SSブログ

335 丸山崎=東松島市大塚(宮城県)仙石線野蒜駅から自転車で行く岬は丸く道は平坦でも… [岬めぐり]

 宮城県の海岸の地図を眺めていると、すぐ気がつくことがある。それは、海岸線に沿って北上川から阿武隈川まで(途中松島湾は除く)、運河が掘られていることだ。長い間疑問に思っていたことだが、なぜこんな海岸に運河が必要なのだろう。水運、そりゃわかりますよ。それならすぐそばにある海を、船で行けばいいじゃないですか…というのがシロウト考え。
 結局、海を行くにはそれなりの船や港が必要だということと、波や風の影響を常に受けたり、砂の堆積などがあっては物資や人のスムーズな輸送ができないということだろう。それに加えて、後背地の新田開発を促進する水路としても役目もあったらしい。
 北から北上運河、東名運河、貞山運河と名前が変わっているが、これを全部総称して「貞山(ていざん)運河」ともいう。貞山は伊達政宗の号である。今から400年以上も前から明治まで、営々として運河の開削と運営が続けられてきたというのは、大変なことだ。まさに、これは日本一の運河なのだが、今ではただの流れない川?
 こういう運河があれば、離れた幾本もの河川をつなぐことができる。東京都営地下鉄の大江戸線みたいなもんだな。
 それにしても、こういった計画が、ほかの地域でも同じように展開されてきた訳ではないので、もっと仙台ならではの独特の背景があったのだろうか。
 仙石線の野蒜という駅で降りると、すぐ目の前に東名(「とうめい」ではなく「とうな」)運河がある。そこから広くて長い松林(松島の景色のおまけというので、「余景の松原」という)を過ぎ、やはり干拓地らしい平野をひたすら西へ行くと、目指す丸山崎である。
maruyamazaki01.gif
maruyamazaki02.gif
 いかにも、昔は島でしたというような丸山という標高50メートルほどの山があり、その先に丸く飛び出しているのが丸山崎だ。丸山の北側は、コスモスが一面に咲いていたが、とくに手入れがされているような風情でもなく、自然に勝手に生えて勝手に咲いているという感じだが、それがまたいい。
 この海岸は、青いノリなどがへばりついていて、あまりきれいではないが、例のかき養殖の棚に使う竹材がたくさん積み上げられていたり、立て掛けられたりしている。
maruyamazaki03.gif
maruyamazaki04.gif
maruyamazaki05.gif
 呼崎の付近でもたくさんあったが、これは嵐などがあると、古くなった棚やひびが壊れて、海岸に漂流物として流れ出すのだそうだ。そうなると邪魔だし二次災害の原因にもなるので、それを引き上げたものらしい。再利用するものもあるのだろうが、とりあえず立て掛けている、というのが真相のようだ。
 コスモスの原の東側には、緑の帯が南北に長く続いている。その細長い帯は、丸山の裾から東名運河まで続き、これが運河の名前にもなっている東名の集落なのだが、これはなかなか不思議な集落形態である。門前町か街道筋によくあるような形だが、ここはそのどちらでもない。(巻末の国土地理院の地図を参照)
maruyamazaki08.gif
 不思議といえば、住居表示も不思議で、本来なら「東松島市東名」とすべきところだろうに、なぜか北に離れている「大塚」を称している。運河の北側は「新東名」というが、「東名」がなくて「新」だけがある。
 実は、丸山崎にやってくるまでがなかなか大変だった。
 丸山崎だけなら東名の駅で降りて1.5キロも歩けばいいのだが、この日はバスもなにもない東松島市の岬を回り、10キロもある宮戸島の先端まで行くつもりだった。野蒜の駅で降りたのは、松林のなかにユースホステルがあり、ネットでみるとそこにはレンタサイクルがあると書いてあったので、自転車を貸してもらおうと、駅から東名運河を越え、余景の松林を通ってそこまで歩いてきた。
maruyamazaki07.gif
 “ユース”という年齢ではないのだが、“青春18切符”だって買えるのだからそれと同じで、まさか年寄りには貸さないとはいうまい。ユースホステルというのは、社会的な意義を持って存在している組織だと、なんとなく思っていたから、まさかそんな目に遭おうとは、思ってもみなかった。
 玄関を入ってフロントで声を掛けても、誰も出てこない。呼び鈴を何回鳴らしても出てこない。時刻は9時頃だから、食事もチェックアウトも一段落ついたところだろうにと、カウンターを見ると、四角い木の立方体をひっくり返して使うカレンダーが2日前の表示になったままだ。ということは、連休だったというのに、ここ何日もフロントは使われていなかったわけだ。
 ここで自転車を借りるのが、宮戸島をめぐる頼みの綱なので、簡単に引き下がる訳にもいかない。少し時間を待ってかなり広い敷地の中を探してみると、ちゃんと自転車が並んでいる。もう一度事務所の裏口に回ってトントンしても、静まり返ったままなので、自転車が動くかどうか鍵は架かっているかどうかを確かめていると、やっとおじさんが一人現われた。今まで、どこでなにしていたんだ、こっちは20分以上待ってたんだぞといいたいところを自転車を借りたいというと、宿泊客以外には貸せないという。これは困った。そんな杓子定規な、官僚的な組織だったのか、ユースホステルは…。それならそれでちゃんとその旨書いておけよ! 第一、宿泊客でないと貸さないという理由がないではないか。身元がどうのというなら、保証金を取ればいい。どうやら、ユースホステルは社会的な意義などない、ただの役所のできそこないに過ぎないらしい。
 腹は立つが、ここで怒って憤慨してみても、道は開けない。なんとかなりませんかねえとわれながら情けない卑屈な声を出して頼んでみたが、考慮の余地もないらしくだめだという。ではどうしたらいいだろうかと聞くと、野蒜の駅にレンタサイクルがあるという。
 やれやれ、そうだったのか、それは調査不足だった。
 1.3キロの道をまた引き返して、看板も表示もないので駅で聞くと、物産販売所でレンタサイクルを受け付けていた。
 おばあさんに近いおばさんが、自転車を引っ張り出してきてくれたので、急いでそれに乗って走り出したが、どうも走りにくい。サドルは妙に高くてハンドルが低くて真っすぐになっているからだ。ケーリンの選手ではないのだから、これではとても長丁場は乗れないと気がついて、また引き返して自転車を取り換えてもらう。
maruyamazaki06.gif
 そんなこんなで、道は平坦なのに人と規則の山坂を越えるのにずいぶん手間取ったが、地図にある「自転車専用道路」(実はただの農道)なるものを通り、やっとの思いで到達した丸山崎だったのでした。

