349 波多崎＝宮城郡七ヶ浜町吉田浜（宮城県）火力発電所の南にあるはてな？の岬

　結局、花渕崎の港から吉田浜の港越しに見たこれだけが、波多崎を望む貴重な写真となってしまった。


　このときは、まだ上空は晴れていたのだが遠くの空はその色の濃さを増していた。吉田浜の港を過ぎて、峠にかかる辺りから、急速に天気は悪くなり、あっという間に雨が降り出した。この日の天気予報は、昼頃雨といったり晴れるといったり、前日からブレており、結果的には前のほうの予報が当たってしまった。
　中学生の頃だったかにみた『雨に唄えば』で、ジーン・ケリーが雨の中で歌って踊るのも、「なぜ？」という不思議な想いを最後までぬぐいきれなかった、という記憶がある。だが、もはやそういうこともあろう、雨の中を歩くのもまた別の風情があっていいいじゃないか、というくらいの心の余裕は、できているつもりだ。
　こういう岬めぐりには、常に天候に恵まれるとは限らないので、ある程度のことは、それなりに覚悟ができているつもりである。風雨の中をポンチョをかぶって歩いたことだってあるが、やはりどちらかといえば知らない道を歩くときは晴れているほうがいい。
　ひとつ、言えるのは、いくら悟ったようなことをいっても、急な雨はやはり判断を鈍らせ、誤らせることもある、ということだ。
　たとえちょっとだけでも、波多崎が道から見えるところは、ただひとつしかなかった。そこを通るときには雨の中で、まだ先へ行けばもっといい場所があるはずだという気持ちがあって、カメラも出さずに通ってしまっていた。

　ところが、道はどんどん海からは離れてすぐ見えなくなってしまい、おまけに住宅が立て込んできて岬へ行く道がない。それでも、代ヶ崎の仙台火力発電所（ここの煙突は、萱野ヶ崎からも見えていた）の橋のところからでも波多崎の北側が望めるはずだという観測を、地図で検討つけていたので、そこまで行くつもりで歩いていると、鼻節神社にあったのと同じパソコンでつくった駐車場の標識があった。「観光客専用波多崎臨時駐車場」とあるので、臨時の時にしか使われていないのだろうか。しかし、“観光客”と書いてしまうのもなかなかいい度胸だ。

　駐車場があるのに、岬へ行く道がないではないか。住宅の間に一本道があったが、あれを行くべきだったのか。標識のつけ方が、なんか間違っていませんか。
　雨の中では、また引き返してうろうろする気にもなれず、そこを通り過ぎたが、発電所まできてびっくり。

　あらゆる道や橋が、すべてフェンスで通せんぼがしてある。このフェンスと堀川の向こうは、緑地帯になっているらしいが、そこにも入れない。そのうえ、ご丁寧な目隠しまでしてあって、岬に近づくことはおろか、ちらともうかがうこともできなかった。
　そこから、また歩いて多聞山と大木囲貝塚に行く予定だったが、この空模様ではその気も失せる。


　ちょうど本塩釜駅前行きのバスがやって来る時間に近いことでもあり、そのままそれを待って乗り、貞山堀を越えて七ヶ浜町に別れを告げて帰ってきたが、皮肉にもバスが堀を渡る頃になって、天気は回復に向かっていた。

　金山のバス停の近くの溜池の脇には、「大木囲貝塚まで4キロ」というまだ新しそうな石の標識が立っていた。

　これは「だいきがこい」と読み、国指定の大規模な史跡公園として整備されている。松島湾に舌をベロンと出したような七ヶ浜の地形は、最高地でも100メートルに満たない丘の起伏が続き、あちこちに海に向かって入江があったのだろう。6000年も前から人が住み始めても、何の不思議もないが、この町には40を超える貝塚があり、宮城県は関東地方に次いで貝塚が多い所だという。その多くがこの松島湾岸に展開していたのは、当然のようにも思える。
　それにしても、こんなところに、4キロも先にある貝塚の標識があるのも、不思議な気がした。

▼国土地理院　「地理院地図」
38度18分51.49秒 141度4分45.56秒

東北地方（2008/10/15　訪問）

タグ：宮城県

コメント 4

このところ「行き止まり」「立入禁止」が相次ぎますね。旅にでれば「見慣れぬこと・不思議なこと」に出会うのは当然ながら、独り焦ったり戸惑ったりのお姿を思うといささかお気の毒。それにつけても思うのは「クルマでお越しのかた」が前提で「歩いてくるひと」など想定外という世相。（あの白いラインは歩行者用に見えるけれど）
『雨に唄えば』ねえ。ミュージカル映画と歌って踊れるスターが人気というあの国民性になじめない拙者などいまだに「歌ったり飛び跳ねたりの映画のどこが面白いんだろ」と思っています。
とっさのときに、三人娘（デビー・レイノルズ、ジュディ・ガーランド、ドリス・デイ）の名前がすらすらでるかどうかを“頭の調子”を計る目安にしているんですが、近ごろ三人目がでてこないことがしばしば。
by NO NAME (2008-12-08 09:39) 

＠いやいや、気の毒がられる必要は、毛頭ないですよ。これも楽しんでいるだけですから。
　「臨時駐車場」とあるので、道もそういう特別なときにだけ開く、というしくみになっているのかなあ、と思いましたが。
　とにかく？です。
by dendenmushi (2008-12-09 06:51) 

波多崎の近所に住んでいる者です。

＞住宅の間に一本道があったが

その道が波多崎に行く唯一の道です。
知る人ぞ知る釣りのスポットなので、釣り人達が結構来ますよ〜。

または、砂浜（前塚浜）から崖をよじ登るか（一応登れます。笑）。


by 通りすがり (2009-01-03 22:07) 

＠“通りすがり”さん、ありがとうございます。ああ、やっぱりそうでしたか。
　砂浜は（前塚浜）というのですか。そこへ降りる道もわからなかったので…。
　まあ、天気がよければもっとあちこちうろうろしたと思いますが…。
　でも、波多崎とのご縁は、ここまでだったと割り切ろうとしていますが、もしよかったら、波多崎の写真など送っていただければ、ここに掲載させていただきますが…。
by dendenmushi (2009-01-04 09:15)