by dendenmushi (2017-07-13 06:17) 

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