▼国土地理院 「地理院地図」
38度21分42.72秒 141度7分53.74秒
maruyamazakiM.gif
dendenmushi.gif東北地方(2008/10/13 訪問)

にほんブログ村 その他趣味ブログ
その他珍しい趣味へ 人気ブログランキングへ
タグ:宮城県
きた!みた!印(5)  コメント(2)  トラックバック(2) 
共通テーマ:地域

きた!みた!印 5

コメント 2

knaito57

この運河のことはちっとも知らなかった。長い間疑問に思っていたという「でんでんむしさん」に比べて、わが浅学を思いました。治山治水は政治の要諦とはいえ、こんなに遠大な事業を手がけた代々の伊達公はたいした器量人ですね。
乗り捨てられたやうなマイカーがご愛嬌。──はて、この画像から何がわかるか──当地の場合、現場が土手なら離れた草むらや川に昼寝や釣り人を発見し、道端や空き地であれば乗り捨てられた盗難車で、ホシは高校生と推理できる。このヤマでは自転車のそばに履き物があれば投身自殺なんだが……。自転車専用路があるとは、うれしいですなあ。
by knaito57 (2008-11-06 08:40) 

dendenmushi

@あのね、この自転車こそは野蒜駅で借りて乗ってきたレンタサイクルですよ。
 そこに至るまでの苦労は、ルル書いているじゃないですか。そこを、読んでもらわにゃ、話になりませんがな…。(泣)
by dendenmushi (2008-11-06 09:08) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

トラックバックの受付は締め切りました