058 黒崎の鼻=三浦市初声町下宮田(神奈川県)大きくもなく小さくもなく [岬めぐり]
“黒崎の鼻”と聞いても「ああ、あそこか」と思う人は、ほとんどいないだろう。灯台があるわけでもなく、土産物屋があるわけでもなく、観光バスがくるはずもなく、ガイドブックはおろか、地図のなかにも当然のように名前が載っていないものがあったりする。いわば、三浦半島西海岸にいくつもある、タダの出っ張りのひとつに過ぎない。
向こう側に見えているのが荒崎で、ここには岩礁の間をハイキングコースができているそれなりに有名なポイントだが、そこからここまで足を伸ばすハイカーもいない。
だが、でんでんむしにとっては、ここへ最初にきたときの感慨が忘れられない。「ここに地果てる」といった大げさなものではなかったが、それが岬めぐりをもっと徹底して続けようと、決心させた岬だったから…。
一目でその岬全体が視野に入る。余計なものがなにもない。シンプル・イズ・ベストである。波も岩場も草地も高台も、それぞれが適当にある。
岬の定義については前にもふれたが、必要条件はいちおう名前がMapionで確認できることだけである。これより小さければ、ここも名無しの権兵衛岬で終わったかもしれない。その微妙さもなんともいえない。
三崎口の駅からは、大根畑の間をひたすら西へ、“ここは北海道かぁ”というようなまっすぐな農道を行くと、その突き当たりになるのだが、ここらの風景もまたよい。
大根畑が終わり農道が行き止まりになったところに申し訳のようにある柵は、ごみなどの不法投棄の車を拒否するためのものか。そこまで車でやってきたおじさん二人が、岬を見下ろす高台の上からラジコン機を飛ばし始めた。へー、こんな風の強い日でも大丈夫なんだ。
こどもの頃にはよく模型飛行機を作っては飛ばしたものだった。当時からラジコン機もあったが、ワイヤーでつないだまま、くるくる回転させるもので、図体の割にはやたら大きな音をたてたものだ。これにも憧れたが、やはりこれは大人の遊びだった。いまの大人のラジコンは、当然ながら無線操縦で、ほとんど音もたてず、プロペラもないのだ。
強い風に煽られながら、白い機体が青い空と海の間に自在に舞う。重い想いも軽く乗せて飛んでいるように。
追記:これを書いた時から10年が経っています。最近のガイド、パンフなどには、この黒崎の鼻もたいてい載るようになりましたね。ここ入れたハイキングコースなども、三崎口駅のおいてあるパンフに記載されていました。この岬について書かれたネット情報もずいぶんふえていて、そんなかには美智子さまが妃殿下の頃なのか皇后になってからなのかよくわからないながら、こられたと書いているものもありました。(2016/11 改めてこの付近三浦半島西海岸の岬めぐりの落穂ひろいをしています。ただし、それを項目に載せるのは、北海道道南が終わってからで、最近ちょっとペースウンしているので、2017/2からになりそうですよ。のんびりしているなあ。)
▼国土地理院 「地理院地図」
35度10分59.14秒 139度36分53.61秒関東地方(2006/12/02 再訪)
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