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475 中山崎=上北郡六ヶ所村大字泊(青森県)マサカリの柄にある貴重な岬のひとつ [岬めぐり]

 六ヶ所村。一時期は、全国ニュースで盛んに取りあげられた地名である。それ以前から、大きな町も高い山もなく、湖が点在していてなんだか広い土地が広がるだけのような、いかにも人口密度の低そうな北の端っこのほうは、いったいどんなところだろうかと、地図を見ながら想像をめぐらせていたものだった。
 俗に“マサカリのような”という形容が、鉞など民俗資料館にでも行かない限りめったに見られないこの時代でも、ちゃんと通用しているのもおもしろいが、この下北半島へは、これが3度目の訪問となる。
 マサカリの柄の部分は、東の太平洋側、西のむつ湾側ともに緩い弓なりの海岸線が続く。そこを南北に走る動脈は、東に338号線、西に279号線とJR大湊線の3本だけ。海岸線にでこぼこもほとんどない。
 したがって、岬にも一見無縁そうだが、その南東部に当るところのかなり広い面積を、縦長に占めている六ヶ所村には、「一つ半」だけ岬がある。この付近では貴重な岬で、もしこれがなければ、南は八戸の葦毛崎から北の尻屋まで、100キロに及ぶ“岬空白地帯”が生じるところだった。
 「一つ」は、泊の中山崎、「半」はむつ市との境界線上にある物見崎。
 どちらも、ほとんど知られていない岬だと思っていたら、先だって、あるツアー広告の行程中に、物見崎の名を発見して、ちょっと驚いた。いよいよ観光バスがここを通るようになったのか!
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 中山崎は、泊漁港の南を仕切る岬で、その先端部分は道路や港湾工事のため、崖がセメントで補修されているのが目立つ。
 泊漁港には、ランプと網の巻き上げ機のようなものをつけた漁船がいっぱいだ。人が誰もいないので、聞くこともできなかったから、帰ってきてネットでこのあたりでは何が獲れるのか調べようとしたら、「泊」という地名は全国各地にあり、Yahoo!検索では「泊漁港」では45,000件もヒットする。「六ヶ所村」で絞ってみると、一挙に62件になった。それでも、なかなかそれらしい情報には行き当たらない。やはり、イカがメインなのだろうが、村のホームページに釣り船のページがあるところを見ると、遊漁船観光にも力を入れているのだろう。それも五目釣りが売り物らしい。
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 人っ子一人いない漁港にはわずかなコンブが干してあり、その脇をカモメがのそのそしている。北海道の野寒布岬で、本州では考えられないくらい大きなウミネコだかカモメだかを見て、一瞬アホウドリでは…と思ったことがあったが、本州もここら辺だとカモメもかなり大きい。
 六ヶ所村へは、野辺地駅前から下北交通のバスが日に数本ある。
 朝一番早い「はやて」で八戸まで行き、そこから「スーパー白鳥」に乗り換えて、野辺地で降りる。何度か電車でここを通るたびに印象に残っていた駅のすぐそばの黒々とした杉林も、降りて眺めるのは初めてだ。年代物の観光案内図とバスダイヤが掲示された乗り場で待つうちに、ほどなくバスがやってきた。
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 このバス、どういうわけかでんでんむしの指定席はなにやらバックが占拠していて座れない。念のために、運転手さんに中山崎へはどの停留所で降りるのがいいか尋ねてみたが、ここでもまた岬の名前では通じなかったようだ。泊のところですけど…と言ってみたが、「灯台があるところかなあ」と困っている。灯台はなかったように思いますが…と地図を示して、それじゃとにかく漁港の近くで降ろしてください、とお願いした。
 野辺地の町を抜ける途中で、数人の乗客が乗ってきたが、営業所兼車庫のようなところで、運転手さんが降りてしまった。帰ってきたときには観光地図帳を手にした事務所の人が一緒で、わざわざ中山崎の確認をしにきてくれたのだ。おおいに恐縮してしまう。見た目ぶっきらぼうだが、根は親切なのだ。
 ただ、持ってきてくれた観光写真地図は、物見崎の表示位置がかなり南にずれており、これも現地を知らないどこかの業者が、適当につくったものらしかった。だが、余計なことは言わず、親切に感謝して漁港の位置だけ確認させてもらった。
