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462 宮の鼻=倉敷市児島通生(岡山県)人間はいったいなにをつくってきたか [岬めぐり]

 「塩生」が「しおなす」なら、「通生」はどうです? 「みちなす」? う〜ん、ひねってきましたねぇ。でも、×。正解は「かようぜ」。
 これだからね、地名の読みは、はやいとこ降参しといたほうが無難です。
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 高梁川の河口を干拓や浚渫で押し広げたのと、海岸線を西へ埋立ててきた工業地帯は、東西約10キロ、南北7キロに及ぶ。
 宮の鼻は、その南のピリオドをうつ岬である。さしもの広大な水島臨海工業地帯も、ここで終わるのだ。
 現在では瀬戸自動車道にその場を貸している、長く南に延びてきた低い山並みに沿って、西側に広がってきた海岸の埋立ても、横に張り出した宮の鼻の尾根でやっと区切りがついている。
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 地名が塩生から通生に変わり、宮の鼻のある尾根の峠道を乗り越えると、小さな湾に集落がある。北側には漁港もあるが、それが地域の生活を支えているというほどではない。
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 ここもまた道なし岬だが、その上には何かはわからない赤い建物も見えている。その向こうまでが工場地帯である。
 左手の島は、宮の鼻の西側で対峙している葛島で、この岬の向う正面にはサノヤス造船所がある。この造船所は、瀬戸内ではちっとは知られた造船所だ。しかしながら、長引く造船不況で、すでに地図上の表記とは違う名前になっている可能性も大。
 その奥、遠くに林立している煙突は、水島港をはさんで北西のJFEスチール西日本製鉄所や新日本石油の水島製油所。そのさらに北付近が、三菱自動車水島製作所となっていて、そこまでは、倉敷から臨海鉄道も通っている。前項の塩生にあったのは、旭化成や三菱化成やジャパンエナジーの製油所であった。コンビナートには、いろんな会社のさまざまな工場が連なっている。miyanohana03.gif
 有名な水島の干拓地は、江戸時代からの歴史をもつが、ここが工業地帯になるきっかけとしては、1941(昭和16)年に三菱重工業水島航空機製作所の建設のため、強権的な用地買収が強引に行なわれ、ここで軍用航空機の製造を開始する。
 三菱といえばゼロ戦だが、戦争後期になると、その多くは中島飛行機のほうで製造されるようになっていた。三菱水島で製造されたのは長距離攻撃機である一式陸上攻撃機が500機ちょっと。この飛行機は、後継機の開発が遅れたこともあって、終戦まで主力機であった。水島では、ほかに紫電改も少しつくられたという。
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 でんでんむしが飛行機好きなのは、これが「鳥のように空を飛びたい」という万人が思い描いたであろう夢を現実にしたという点で、なによりも人間が考えて造りだすものの象徴のように思えるからである。一式陸攻やゼロ戦が好きな、戦争オタクではない。スピットファイアもメッサーシュミットも、プラモデルでつくっていたりしたが、それをつくりながら、二宮忠八が軽いスズメを観察して飛翔を考え抜いたという意味を思ったりしていた。
 だが、実を言うと、でんでんむしの生涯で飛行機といえば、世界で最初の原子爆弾を落とす直前(ほんの数秒前)のB-29。これにつきる。
 今思えば、それはまるで「しあわせひとつ運んできました。今落としま〜す。待っててね〜」みたいな感じで、抜けるような夏の青い空に朝日を受けて銀色にキラキラ輝きながら、のほほ〜んと飛んできたのだ…。が、それはまた別の話。
 飛行機が、戦争によって技術革新が進展し、成長してきたことはまぎれもない事実だ。だが、アインシュタインをはじめとする世界超一流の頭脳が生みだした原子爆弾は、これも人間が考えて造りだしたものであったという事実は、ときになかなか理解し難く…。
 いうまでもなく、アメリカ軍による本土空襲が可能になると、工場はさっそく爆撃で壊滅させられる。
 水島の焼跡には、戦後、岡山県が工業優先の高度な産業構造に転換する場として、ここを重点的な臨海工業地帯としてコンビナート化する政策を推進してきた、というわけだ。
 一時は4万人もの人々がここで働いていたが、今ではその半分とまではいかないまでも、かなり減っているという。
 果たして、“近代的で高度な産業構造”のコンビナートは、これから人間のしあわせのために何を造りだしてくれるのだろうか。
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 花崗岩の石組みの突堤に立って、水島灘の青い海を眺めながら、そんなことを考えてしまう。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度27分46.43秒 133度46分3.32秒
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dendenmushi.gif中国地方(2009/08/13 訪問)

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タグ:岡山県
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