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1939☆『思い出の索引』★でんでんむし@アーカイブス☆わたしたちが生きてきた時代とは… [年表]

 われわれはどこから来て、どこへ行こうとしているのだろうか…? 
 中島京子さんの『小さいおうち』のタイトルを見たときに、すぐに思い浮かんだのはバージニア・リー・バートンの絵本(The Little House)であった。石井桃子訳の岩波書店版『ちいさいおうち』を買ったのも、ずいぶん昔のことになるが…。
 ちいさいおうちが、長い年月の間、そこに建ち続け、その間に住む人も周囲の環境もだんだんどんどん変わってしまい…という、なかなかすばらしい長く記憶に残る名作絵本だった。
 中島京子さんの『小さいおうち』は、昭和10年に“東京郊外”(当時の、だから武蔵境とか田園調布ではない、下落合か下北沢あたりだったかもしれない)に建った。2014年8月8日の朝日新聞に寄稿した“「戦前」という時代”のなかで、彼女はこう書いている。
 日常の中に入り込んでくる戦争の予兆とは、人々の慢性的な無関心、報道の怠惰あるいは自粛、そして法整備などによる権力からの抑圧の三つが作用して、「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿状態が作られることに始まるのではないだろうか。その状態が準備されたところに本当の戦争がやってきたら、後戻りすることはほんとうに難しくなる。平和な日常は必ずしも戦争の非日常性と相反するものではなく、気味悪くも同居してしまえるのだと、歴史は教えている。


1939mark.jpg昭和14年 己卯(つちのとう)
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◯スペイン、フランコ軍バルセロナを占領。
◯ハンガリー、日独伊防共協定に参加。
◯英仏がスペインのフランコ政権を承認。
◯チェコ、スロバキア・ルテニアが独立を宣言。
◯独、ベーメン・モラビアを占領、保護領化を宣言。(チェコスロバキアの解体)
◯ハンガリー、ルテニアを併合。
◯独、ポーランドにダンチヒ割譲を要求。リトアニアにはメーメルを要求し占領。
◯スペイン、フランコ軍がマドリードを占領。スペイン内戦終結。
◯英チェンバレン首相がポーランドを英仏が援助すると保障。
◯米、フランコ政権を承認。
◯独ヒトラーが国防軍にポーランド攻撃の極秘指令。
◯伊がアルバニアを併合。
◯独がポーランドとの不可侵条約、英仏海軍協定の破棄を宣言。仏のアルザス・ロレーヌ領有を否定。
◯独・伊が軍事同盟を結び、独伊枢軸。
◯独・ソが不可侵条約調印。
◯英仏、対ポーランド援助条約に調印。
◯独、対英覚書でダンチヒ・ポーランド回廊の割譲を要求し、対ポーランド16項目提案を公表。
◯独、ヒトラーがポーランド攻撃を指令。独軍ポーランドに電撃侵入。ダンチヒ統合を宣言。
◯第二次世界大戦が始まる。
◯伊は中立を宣言し、五国会議を提案するが英が拒否。
◯英仏が独に宣戦布告。
◯スペイン、米が中立を宣言。
◯ソ連がポーランド東部を占領。
◯独軍、ワルシャワを空爆、占領。
◯独・ソが友好条約、秘密議定書でポーランドの分割を協定。
◯ソ連はエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト諸国と相互援助条約。フィンランドは相互援助条約を拒絶。
◯ソ連、フィンランドに侵入。
◯国際連盟はフィンランド侵略のソ連を除名。
◯チリで大地震(M8.3、死者約8万名)。
◯パウル・ヘルマン・ミュラーが、DDTに殺虫効果があることを発見。

◯国民党が汪兆銘を永久除名。汪兆銘は蒋介石にあてた和平勧告書を公表。
◯満州国が日独伊防共協定に参加。
◯ノモンハンで満州軍とモンゴル軍が衝突。
◯国民党軍が平江の中共新四軍を攻撃し幹部を虐殺。国共関係悪化。(平江事件)
◯◉日本軍が天津の英仏租界を封鎖。
◯◉満蒙国境で日本軍が外蒙軍と衝突。ソ連が外蒙軍を支援、ノモンハンで日・ソ連両軍が戦闘。(ノモンハン事件)
◯◉日本軍が敗退。再度の攻撃も失敗。ソ連軍の総攻撃をうけ大敗北。
◯汪兆銘、重慶の国民党を否認。上海で六全大会を開き和平を決議。
◯国民党軍が八路軍を攻撃。国共対立が深まる。
◯◉日本軍が海南島に上陸。

