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598 横波鼻=舞鶴市白杉(京都府)あの興安丸もこの狭い水路を通ったのだと… [岬めぐり]

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 「舞鶴」という名は、ツルが羽根を広げて舞うような形からついたという説が、巷間広く流布されてきた。どこで聞かなくても、誰に言われなくとも、なんとなくそうかーとみんなが納得してしまうほどなので、その根拠を調べたこともない。
 しかし、いったい、どこでどこをどうみれば、そのように見えるのだろう。それは、以前からの疑問であった。
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 松ヶ崎から南へ少しのところの海岸には、なにやら公園のような船の形を模した観光施設のような建物などがあるが、その斜め対岸に横波鼻はある。狭い水道が唯一の出入り口になっている、入り組んだ湾内は、外海からの波の影響は、まったく受けない。油を流したような水面で、どんな横波が立つのだろうか。考えられるのは、すぐそばを通過する船舶が波を起こし、それが横波になって押し寄せるからそういう名前なのかと勘ぐってもみたが、こんなところでそんなにスピードを出して航行するはずもあるまい。
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 横波鼻と向かいの三本松鼻の間の水路は、港口よりもさらに狭くなる。湾は、この狭いところから南に向かって、戸島という島を挟んで東西に分かれている。舞鶴東港と舞鶴西港に、港は分かれているのだが、それに付き従うようにして、舞鶴の街自体が東舞鶴と西舞鶴に、はっきりと分かれているのだ。
 こういう街も、めずらしい。
 街の形から、ツルが舞うのを想像するのも困難なので、その東西に分かれた湾の形が、「舞鶴」の語源に相違ない。
 だが、それは天空に物語と主人公をこじつける星座の作業にも似て、とてつもない想像力を働かせるか、あるいは最初から名前があって、むりやりでも付会することでしか、成立しないことのように思える。
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 別にケチをつけるつもりはないのであって、いわくがどうであれ舞鶴とはいい名前である。
 でんでんむしがその地名を、初めて知ったのは、大陸からの復員者や引揚者を乗せて、興安丸などがせっせと日本海を往復していた頃だった。
 船には、人の生涯にも匹敵する歴史があるということを、意識するようになったのは、船マニアだったイラストレーター柳原良平の『船の本』をはじめとするいくつかの本を読んだ(見た)ときからだった。
 関釜航路の連絡船として1936(昭和11)年に建造された興安丸も、1970(昭和45)年広島三原の海で解体されるまで、実に数奇な運命を辿っていた。旧満州の大興安嶺からその名をとったこの船は、1956(昭和31)年、ソ連の不当で理不尽な国家的犯罪ともいうべき政策によって、長きにわたってシベリアに抑留されていた、最後の帰国者を乗せて、この狭い水路を通った。それが、引揚船興安丸としての最後の航海の終わりのときだった。
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 その興安丸には、でんでんむしの父の妹の夫であった人、つまり血のつながらない叔父も、乗っていた。
 帰ってきた叔父を広島駅に出迎えようというとき、大陸から復員したもう一人の叔父が、「お前は行かんでもええど…」と言って、帰ってくることのない父をもつでんでんむしを気づかってくれた。

▼国土地理院 「地理院地図」
35度30分16.36秒 135度20分4.21秒
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dendenmushi.gif北信越地方(2010/06/08 訪問)

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タグ:京都府
きた!みた!印(6)  コメント(4)  トラックバック(0) 
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きた!みた!印 6

コメント 4

右左あんつぁん

そうですか、興安丸は広島の三原で解体されたのですか。三原に行く前には横須賀に係留されていて、その頃護衛艦に乗っていた私は、出港の度に、豪華客船の名にふさわしい興安丸を眺めたものです。
by 右左あんつぁん (2010-11-20 23:57) 

dendenmushi

@右左あんつぁんのコメント、実にひさしぶりですねえ。ありがとうございます。お変わりありませんか。当方、あいかわらずひきこもりブログを実践中でして、ごらんのとおりであります。
興安丸は、戦後海上自衛隊が改装空母にするというプランもあったようですね。これは実現しなかったけど。
でんでんむしの興安丸話は、舞鶴シリーズで続いています。でも、それだけのことですがね。
by dendenmushi (2010-11-21 08:12) 

第二亀丸

舞鶴の由来ですが、西舞鶴と東舞鶴のちょうど真ん中に、五老岳と言う山があり、その山頂から舞鶴湾全景が見渡せます。
そこから見ると通説のように翼を広げた鶴に見えないことも…
現在は展望台が建設されており、KBSのライブカメラが設置されています。
http://www.kbs-kyoto.co.jp/contents/live_channel/index.htm?live=2
by 第二亀丸 (2012-08-23 00:57) 

dendenmushi

@第二亀丸さん、教えていただいてありがとうございます。リンクしていただいたカメラ映像見ました。
なるほど…というか、「見えないことも…」というところがやっぱり微妙ですね。(*^^*)
でも、何とかのように見える…というのは、こうした山の上や展望台などの高所からの眺めによるのは自然ですね。
by dendenmushi (2012-08-23 07:34) 

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