590 今戸鼻=大飯郡高浜町音海(福井県)音海断崖の端っこに出っ張っている [岬めぐり]
断崖にも数々あれど、地図に名前がついている断崖は、そう多くはない。だから、「音海断崖」という記名をこの突端に見つけたときには、ぜひともここには行ってみなければ、と思った。
音海の集落と道路がある南の内浦湾に面した部分を除いて、ほかはすべてぐるりを断崖絶壁が取り巻いているおにぎり型山塊だが、地図上で測るとその崖が50〜100メートルくらいはある。場所によっては、200メートル以上くらい(看板などには「270メートル」とあるので、公式記録はそうなのだろう)から海に落ちていく崖崩れのようなところもある。
当然、周回道路はないのだが、音海から比較的崖が急でない西側を、突端の押廻鼻まで遊歩道ができている。福井県の名勝に指定されているのだから、それくらいはないと困る。
ところが、音海の遊歩道の入口には、通行止めの看板が立って鎖でとうせんぼがしてある。そんなことでひるんでいては、こんなところまで歩いてこないってばよー。というわけで山道に入って登って行くと、まもなく崖崩れの現場があったが、これくらいはたいしたことはない。
高浜町も、急きょ復旧作業をするよりも、さっさと通行止めにしといた方が手っ取り早くて金もかからないという判断をするほどで、あまり重要な観光地として期待されているわけではなさそうだ。
だが、断崖は断崖で見事であります。問題は、誰もここまでやってくるのは簡単ではないことだ。福井県の「すぐれた自然データベース」によると、“地質学的に貴重な地点,地形形成史から見て典型的な地形”とのことで、高さ270m を超える海食崖は,中新世前半(1,400 〜1,300 万年前)の安山岩および同火砕岩からなっているのだという。なるほど、崖は赤みがかった崩れやすそうな岩塊でできている。
壮大な景観には、壮大な歴史がある。
どうやってみても、写真にすっぽり収まってくれるほど、生易しくはないのだが、この断崖を眺め、岬を見るために、ここまでやってきた。
そして、この音海断崖の東の端に飛び出しているのが、今戸鼻である。断崖を見にくる人がたまにあったとしても、この出っ張りを気にする人はいない。二つあるように見える、遠くのほうが今戸鼻なのだが、断崖といっしょに写っている写真で、今戸鼻の向うに大きくうっすらと見えているのが、小浜の久須夜ヶ岳になる。
さらに歩いて、押廻鼻のほうからこの岬を見ると、鋭利なナイフのようになった厚みのない岩の岬だということがわかる。ここでまた、遠くに影になって横たわるのは大島半島。
この付近の道端には桜の木が植えてあり、擬木の柵やベンチや看板も設置されているので、ある時期真剣に観光地としての整備が図られたのは事実であろう。
ついでに、福井県は、上記データベースでこうも書いている。
「アプローチが難しいこともありすばらしい景観が残っている.今後,観光資源として利用されると思うが開発には十分な配慮が必要である.現況は比較的良好であるので,この状態を保つことが重要である. 」
ちなみに、音海の港から夏場は遊覧船もあるという情報が、県のページなどにあったが、集落を歩いてみる限り、どこにもそんな気配もなかった。断崖を海から見上げるのは、ここなら可能だし、それも一興であろう。
そういえば、「音海」というのも、断崖に波が当たって立てる音からきているのだろうか。
▼国土地理院 「地理院地図」
35度33分2.58秒 135度30分58.81秒
北信越地方(2010/06/07 訪問)
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