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 野辺地を抜けたバスは、しばらくは野辺地湾に沿って北上する。広い陸奥湾は、南西が青森湾で南東が野辺地湾となっている。沿道には雪よけの棚が延々と続き、その向こうの湾の端に見えるのは、夏泊半島だ。この先端が夏泊崎かと思ったが、後でよく地図を見ると、道路の位置関係からして、鼻繰崎の可能性が高い。
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 やがて、海岸線を離れたバスは、大湊線の線路を越え、山の中に入っていく。これから先、尾駮(おぶち)沼の周辺一帯が原子燃料リサイクル施設、ウラン濃縮工場、再処理工場などが続く原燃地域である。
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 温泉施設もあるらしかったので、最初はバスの便さえ都合がつけば、ここらで降りて、原燃PRセンターの見学くらいしてもよかったのだが、やはりこんなところに人を集めるのはムリだったようだ。温泉も休業中で、どこまでも続く高い杭を立て並べたような柵(これも積雪対策なのか)を眺めていると、とてもてくてく歩き回るような場所ではなく、やはり通り過ぎるのが賢明だったようだ。
 ここが六ヶ所村となったのは、明治の中頃で、周辺の六つの集落を統合してできた村なので、その名がある。
 今では、原子燃料サイクル施設のほかにも、国家石油備蓄基地、ウィンドファームがあり、そのおかげで年間60億円もの税収がある財政的には裕福な村なので、周辺市町村との合併話にも首を振り続けている。
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 地図で見ていて、直感的に「いかにも人口密度の低そうな」ところと思ったのは現在でもまだ当たっていて、人口1万人ちょっとの六ヶ所村の人口密度は、1平方キロメートル当たり43人である。
 調査データに数年のずれはあるが、これは北海道の富良野とほぼ同じで、最低は夕張の19人。因に、でんでんむしの住まいする東京都区部では、1平方キロメートル当たり13,192人だといわれると、いったい人間の暮らす場所とかいうものは、なんなのだろうと考えてしまう。
 そのことに、どうしてこんな違いができてしまうのだろう。どこに住もうが、それは個人の自由であるとはいうものの…。それもさまざまな制約のなかで、個々に適当に折合いをつけているだけなのだ。もしかすると、“住めば都”というのも、自分を納得させるための虚構に過ぎないのではないか。
 野辺地から乗ってきた数人の乗客(若い人はいない)は、六ヶ所村役場付近までで降りてしまった。役場のあるところから泊までは、今度は太平洋がちらちらと見える道をさらに17キロくらい北へ進まなければならない。
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 泊の集落の中心は、中山崎の1キロほど南にあるらしい。“らしい”というのは、野辺地からのバスが通る道路(338号線)は、海岸からは30メートルくらい高いところを走っているので、それとわからぬうちに通過してしてきた。(…と書いていたのだが、よくよく地図を見て検証すると、どうやらバスは泊付近では338号線も集落の中を抜けてきたらしい。こういうところは、初めての土地をわずかな間に通りすぎるのでは、なかなか記憶も定かでない。)
 漁港からはるか上に、ガードレールや階段がある。またそこまで上らなければならないが、そこへ行く道がない。人家の間をすり抜けて行くと、家の前の小石を敷き詰めた空地に、一人のおばさんがコンブを並べているところに出くわしたので、声を掛けて通り抜ける許しを乞う。
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 上りきって、泊中学のバス停まで行き、そこで今度はむつへ行くバスを待つ。バス停の標識の丸い頭の部分は、意味もない破壊をしたがる中学生のため(おそらくそうだろう)になくなったままである。

▼国土地理院 「地理院地図」
41度6分0.48秒 141度23分51.30秒
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dendenmushi.gif東北地方(2009/09/08 訪問)

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タグ:青森県
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