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719 畚部岬=余市郡余市町栄町・小樽市蘭島(北海道)海水浴場と中学生と遺跡と古代文字 [岬めぐり]

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 地名には、普通ではあまり使われないような字が使われることも多い。これも音からするとアイヌ語源っぽいが、畚部(ふごっべ)岬の「畚」は、音で「ホン」、訓では「フゴ、モッコ」という読みをもつ。なので、どうも音で当てただけのようで、漢字の意味を追求しても意味がないのだろう。
 畚部岬は、小樽行きのバスが余市の市街地を過ぎ、海岸に沿って走ってしばらくした頃、車窓の右手に見えてくる。
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 海岸には、なにやらたくさんの鳥の群れがあり、遠くには忍路の兜岬が頭を覗かせている。この付近、電子国土ポータル地図には“フゴッペ洞窟”という表示があり、“フゴッペ海水浴場”の表示も、他のネット地図にはある。札幌からこの海水浴場に来ていた中学生が発見し、高校の郷土研究部に所属していた兄に知らせたことで、本格調査が行なわれ、壁画図像のほか石器や土器など数々の発見があり、現在では国の史跡になって
いる岩陰遺跡である。その時期は1950(昭和25)年のことで、当時は結構話題にもなったらしいが、こちらはこどもだったので記憶にはなかった。
 おもしろいのは、壁面に線刻の原始的な図像が陰刻されている、というところで、現在も保護展示されているということを、帰ってきてから知った。あらかじめ知っていれば、ここでバスを降りてみたのに、残念なことをした。事前調査をしない行き当たりばったり方式のでんでんむしの岬めぐりではたまにあることでやむを得ない。
 さらにおもしろいのは、ウイキペディアによると、同じ場所では戦前に「壁面に古代文字のような壁画と石偶のようなもの」が発見されていた、ということだ。こちらのほうは、“フゴッペ洞窟”ではなく、“フゴッペ遺跡”として区別されているらしい。
 当初はアイヌのものだという説もあったが、それもすぐに否定されてしまったらしい。引き合いに出すのも度々ではばかられるが、なかにし礼の『石狩挽歌』の歌詞には、この“古代文字”もちゃんと織り込んでいる。
 いつとは書いてないが、この地を訪れた昭和天皇からも、それについてお尋ねがあったとき、案内の金田一京助は「知人のアイヌが少年時代に描いたイタズラ書きである」旨お答えしたという。
 そんなこともあって、結局ニセモノ、イタズラ書きという説が定着して、保存などの対策がとられず経過し、現在では存在しないという。
 和人がくるまで北海道には文字はなかったとする現在の定説に立てば、「北海道異体文字説」は“トンデモ説”扱いされてしまうが、こういう経緯をふまえれば、まだわからないことがあるのかもしれない。
 余市の東海岸は、広く開けた余市湾に沿った道路が、函館本線としばらく並走して続き、やがて低いけれど長い尾根を境界線として、小樽市に入る。
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 50メートルちょっとくらいの高さで、ごく細長く延びてきたその尾根の先が、余市湾に向かって砂浜から300メートルほど飛び出している。それが畚部岬で、西半分は余市町、東半分は小樽市と、小さなソーセージは念入りに縦割りに分割されている。
 尾根の西側には、畚部川が流れているのだが、やはり境界線となると、このような場合は川よりも尾根のほうが優先されるのは、そのほうがお互いの領域を守るという、境界本来の役目からして都合がいいからだろう。
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 蘭島でバスを降りてみたのは、この付近まで来ると小樽行きのバスの便が増えているので、次の便まであまり待たなくてもいいからで、海岸に出てみれば、畚部岬はもちろん、東に大きく張り出した忍路のポロマイ岬も見ることができる。
 こちらの海岸も砂浜が続いているので、一帯は海水浴場になっていた。畚部岬の東、小樽側にあるのは蘭島海水浴場。北海道の7月半ばは、まだ海の中に入っている人は少ないが、浜辺は多くの人で賑わっていた。
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 北の海水浴場は、ただ単に泳ぐためだけのものではなく、バーベキューのものであったり、ビーチバレーのためのものであったりするのか。
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 統計データがあるわけでもないので、極めて主観的・個人的な感想に過ぎないのだが、どうも北海道や東北・北陸にかけて、日本海側のほうが海水浴場が目立っているように思える。実際にはそんなことはないのかもしれないが、岬めぐりで歩いていると、それは毎度日本海側で感じることだ。
 こういう海水浴を楽しむ人のなかに、歴史的遺跡を発見する中学生がいた、またいるかもしれない、と考えると愉快である。

▼国土地理院 「地理院地図」
43度12分0.36秒 140度50分41.75秒
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dendenmushi.gif北海道地方(2011/07/18 訪問)

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コメント 1

ナツパパ

地図で拝見すると、ほんと、見事に飛び出てますねえ。
by ナツパパ (2011-11-15 16:03) 

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