589 帶ヶ崎=大飯郡高浜町音海(福井県)へたの先まで海の音は聞こえているのか [岬めぐり]
大きく二つのこぶがつながっているような、高浜原発から北の出っ張りには、地図の上では名前が記してない。半島の名前は、地図に載っていないことも多いが、この内浦半島もそうで、ほとんどのネット地図では記名がない。ただ、町のイラストマップのような地図には、そうあったので、そう呼ぶことにしよう。
内浦半島の二つのこぶのうち、先のほうが300メートルを超える山塊になっていて、そこの三方に、三つの出っ張りがある。蔕(へた)ヶ崎は、そのうちのひとつの岬で、ここは90メートルほどのピークがやはりふたこぶになった、盲腸のような突起になっている。
「へた」というのは、一般的には果実と枝の接合する部分に残る萼(がく)のことだが、巻き貝のふたのこともさすといわれて、なんかそんな記憶もあったような気もする。また、へり、はし、と同意で、汀のことをいう場合もあるようで、蔕ヶ崎という名は、さてはそこからきているのか。
高浜原発を過ぎて一本道をどんどん行くと、その途中にも関電の関連施設がいくつかあり、いかにも“原発の見返りにつくってみました”というのがありありのなんとかセンターなどもある。
音海の集落は、おにぎり型をした大きな山塊の南側に、道なりにへばりついている。内海半島にも途中にくびれがあって、ふたこぶの間ではすぐ二つの湾に行き来ができるようで、そこの内浦湾側は、広く埋立地になって、やはり関電関連の施設になっている。つまり、ここ音海の集落は、原発よりもさらに人里離れて奥まってある小さな集落なのだ。
平地や畑の類いはほとんどない。民宿の看板を掲げた建物もあり、趣のある車庫ならぬ舟庫がある港を過ぎてなおも行くと、蔕ヶ崎の手前で道は行止りになり、長い防波堤に遮られる。
波が静かで、たまに船が通ってたてるうねり以外には、海面にはさざ波ひとつ立たないような穏やかな内浦湾は、遊漁客を呼ぶのに適しているのだろう。湾内のあちこちで、そのための施設が目立つ。浮かんでいる四角いフロートや、沖に向かって延びているデッキも、必ずしも養殖漁業のためだけではなく、釣り客用のものであるらしい。
地形的には奥まった隔絶されたところであるのに、さほどに淋しい感じがしないのは、そのためでもあり、また内浦湾がそう大きくなく、すぐ向うに京都府との県境に当たる山が控えているからだろう。
蔕ヶ崎の付け根のところから、山道に入って、このおにぎり山にくっついている、他の二つの出っ張りを訪問する計画で、そのためにこそ、朝からエンエンここまで歩いてきたのだ。なにか食べたい時間にもなったが、あいにくそういう店のひとつもないが、この程度は平気である。
35度32分25.75秒 135度29分47.90秒
北信越地方(2010/06/07 訪問)
コメント 0