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1938☆『思い出の索引』★でんでんむし@アーカイブス☆わたしたちが生きてきた時代とは… [年表]

 われわれはどこから来て、どこへ行こうとしているのだろうか…? 
 中島京子さんの『小さいおうち』のタイトルを見たときに、すぐに思い浮かんだのはバージニア・リー・バートンの絵本(The Little House)であった。石井桃子訳の岩波書店版『ちいさいおうち』を買ったのも、ずいぶん昔のことになるが…。
 ちいさいおうちが、長い年月の間、そこに建ち続け、その間に住む人も周囲の環境もだんだんどんどん変わってしまい…という、なかなかすばらしい長く記憶に残る名作絵本だった。
 中島京子さんの『小さいおうち』は、昭和10年に“東京郊外”(当時の、だから武蔵境とか田園調布ではない、下落合か下北沢あたりだったかもしれない)に建った。2014年8月8日の朝日新聞に寄稿した“「戦前」という時代”のなかで、彼女はこう書いている。
 日常の中に入り込んでくる戦争の予兆とは、人々の慢性的な無関心、報道の怠惰あるいは自粛、そして法整備などによる権力からの抑圧の三つが作用して、「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿状態が作られることに始まるのではないだろうか。その状態が準備されたところに本当の戦争がやってきたら、後戻りすることはほんとうに難しくなる。平和な日常は必ずしも戦争の非日常性と相反するものではなく、気味悪くも同居してしまえるのだと、歴史は教えている。


1938mark.jpg昭和13年 戊寅(つちのえとら)
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◯独ヒトラーが統帥権を掌握。
◯オーストリア首相がヒトラーを訪問。
◯ソの大粛清続き、ブハーリン、ルイコフら21名を右翼トロツキスト陰謀事件被告として裁判、処刑。
◯独オーストリアの人民投票延期と首相人選に介入。
◯オーストリア大統領が独の介入を拒否し、独オーストリア侵攻。
◯独オーストリアを併合し合邦を宣言。
◯ソ連が独の侵略阻止のため列国会議を提案。
◯メキシコ、英米系石油会社の資産を接収。
◯チェコでヘンラインがズデーテン地方の自治を要求。
◯独ヒトラーがローマを訪問。
◯伊でユダヤ人の排斥が始まる。
◯メキシコ、独伊と石油バーター協定に調印。
◯独ヒトラーがズデーテン・ドイツ人の自決権を要求。
◯英チェンバレン首相がヒトラーと二回にわたり会談。
◯仏ダラティエ首相がロンドン訪問。
◯英仏がチェコに独の要求を受諾するよう勧告。
◯オーストリア総動員令。英仏は対ソ交渉。
◯英・仏・独・伊がミュンヘン会談、独のズデーテン地方併合を認める協定調印。
◯独がズデーテン地方に進駐。
◯仏内閣がミュンヘン協定反対の社会党・共産党との絶縁を声明。ダラティエ首相が人民戦線離脱を宣言。
◯伊ファシスト大評議会で下院の廃止を決定。
◯独で組織的なユダヤ人迫害が始まる。
◯ソ連とポーランドが不可侵条約を更新。
◯仏ゼネストを軍隊が鎮圧。
◯独・仏が善隣協定に調印。
◯スペイン、フランコ軍がカタロニアへ進撃。
◯米カロザースがナイロンを発明。
◯独ハーンとシュトラスマンがウランの核分裂を発見。
◯アメリカでオーソン・ウェルズ演出のSFドラマ「火星人来襲」(H・G・ウェルズ原作)放送でパニック。

◯◉日本軍が青島を占領。
◯◉日本軍の指導下で南京に中華民国維新政府。
◯◉日本軍が厦門を占領。
◯◉日本軍が徐州を占領。
◯国民政府の政府機関を重慶・昆明へ移転。
◯漢口で国民参政会大会、共産党の武漢死守論を採用。
◯◉張鼓峰で日・ソ軍が衝突。ソ連軍の攻撃で日本軍が敗退。
◯北京の臨時政府と南京の維新政府の連合委員会設立。
◯◉日本軍がバイアス湾に上陸。広東を占領。
◯◉日本軍が漢口に突入。武漢三鎮を制圧。
◯重慶の国民党参政会で蒋介石が奥地開発と長期抗戦を呼びかけ。
◯延安の共産党拡大六中全会で新国共合作案を国民党に提案。
◯ビルマ鉄道から昆明に至る援蒋ルート(ビルマ)が完成。
◯汪兆銘が共産党の進出に反対して重慶を脱出、ハノイに到着。
◯日本の近衛首相の近衛三原則声明に対応して、汪兆銘も和平声明。