◉平賀東大総長が、河合・土方両教授の罷免を文相に上申。(平賀粛学)
◉閣議で国民精神総動員強化方策を決定。
◉文部省が大学の軍事教練を必須とする旨通達。
◉大本営が関東軍にノモンハン事件の作戦中止を指令。
◉モスクワで東郷茂徳大使とモロトフ外相の間でノモンハン事件停戦協定が成立。
◉汪兆銘が来日、東京で首相と会談。
◉日英会談決裂。
◉米、日米通商航海条約破棄を通告。
◉国民徴用令を公布。適用第1号は建築技術者に「出頭要求書」発送。
◉独に対し、独ソ不可侵条約は日独防共協定違反と抗議。
◉独ソ不可侵条約で見通しを誤った平沼首相、「欧州の天地は複雑怪奇」という声明を出して内閣総辞職。
◉欧州戦争不介入を声明。
◉石油配給統制規則を公布。
◉野村外相が米グルー大使と日米会談。
◉米穀強制買入省令を公布し施行。
◉仏大使に対しインドシナ経由の蒋援行為停止を要求。
◉米グルー大使が新通商条約または暫定取決めを拒否。
◉朝鮮総督府が、朝鮮人の創氏改名を公布。
◉天皇、軍装で学生・生徒3万2500人を親閲、“青少年学徒に賜はりたる勅語”を下賜。

・この年に亡くなった人にはこんな人も…。初代大江美智子。岡本かの子。岡本綺堂。立原道造。式亭三馬。泉鏡花。杉本良吉。村上華岳。ウィリアム・バトラー・イェイツ。アルフォンス・ミュシャ。ジークムント・フロイト。ダグラス・フェアバンクス。アントニー・フォッカー。

◎69連勝中だった横綱双葉山が安藝ノ海に敗れる。
◎NHKが有線によるテレビ実験放送を公開、続いて無線も。
◎映画法(脚本の事前検閲、製作数の制限、外国映画の上映制限、文化ニュース映画の矯正上映など)を公布。
◎米穀配給統制令法を公布。
◎関門国道海底トンネルの開通。
◎昭和電工(日本電気工業と昭和肥料が合併)、東京芝浦電気の設立。
◎大毎・東日の“ニッポン号”が世界一周の飛行。
◎全国の中学校の入試廃止を通達。
◎価格等統制令、賃金、地代家賃も統制。
◎戦時インフレで物価騰貴。ヤミが横行。
◎毎月1日を「興亜奉公日」として、酒不売、ネオン消灯、勤労奉仕などを実施。
◎満蒙開拓青少年義勇軍壮行会、明治神宮外苑競技場で挙行。
◎東京の地下鉄、新橋=渋谷間が開通し、浅草=渋谷(銀座線)が全通。
◎九州鉄道(西日本鉄道)の福岡=大牟田間が全通。
◎堀越二郎設計のゼロ式艦上戦闘機、海軍が初の試験飛行。
◎東洋レーヨン(東レ)の星野孝平らが、ナイロン66の合成に成功。
◎男鹿半島で地震(M6.6、死傷者80人、全壊604戸)。
◎徳川夢声の『宮本武蔵』放送。
◎東京の長者番付、この年の第一位は、くず鉄業者。
◎農林省令で米の七分搗き以上を禁止。昭和15年の正月もちは黒かった。
◎全国各地の招魂社を「護国神社」に改称。
◎拓務・農林・文部の三省が、花嫁100万人を大陸へ送り出す計画。
◎農林省、米の強制買い上げ実施。
◎厚生省、戦争未亡人の相談相手として女性指導員を置く。再婚は35~36歳までなら可、ただし極力国家に身命を捧げた主人の英霊を守ることが日本婦人の理想…が指導方針。

