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237 生石鼻=洲本市由良町由良(兵庫県)遠き日は甦ることなく花へんろ [岬めぐり]

 島のほとんどは、平坦とはいえないものの、さりとて山ともいえないほどの丘陵のでこぼこが連なっている。だが、紀伊水道に面した島の南端には、諭鶴羽山地と呼ばれる山塊が、屏風のように海から切り立っている。最高点でも600メートルほどだが、海面からすぐに屹立しているので、標高の迫力は正味掛け値なしである。
 その山地の東の端が、生石鼻である。そこは由良の町からはまたかなり南に外れたところで、地図で見るとこれまた道なき場所にある。
 由良から雨の中を歩きながら考えているが、切れた記憶の糸はなかなか戻ってこない。
 若い頃大阪に7年ほど暮らしたことがあり、そのときに初めて淡路島を訪れている。会社の部下たちとともに、夏の日のキャンプと海水浴にやってきたのだが、それが確か由良だった筈である。
 筈だとか、確かとか、不確かなことを並べているのは、その記憶はあるものの、具体的にそれがどこのどんな場所だったのか、さっぱり甦らない。
 どうでもいいことなのだが、昔の記憶がそうしてどんどん消えていきつつある、ということの一事例として、なにか必死にたぐり寄せておきたいような未練が、岬めぐりの足を島の西側ではなくこちら東側に向かわせた。
 由良の沖には成ヶ島という島があり、海水浴場らしき場所もないではないが、どうもまったくわからない。何十年も経てば、景色も変わって当然なのだが…。由良中学から南へ、細い道を辿る。造船所やセメント会社などの建物の手前に、竜宮園前というバス停がある。どれが竜宮園なのだろうと見渡しても、フェンスに囲まれた廃墟があるだけで、ほかにそれらしいものがない。その廃墟こそが、竜宮園だったのであろう。
 浦島の心境で、なおも行くと、こんどは「小佐毘」というバス停。その前の家の表札が、なんとそのバス停の名前と同じである。いかなるワケと歴史が、ここに潜んでいるのだろうか。
 由良から先は、バスはほぼ一日一本ペースになるエリアである。生石口のバス停で、時刻表を見ると、洲本へ戻るバスも、そのバスが折り返して来るまでないので、つまり2時間近く待たなければならない。その間に、生石鼻が見える〔筈)のところまで、とにかく歩くことにした。
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 生石鼻の上は、歩いてみると結構大きな山で、地図で見る距離感とは異なり、かなりの登りになる。この道にやってきたのが正解だったのかどうか、疑い始めたが、この雨の中ではさほどの選択肢があったわけでもない。
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 延々上ってきて、友ヶ島水道と紀伊水道の海が見渡せる場所にやってきたが、それは晴れた日のことであって、こんな日はすぐ目の下の海も雨と靄につつまれている。このすぐ下が生石鼻の筈である。
 ハナモモかなにかの鮮やかなピンクが、場違いのように映えていて、クロガネモチらしい大木が、赤い実を茂らせている。海は、見えない。
 この岬の上は、やはり戦時中は軍の要塞となっていたらしく、今もレンガ造りの遺構が残されている。その上には、コンクリートの展望台ができており、そのそばには「あわじ花へんろ第三十一番札所」の看板が立っている。
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 でんでんむしの岬めぐりも、自分ではある意味これも遍路だと考えている。それはだいぶ前にどこかの項で書いているのだが、たまたま昨日、築地本願寺である人からそう評されたのだ。その人は、とくに熱心な読者というわけでもないので、それを読んでいてそういったわけではないらしいが、その直感的な評は的を射ている。
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 やっとバスが来て、立川の山を越えるとき、雨はすぐ雪になり、吹雪の様相を呈してきた。立川はこの南の黒岩と並んで、スイセンの名所であるというが、どうもそのたたずまいからなにから、わざわざバスを降りて行ったみたい気分ではない。そのままバスに乗って終点の来川でそのまま折り返してくることにした。その立川では4〜5人の若い女性のグループが、周遊券を示しながら降りていった。
 卒業旅行かなにかなのか、そのグループは、また帰路のこのバスに乗ってきて、洲本温泉で降りた。
 これは、来川からの帰路で、立川の山に入る手前で、生石鼻のほうを見たところ。
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 遍路の道は、どこまでも果てしなく続く。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度16分3.07秒 134度57分1.79秒
237おいしはな-37.jpg
dendenmushi.gif近畿地方(2008/02/09 再訪)

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タグ:兵庫県
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コメント 2

knaito57

・素朴な質問 ☆玉ねぎはどうやって食べたんですか(口でとか箸でとかじゃなく、ナマとか焼いてとか)
・つっこんだ質問 ★築地本願寺の人とは僧侶ですか(性別・年齢は) ★岬めぐりとお遍路をどう結びつけて言ったのですか(あるいはでんでんむしさんにおける岬めぐりのお遍路的こころとは)
by knaito57 (2008-03-27 07:14) 

dendenmushi

@素朴な質問について。235の最後に書きましたが、最初のホテルでは鍋にたくさん入れて食べましたね。これが、とてもやわらくて、おいしい。
 後のホテルでも、お汁とかサラダとか、あちこちにタマネギはたくさんいただきました。
 つっこんだ質問について。いやいや坊主でも何でもなくて。やはり、簡単に言うと、「わたしはこれまで生きてきました」ということであり、何を求めてきて、何が得られたのだろう、何が得られなかったのだろう、ということ。
 その締めくくりをどうつけるか、ということにつきるような気がしています。
by dendenmushi (2008-03-28 08:16) 

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