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460 帆崎=倉敷市玉島黒崎(岡山県)古い峠道をバスで越えて行く“女先生と約二十の瞳” [岬めぐり]

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 帆崎とは、船に関係のありそうな名前だが、この岬がある南浦には、それらしい漁港はない。地図で見る限りでは、南浦(なんぽ)の海岸は砂浜でも岩磯でもなく、コンクリートに固められているらしい。岬の上に白いものが見えるのはガードレールで、ここを道が通っている。hozaki01.gif
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 この岬自体は、南浦に降りなくとも、安倉からも常に見えていた。傍示ノ鼻の写真の向こうに、必ず一緒に写ってしまう岬なのだ。その向うに見えているのは、水島や児島である。
 たまたまバスの都合と道の都合でそうなったが、ここは、寄島からの遠望と、南浦を通りすぎるバスの窓からの眺めでよしとしたのは正解だったようだ。傍示ノ鼻と帆崎は、どちらも木々の生い茂った小高い峠道になっていた。そこへ行ったとしても岬は見えず、細い道を走るバスからは、わずかに帆崎と南浦の湾がちらりと見えただけだった。
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 安倉にやってきたバスは両備バスで、古い車両を使っている井笠バスと違って、行き先表示・料金表示にも停留所名が出る。あらかじめ調べていた路線ではなく、たまたま通り掛かりに見つけたものなので、始発がどこからか知らないが、前のほうの座席には10人足らずの小さな先客がグループでお行儀よく固まっている。
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 つばの広い野球帽をかぶった、一見お忍びのタレントかと見まがうような若い女先生に引率されて、どこかへ行くところか、帰るところか。
 この二つの岬を山坂で越える道は、かなり古い道のようだ。
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 南浦から帆崎を越えると、すぐに岩谷という小さな浜と集落と名もない岬がある。そこには「水上バイク禁止」の町内会の掲示がしてある。楽しかるべき夏の海岸を、人の迷惑も顧みず騒音と危険をまき散らしている、この代物については、でんでんむしもかねてから苦々しく思っていた。ヤマハとしては、最低のレジャー商品をつくりだしてしまったといってよい。
 この東には、紗美の浜という広い砂浜の海水浴場があり、さらには昔はやはり島と岬だったらしい雨笠の松といった景勝地もある。
 “女先生と約二十の瞳”一行は、途中沙美の辺りで降りて行ったが、これから海水浴には時間的に遅過ぎるし、身軽な格好で荷物もないのでキャンプではない。その姿を見ていてほほ笑ましく思えたのは、今頃でも夏休みにこどもを連れて行く先生があることに、なんとなく安心したからだ。
 昔は、学校の行事とは別に、夏休みに先生もいっしょにどこかに行ったりというのは、ごく普通のことだった。近頃では、先生もそんなことをして責任問題になると大変だから、滅多なことではあり得ないと聞く。
 なにかと、情けない世の中になってしまったものだ。
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 だが、事故はいつの世でもつきものだ。バスを降りて喜々としてはしゃぐ一行を眺めていると、はるかな夏のキャンプでのことがよみがえってきた。そのことは、「100 聖崎=宮島(広島県)懐かしくも切ない香しきかほり」でふれているので繰り返さないが、不可抗力であったとはいえ、あのときの先生の心労が、今頃になって自分の責任のように感じられてくるのも妙なものだ。
 それはあるいは、ここいらの浜も広島と同じ、白っぽくてわずかに薄紅色のさした花崗岩の砂浜だからなのであろうか。
 バスは、細長い玉島港に沿って新倉敷駅に向かっている。高梁川からは遠く離れているが、ここで川が港になるのも、多少は埋立てとも関連があろうか。
 倉敷といえば“大原美術館”は、昔は憧れた時期もあった。今でも倉敷は、若い女性向けの観光情報が溢れる人気地区だというが、あの“美観地区”とかいう変な名前をつけたり、“チボリ公園”などというものに多額の税金を投入するようになってからか、急速におかしくなってしまった。
 埋立地のコンビナートなどの税収のおかげで、財政が豊であった頃も遠い昔。現在は、放漫財政のツケに苦しんでいるらしい。
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 それにしても、新倉敷駅北口には驚いた。これはいったいどこの景色じゃ!? 大学があるらしいのだが、どうも倉敷人は「美観」というものを勘違いしているのではないかと、あらぬ心配までしてしまう。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度29分29.94秒 133度37分2.24秒

dendenmushi.gif中国地方(2009/08/12 訪問)

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タグ:岡山県
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きた!みた!印 3

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dotenoueno-okura

エドモンの拙者がふと(この辺に住みたいなあ)と思ふのは、気候温暖で魚と果物がうまい静岡県で、次点が岡山県なのでござる。どちらも明るく、都会生活と隔絶されていない頃合いのスタンスがええ。映画『東京物語』の老夫婦を思い出すのう。また江戸川土手を歩けば対岸は埼玉県ゆえ、「目の前の島が香川県」(第458回)といふ感覚に親近感を覚える次第。
岡山、倉敷……瀬戸内海を挟んでかつては甲子園を湧かせた強豪校がひしめいていたものじゃが、近年はようすがかわりましたなあ。もっとも拙者にとって当地は、内田百間と大山康晴につながる地でござるが。
じつは拙者、当ブログを読むたび「岬の分校」といふ言葉が脳裡に浮かぶのでござるが、どうもその理由が『二十四の瞳』の記憶にあるらしい。でまた「自転車に乗ったおんな先生」をでんでんむしうじに差し替えたり、ラストの自転車の寄贈シーンで泣けたといふ「あんつぁん」さんの記事を思い出したり──今シリーズはさまざまな追憶と連想で楽しめそうですなあ。

by dotenoueno-okura (2009-08-25 08:42) 

dendenmushi

内田百閒(この頃は「うちだひゃっけん」で変換しても、すぐこの字が出るようになった。自分で作字していたのは、確か5年くらい前までか?
百閒の『まあだだよ!』にも出てきたと思いますが、駅名を暗唱するのは…。
倉敷商業の前を通ってきましたよ。最近は、あの某カントクの姿を見なくなって、ちょっとホッとしています。
「岬の分校」もね、島は後回しといっているので、いつになるやら。
今日の461項目では、古代にも連想を広げてみました。
とにかく、ここは昔から豊かなところでした。そういう点では、広島なんか岡山の足元に及ばないのです。ホントはね。
by dendenmushi (2009-08-26 06:04) 

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