014 蒲生田岬=阿南市椿町(徳島県)紀伊水道を挟んで日ノ御碕と向かい合うここは四国の最東端 [岬めぐり]
紀伊水道を挟んで紀ノ川と吉野川に沿って走る中央構造帯は、衛星写真でみるとよりいっそうはっきりとその存在を確認できる。まるでそのラインに平行する線を、もう一本南側に引いたように、東の日ノ御埼と向かい合うようにして延びる岬が、この蒲生田岬である。
それぞれの突端からの距離は、20キロ以上は離れているだろうか。それだけの間隔がありながら、両者を結ぶ太い絆は、普通の地図を眺めていてもよくわかる。
国道55線から東に入って、また10数キロも走らなければ、この岬には到達しない。途中の椿町というところまでは、なんとかまともな道だが、そこから岬の北側に一本だけある道は、だんだん細くなっていく。ついには、車の両側の窓を道にはみ出した木々の小枝がなでるようにして、曲がりくねった細道を行かなければならない。
そう、ここはバスでは来られない。岬めぐりのバスなど走らないところなのだ。
北側には阿南海岸の多島海の美しい景色が展開するが、運転者にはそれを楽しむゆとりはないようだ。対向車が来たらどうするんだ?と心配になるが、おそらくそんなものは来ないことになっているのだろう。
この海は、また漁場としてのメリットがあるのか、人里からも遠く離れた岬の端にも、小さな集落がある。そこから少し入ると灯台の見える海岸に出る。
徳島県なんて地図の上でしか知らなかった頃から、日和佐という海岸にはウミガメが卵を産みにやって来るのだ、という知識があったが、看板が出ているところをみるとここにも来るらしい。
生物の帰巣本能は、人の感情を大いにそそるが、こんな岬の先端のわずかな平地を探してわざわざ住み着くという人の暮らしもまた、より大きな存在からみれば、いたくけなげなものにみえることであろう。
33度50分2.63秒 134度44分57.67秒


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