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461 天神ヶ鼻=倉敷市児島塩生(岡山県)コンビナートに取り込まれてしまった岬 [岬めぐり]

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 水島、玉島、乙島、柏島、連島、亀島、片島、中島、児島…。これがすべて倉敷市内の地名である。この一帯には、干拓・埋立てのDNAが脈々と息づいてきたのではないかという推理は、先に玉島地区で「崎」がつく地名が多いことに触れて述べていたのだが、かくのごとく「島」も多い。おまけに「浦」や「江」まで多いときては、ついよけいなことまで書きたくなってしまう。
 これらは太古の昔から、この付近が多島海の風景に明るく輝いていたことを暗示している。
 そう考えて、まず間違いなかろう。
 奈良時代の行政官であった吉備真備は、高梁川左岸の真備町の出身で、というとすぐに和気清麻呂も連想されるが、かなり古くから栄えてきた地域であった。しかも、畿内とは距離的に比較的近いこともあって、水運などの便からしても、長い間重要な意味をもつ地域だったことは、徳川時代には天領であったことからも察せられる。
 吉備真備が活躍した頃は、高梁川の河口付近には沖積平野が徐々に形成され、あちこちに浮かぶ島々が吉備の穴海や甕(もたい)ノ海として、美しい海が広がっていただろう。だが、平安の頃には現在の倉敷市の中心は、すでに阿智潟という干潟になっていたといわれる。
 山陽道が、山陽本線が海から遠く離れているのは、もちろん最短距離コースということもあるが、地盤の新しいところは避けてきたからでもあろう。
 この地の干拓の歴史的な背景をちょっとだけ想像してみたのだが、美観地区でない倉敷市内を児島行きのバスが走って行き、倉敷商業の前をさらに南下すると、あちこちに掘割運河が流れている。これも、かつての海の名残だろうか。
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 倉敷駅から同じバスで同乗してきた中学生のグループが、夏休みの大会でもあるのか大挙して降りていった大きな池のある福田公園から南は、東に山が迫り、西に運河と工場地帯が広がってくる。やがて、宇野津を過ぎたところでバスはちょっと高い尾根を乗り越えるが、この尾根が西に向かう先が、天神ヶ鼻という岬にあたる。そのはずである。
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 峠の上でバスを降りるが、ここでも海は遠く、岬は見えない。地図で見ても、周辺はすべて工場でブロックされていて、なかなか近寄れそうにないが、なにか方策があるかも知れない。
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 そう考えて、まず目をつけたのが、前にある小山で、この上に神社がある。そこまでは道があるので、登って行けば天神ヶ鼻も見えるのではないか。
 宇頭間という集落が、小山にへばりついているが、道端の石碑も意味がわからぬままにありがたそうだ。鳥居を目指して汗をかきかき登って行くと、確かに若干の展望は開けたのだが…。
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 見えてきたのは、コンビナートに取り込まれているが、かつては高島という島だった小山で、天神ヶ鼻とは別のもの。肝心の岬は、長い尾根と繁みに隠れたままで、姿を現わすことがない。もっと高いところへと苔むした山道を南のこぶへも登って見るがやはり薮で見えない。後で帰ってきてから国土地理院の地図を見たところ、ここは南へではなく、逆に低くなっても北へさらに行ったほうがよかったのだろうか。
 だがまあ、こういうこともあります。それでいいのだ。
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 しかし、天神ヶ鼻は見事にコンビナートに取り込まれ、外部とは隔絶された岬として、特異な存在であることはわかった。
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 峠の南には金浜という集落がある。この前の海と浜は、塩をつくっていたのだろう。今に残る「塩生」という地名が、その実態を示していたのは、いつ頃までのことだったのだろう。塩で儲かったから「金浜」? そんなこたあないか。
 「塩生」は、「しおなす」と読む。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度29分32.48秒 133度45分45.21秒
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dendenmushi.gif中国地方(2009/08/13 訪問)

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タグ:岡山県
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コメント 1

dendenmushi

@ほっほう! この「nice!」はすごいなあ。「音楽」で「2位」のxml_xslさん、「旅行」で「1位」のtakemoviesさん、「本」で「1位」のc_yuhkiさん。
お3人揃い踏みで「nice!」が並んでしまいました。

“それがどーした”という人は「番外:なぜ「ひきこもり」なのか」も、ご参照あれ。

いつもありがとうございます。
by dendenmushi (2009-08-28 06:15) 

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