番外:丹後半島最北端への道=崖だけでなく境界未定地もあるカマヤ海岸(京都府) [番外]
甲崎から北へ続く道は、日本海の青さと丹後半島の緑が迫る断崖の続く海岸線から100メートルも上、丹後半島をめぐる道は、人も車もこのただ一本の175号線を通る。北西方向に延びる海岸には、でこぼこはむしろ少ないくらいで、この付近の観光案内には「リアス式海岸」と紹介してあるものが多いが、ほんとうにそう言えるのだろうか。でんでんむしには、どうもにわかに首肯しがたい。
その説明とあわせて、この海岸を「カマヤ海岸」と呼んでいる。京都府の“なんとか200選”にもその名があるので、公式な名称なのだろうが、その名の説明はないので、どこから付いた名かも不明である。地図では国土地理院もZENRINも、等しくどの地図にもその表示がない。
このカマヤ海岸には、残念ながら経ヶ岬までは岬がないが、だからといってすっ飛ばしてしまうのももったいない。岬らしいところもないわけではないが、それをムリヤリ名前をつけて番号を振るわけにはいかないので、ここは番外として記録しておきたい。
東の蒲入から西の丹後町袖志まで、およそ6キロに渡って、この海岸には人家が一軒もない。建物としては、甲崎の上の公衆トイレと、経ヶ岬のたんかい(丹海)バスの車庫があるきりである。(おっと、経ヶ岬の灯台の建物と駐車場のトイレもか)
人がまったく住んでいない海岸線は、日本中探せばもっと長いところがいくらもあるだろう。だが、道も通っていて、しかもそんなに人里離れた山間へき地ともいえない場所では、めずらしい海岸といえるかもしれない。
なにしろ、道も急な斜面の途中にくっついているので、崖崩れも多い。山の上の高いところで物音や人の声がするのは、そこで今も防護工事が行なわれているからだし、数か所は半トンネルの洞門にして道を保護している。この長いところは、まだ比較的新しい。
カマヤ海岸のポイントは、名前はとくにないものの、やはりこの崖なのであろう。
高さだけでいうと、「590 今戸鼻」の項の若狭高浜「音海断崖」にはおよばないが、そのすぐ下を歩いて通り抜けられる。
断崖のカーブでは、まるで道路が宙に浮いているようである。歩いていても、からだが浮き上がるような錯覚さえする、ふしぎな場所である。
ここらが、ちょうど与謝郡伊根町と京丹後市の境界線にあたるはずなのだが、はっきりとここが境界線という具合には線引きが確定していない。
例によって、まったく地図のルールを超越して無頓着なZENRINソースの地図では、迷いも疑問もなく北北東に海まではっきりと境界線を引いているが、国土地理院とAlpsmapでは、崖の上の山の頂で境界線はぷっつりと途切れている。
「おおッ境界未定地だ」と喜んだものの、実は、伊根の大島のところでも宮津市との境で同じことがあったのを、見逃していた。さらには、阿蘇海にももうひとつ未定地があった。
どうしてこういうことが起こるのか、おもしろい話がありそうなのだが、誰も語っていない。
「味覚亭」(“みかくてい=未確定”ということ。しゃれてるね)さんという人のページ(「境界未定地域」の覚書)によれば、全国にはかなりの数こういう境界未定地はあるようだ。
経ヶ岬につながるいくつかのピークをもつ尾根の付け根を通り抜ける経ヶ岬トンネルはもう京丹後市。
人家も何もないトンネルの東口に、バス停がある。これまたなんでこんなところにバス停が…というやつだ。気になったので、帰路のバスで運転手さんに聞いてみたら、「やはり歩いている人もたまにあるので…」という返事。
トンネルを抜け、少し下ると、経ヶ岬の入口だ。
▼国土地理院 「地理院地図」
35度45分41.92秒 135度14分24.94秒
近畿地方(2010/06/09 訪問)
コメント 0