◎軍機保護法施行規則を改正、高台やビルなどからの俯瞰写真撮影を禁止。
◎家庭や街頭の鉄鋼不急品(郵便ポスト、灰皿、火鉢、ベンチ、街路灯、広告塔など)の回収を始める。
◎鳥取県米子市の警察が市内150人のカフェー女給に対し、婦道精神高揚のため断髪の禁止を通達。
◎大阪の市立校長会が女学生の帽子を毛織物材料に献納する申し合わせ。
◎警視庁、女優の軍装写真は皇軍の威信を失墜させると販売禁止。
◎静岡県、農山村の小学校にウサギの飼育を奨励。(食料自給のため)
◎日本学生水上競技連盟、日本式泳法強化のためバタフライを禁止。
◎内務省、一市町村に1基の忠魂塔の建設を許可。
◎文部省、小学校5,6年と高等科の男子生徒に武道(柔剣道)を課す。
◎国産羊毛の購買禁止。洋服もすべてスフになる。
◎大蔵省の委託を受けた婦人団体が、東京都内のデパート、盛り場などで不適切な浪費を調査。
◎大蔵省の管下3万人に断髪命令。
◎文部省が学生生徒にいっそうの自奮をうがす通牒。男子学生は緊褌一番、長髪廃止、禁酒禁煙の断行、女子生徒は口紅、白粉、頬紅、パーマ禁止。
◎中学校の制服の金ボタンを廃止。
◎大阪府、傷病兵士や病人以外は鶏卵を食べるなと通告。
◎夏祭りの揃いの浴衣新調を禁止。
◎香川県、夜釣りの懐中電灯の使用自粛を指示。(敵機に発見されるからと)
◎農林省、都会の青少年に馬事教育の開始を決定(馬の扱い方が下手と)
◎文部省、学生思想の健全化のため、語学教科書から恋愛論を一掃。
◎石黒文部次官、“野球などで引き分けがあるのは日本精神に反する、全て決着をつけるようにさせたい”と発言。
◎“栄養価の高い理想的な食品”という触れ込みで、イナゴの佃煮やイナゴのコロッケを勧める運動も。

■流 行:ヤミ取引・ヤミ価格・ヤミ屋
■映 画:邦:兄とその妹・上海陸戦隊・土・土と兵隊。洋:ハリケーン・望郷・格子なき牢獄
■ 本 :谷崎潤一郎/源氏物語.26巻・天野貞祐/学生に与ふる書・ホクベン/百万人の数学.上下・宮沢賢治/風の又三郎
■ 歌 :上海ブルース・愛馬進軍歌・父よあなたは強かった・上海の花売り娘・大利根月夜。童謡:仲良し小道・ないしょ話・やぎさんゆうびん・からすの赤ちゃん
■ことば:複雑怪奇・ヤミ・産めよ増やせよ

dendenmushi.gif(2014/09/11 でんでんむし蛇足の記)
 首相が自分たちの情報収集力や判断力をタナにあげて、「欧州の天地は複雑怪奇」といって内閣を投げ出してしまうのは無責任だが、まったく欧州の戦争はよくわからない。あれだけの犠牲をはらい惨禍を招いた大戦にも懲りずに、またしても大戦争を始めてしまう。
 チェンバレンなど英仏の弱腰もあったが、やはりヒトラーの異常な台頭を許してしまったのが、一番の原因といえばそうなのだろうか…。
 ところが、日本ではとうに戦争は始まっていて、国内は戦争遂行と統制一色に塗り込められていく。今思えば、こういう風潮は怖いと誰も思うが、それに抵抗する余地はもう誰も持っていなかったわけだろう。それにしても、官庁と役人の考えることやることは異様に凄い、と思わざるをえない。戦争遂行の一番の立役者は、官僚とその機構だったとも思える。
 問題は、石黒文部次官のような人間は、いまもたくさんいるのではないかということだろうか。(一見するところは時代も背景も違うまったくの別件だが、憲法の会合に公民館を貸さないという館長などの発想や行動は、同根ではないのか。そう考えると、ちょっと怖い今日この頃である。)
 広島の24歳と21歳の若い夫婦に初めてのこども、男の子が生まれてくるのは、そんなさなかであった…。
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