667 橋掛崎=尾鷲市盛松(三重県)山道を歩きながらこう考えた…地図の地名表記も電子国土も改善の必要あり [岬めぐり]
三木浦トンネルができる前の旧道あたりから半島の南の海岸までの一帯、「盛松」という名をもつかなり広い地域は、山また山である。その横っ腹をくねくねと自動車が優に通れる道が続くが、人家らしいものはどこにもない。
カラカマノ鼻は早田町であったが、そのすぐ南に続いてあるはずの橋掛崎の所在地は盛松である。橋掛崎からさらに南にある三木崎、そしていくつもの無名の岬とともに、そのさらに西に出っ張る半島の先端まで、半島の南側の大部分を占める盛松地区には、人が誰も住んでいない。前項で紹介した尾鷲市の人口データ資料では、盛松という地域の欄はあるが、その人口の数字は空欄になっていた。
それなのに、道路だけはある。その謎は、歩いて行くうちに判明した。
旧道に入ってから間もなく、遠くに見えていたあの異様な光景の現場に到達してみると、そこは巨大な土砂捨て場だったのだ。それも、どうやら一か所だけではないらしい。
日の光に反射するような白い土は、種類が一定していて、かなりの量が搬出され、ここまで運んできて谷を埋め、斜面を覆っている。ということは、あちこちの残土を運んできた寄せ集めというのではないから、どこかで巨大トンネル工事でも行なわれているのだろうか。
工事現場は、道路から下の谷に向かって広く展開している。ふたつ目の現場を過ぎたところから、三木崎入口を示す標識と階段状の登りの山道が続いている。
えんやこらと登ると、そこからはアップダウンを繰り返す山道が続き、あたり一面は木々に埋もれていて、展望はまったく利かない。
そんなわけで、橋掛崎も樹木の間にときどきなんとなく、これがそうかな、という感じで見え隠れしていた。
それが、ある場所では突然視界が開け、橋掛崎の姿が忽然と現われた。だが、こんなふうに見えたのは、この場所一か所だけで、すぐにまた海から遠く森の中に入って行くことになった。
GPSは、一時期本気で導入しようと考えていたのだが、岬めぐりの記録と保存方法のうえで、結局さほどの必要性と重要性がないらしいということになって、そのままになっていた。
途中で、ちらちらと見え隠れする白い岩場は、地図でいうとどこにあたるのか、よくわからない。目印らしいものが、まったくないのでiPhoneで現在位置を確認したことはあったが、してもしなくても一本道でただ前に進むしかないのである。
国土地理院の地図も、この山道の描き方は、実際に歩く感覚とうまく符合していないように思えた。三木崎へ向かう地図上の点線の山道は、海岸が近くに見えるところにはないはずなのだが、もう足下といっていいくらいに木の間から海や岩が見えていた。
そんなこともあって、地図と見比べると、橋掛崎の位置と実際に見える景色は、どうもうまく合致していないように思えてきた。
その地図だが、ネット地図ではここ「盛松」の範囲がポイントごとに地名が表示されるので確かめられるのだが、それと地図上に記してある表記が、ほとんどでたらめといってほどずれている。
電子国土ポータルでも、「盛松」の地名表記は半島の中にはどこにもなく、三木浦漁港と三木浦小学校の間へんに一か所だけ記してある。これはやはり、地名表記の手抜きというより間違いで、国土地理院がこれだと、なにを信じていいのかわからなくなる。
最近の地図では、町や地域ごとの境界線を描いたり、色分けをしなくなったのが多い。極端な色分けは、地形図としてはむしろマイナスなので、ないほうが一見すっきりしてそれもいいようにも思えるが、地域境界を知りたくなることもたまにはある。目立たない点線くらいは、あっていいような気もする。その点、Mapionは8000分の1以下では、地域境界を色分けで明示している。
ひさしぶりの地図ついでに言えば、国土地理院の電子国土ポータルは、やっぱりなかなか使いにくい。以前もそうだったので、25000分の1の「ウォッちず」のほうにしていたことを、改めて思い出した。現在の電子国土ポータルでは、ノートタイプなどで見るときには、縮尺の変更や画面の移動時に、よく地図が行方不明になる。四角で切り取ったように地図の一部しか出なかったり、青い大海原に突然放り出されてしまう。最初はそう思ったのだが、青の色が異なるのでそれは海ではなく、どうも地図が表示されていない状態らしい。そうなるともう、陸地を探して戻ってくるのが大変なのだ。
機種やOSによって相性の問題があるのかもしれないが、ぜひとも改善をお願いしたい。何度も遭難して、とうとう使うのがイヤになってしまって、25000分の1に戻ったりしているのだが、これも7月までで終わるとなると…。
当ブログの常連になっていただいたらしい「ぱぱくま」さんから、「岬めぐりの醍醐味とはなんでしょう?」というご質問を665項のコメントでいただいていたので、それにはいちおうコメントで答えていた。
その答えに、さらにつけ加えると、この橋掛崎のように、ほとんど誰もわざに絶対に見に行かないような、とくにクルマなんぞでは絶対に行けない岬をめざして、ひとり黙々と無人の半島の山道を行く…なんてのも、へそまがりの極致で、なかなかの醍醐味オツなもんですな。
▼国土地理院 「地理院地図」
33度59分7.74秒 136度16分20.24秒
東海地方(2011/04/13 訪問)
あれは土砂の捨て場だったのですか。
ずいぶん大規模に、そしてあからさまにやるものですねえ。
こういうの環境破壊って言わないのかな...
それとも、そんなこというのは、都会人の独りよがりなんだろうか。
結局、地図は昔ながらの印刷されたものが良い、ということになるのでしょうか。
by ナツパパ (2011-07-04 22:14)
常連のぱぱくまです(^-^;
果てまで行ってみたくなる気持ちも分かりますよ。
日本地図を作る旅みたいな・・・
dendenmushiさんの作る岬の地図見てみたいですね。
by ぱぱくま (2011-07-06 22:53)
@土砂については、今日の項目でもフォローしました。「土砂」というのもなんか、あまり当たっていないようなんですが…。
まあ、環境破壊といえばそうでしょうが、どこかに置かなければならないので、無人のこの地域が選ばれたということでしょうね。
ぱぱくまさん、地図に興味を示していただいて、ありがとうございます。
印刷されたものがよい、ということでもなくて、要は目的に応じていろんな地図があれば、それでいいのだとは思います。
ただ、ネット地図には歴史も浅いため、いろんな問題もあると、それをときどきつついています。
で、印刷ですべてやろうとすると、現在のどのネット地図の情報をとっても、それを網羅するような印刷物は、とてもつくることができないのです。
したがって、現在のネット地図の存在は、実はそれだけでも大変ありがたいことなのです。
だから、あまり文句ばかりいうのは気が引けるのですけどね…。でも、やっぱり文句はいいます。
by dendenmushi (2011-07-07 06:08)
@日本地図をつくるというか、輪郭を確かめるというか…そんな感じですね。「この国のかたち」というは、もうあまり使われ過ぎたので、使いにくい。
でんでんむしがつくる岬の日本地図というのは、ぜひなんとか形にしたいと思って、これからもまだがんばります。
by dendenmushi (2011-07-07 06:12)