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102 観音崎=廿日市市宮島口西一丁目(広島県)牡蛎殻の山は消えて [岬めぐり]

 広島市には昔の広島空港があったところに「観音町」という地名がある。これは「かんのんちょう」ではなくて「かんおんまち」なので、宮島口西にある観音崎も、横須賀の観音崎(かんのんざき)とは違って(かんおんざき)なのかもしれない。それを確かめる余裕はなかったが、歩いてみるとここは思いがけず「牡蛎の岬」だった。

 このところ、毎年のように災害や風評で被害を受け続けていて逆風の中にあるうえに、近年では大規模に養殖を始めて成功した他所の産地のものがシェアを伸ばしていて、「広島の牡蛎」は昔ほどの精彩がない。こどもの頃は、広島市の海に面したところはどこでも、牡蛎の養殖に関連する施設や業者がたくさんあった。牡蛎打ちといって並んだおばさんたちがゴムの前掛けをして手袋をした手にかぎ爪のような金具をもって頑固な殻をこじあけて身を取り出す作業をする。その牡蛎の殻が山のように…これは比喩的形容ではなく文字通り小さな山をつくっていたし、道端はつぶれた牡蛎の殻で白くなるほどであった。
 そういえば、家の雑煮も白みそで牡蛎を入れるのが決まりだったが、これは関東の人に言うとかなり気持ち悪がられた。しかし、それはわが家だけのことではなく、広島ではかなり一般的だったはずである。牡蛎を入れた炊き込みご飯もおいしい。だが、昔それであたって何日も寝たきりになったことがあり、でんでんむしは「生ガキ」はダメである。

 宮島の対岸にコンクリートの護岸が続く観音崎は、その岸にはぎっしり牡蛎養殖の家が軒を接して連なっている。一隻の船が着岸して、おじさんが一人で陸揚げ作業をしていた。今ではもう昔のような牡蛎殻の山はできない。牡蛎打ちの様子は建物の中で見えないが、壁の穴から突き出たベルトコンベアが、ポトリポトリと殻を運んできて、高い櫓の上に設けた升に溜める。それを下でトラックが待ち受ける。
 養殖の道具や器材が積まれ、海に突き出たベルトをくぐりながらなおも岸壁をたどって行くと、ついにはまたしても道は途切れてしまった。ここが護岸と埋め立てで整備された末に、わずかに残ったもともとの観音崎の突端なのだ。

 宮島のもう一つのシンボルである紅葉の木が芽吹きだしているホテルの庭越しに、朝食をとりながら眺める狭い海峡にも、広く牡蛎筏が浮かんでいる。これは、このあたりにこれだけの牡蛎業者があるのだから、実質的な養殖場という意味も、もちろんあるのだろう。
 だが、この海は、宮島口と宮島を結ぶ連絡船が往来する海である。いわば、これは厳島神社を訪れる観光客に、「広島の牡蛎」をアピールするショウ・ウインドウの役目も果たしているのだろう。筏には「幻のかき・安芸の一粒」という看板があった。「広島の牡蛎」が幻にならないよう願う。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度18分19.91秒 132度18分1.25秒
102かんのんざき-2.jpg
dendenmushi.gif中国地方(2007/03/26 訪問)

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タグ:広島県
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