◉御前会議で支那事変処理根本方針を決定。
◉近衛文麿首相、中国との和平工作を打ち切り、「国民政府を対手とせず」との第一次近衛声明。(トラウトマン工作打ち切り破綻)
◉軍需工業動員法発動、一部工場を政府管理に。
◉大内兵衛・有沢広巳・美濃部亮吉ら労農派教授グループ11人ほか24人が検挙される(第二次人民戦線事件)。
◉兵役法を改正、学徒の在営期間短縮の特典を廃止。
◉国家総動員法案審議中の衆院委員会で陸軍省軍務課員の佐藤賢了が「だまれ!」と放言。
◉国家総動員法公布、一部施行。
◉朝鮮志願兵制を実施。
◉電力国家管理法、日本発送電株式会社法を施行し、電力を国家管理。
◉宇垣外相が英大使と日英会談。
◉東京帝大河合栄治郎教授の『ファシズム批判』など四著が発禁になり休職。(平賀粛学)
◉石炭配給統制規則を施行。
◉武漢三鎮占領後に近衛首相の「東亜新秩序建設」を声明。(第二次近衛声明)
◉汪兆銘派と日華協議記録に調印。
◉陸軍航空総監部(総監:東條英機)を置く。
◉占領地に対する政務・開発事業を統一指揮するため興亜院を置く。
◉近衛首相が日中国交調整のため、善隣友好・共同防共・経済提携の近衛三原則を声明(第三次近衛声明)。

・この年に亡くなった人にはこんな人も…。嘉納治五郎。御木徳一。鳩山春子。三世井上八千代。山中貞雄。村上鬼城。野間清治。小川芋銭。益田孝。ムスタファ・ケマル・アタテュルク。ブルーノ・タウト。カレル・チャペック。

◎女優岡田嘉子が杉本良吉と共に樺太国境を越えてソ連に亡命。
◎庭野日敬らが霊友会から分かれて大日本立正佼成会を開教。
◎関西地方に豪雨、阪神大水害死者933人。
◎東京の青バスが木炭車への改造を開始。
◎三菱重工で零式艦上戦闘機の試作機が完成(翌年から製造開始)
◎中谷宇一郎らが雪の人工結晶に成功。
◎従軍作家陸軍部隊(久米正雄・丹羽文雄・岸田国士・林芙美子ら)、従軍作家海軍部隊(菊池寛・佐藤春夫・吉屋信子ら)、従軍作家詩曲部隊(西條八十・古関裕而ら)が中国の戦地に出発。
◎横山エンタツら落語家・漫才師の戦線慰問団「わらわし隊」第一陣が出発。
◎内務省が東京帝大セツルメントが左翼思想の温床として解散命令。穂積会長が閉鎖を決定。
◎戸坂潤ら弾圧を予想して唯物論研究会を解散。
◎内務省警保局が要注意執筆者リストを雑誌社に内示。宮本百合子、中野重治、戸坂潤、岡邦雄らの原稿掲載自粛を求める。
◎中央公論社の特派員として南京従軍の石川達三『生きてゐる兵隊』の掲載誌『中央公論』3月号が発禁処分。石川と編輯者(編集者)雨宮庸蔵・発行人牧野武夫が検挙される。
◎創元社が創元選書(四六判1円20銭)刊行。
◎岩波新書の刊行開始(斎藤茂吉『万葉秀歌』ほか20点、定価50銭)。

◎昭和15年に東京で開催予定だった12回オリンピックは返上中止が決定。
◎日本青少年独派遣団が訪独。ヒトラー=ユーゲントの代表30人が来日。
◎東京駅構内から人力車が姿を消す。(自動車におされて廃業)
◎新潟県十日町、積雪で映画館の屋根が落下し、死者74人。
◎広島宇品=江田島の定期船が強風で沈没、死者20人。
◎岡山の山陽線和気=熊山間で列車事故。修学旅行中の和歌山の小学生ら25人死亡。
◎東京で60年ぶりの大豪雨。中部・関東にわたる広域で水害。全国の死者・行方不明者933人。
◎北海道の夕張炭鉱でガス爆発。死者162人。
◎国鉄伊東線が開通。東京=伊東間の直通電車が運行。
◎黒部川第三発電所建設工事現場で大雪崩が発生、死者行方不明者87人。
◎岡山県苫田郡西加茂村で大規模な殺人事件が起こる。(津山30人殺し)
◎満蒙開拓青少年義勇軍5000人が渡満。

◎警視庁がパーマネントは我が国の醇風美俗に反するとして業者の新設・移転を禁止通告。
◎東京の盛り場で長髪の学生が散髪誓約書を書かされ、「戦地の兵隊さんのご苦労を考え自粛いたします」と唱和させられる。
◎国民精神総動員中央連盟が「女子が進んで傷痍軍人と結婚する気風養成」など銃後後援の強化を決める。
◎拓務省、全国から大陸の花嫁募集を開始。
◎内務省・商工省が買いだめ防止キャンペーン。日本婦人団体連盟も大会で買いだめ自戒、白米食廃止などを申し合わせ、皇軍に感謝を決議。
◎警視庁が紙芝居の検閲制度を決め、残忍、猟奇的なものをチェックする。
◎内務省がバーやカフェーの宣伝マッチに日の丸を濫用すべからずと指令。
◎警視庁が管内80署の警官を新宿や銀座などの盛り場に動員、緊迫した時局を忘れて浮かれ回る学生をチェック。3日間で3486人を検挙。
◎文部省、中等学校の制服は新調を禁ずと指令。
◎警視庁、ダンスホールに女性客の入場厳禁を通牒。
◎内務省、個人主義排除など映画の内容制限を各社に要請。
◎内務省、子供雑誌で「彼氏」という言葉を禁止。
◎名古屋市、男子職員は全員丸刈りにするよう通告。
◎大蔵省がげたばき登庁を認める。
◎商工省通達により、自動車の製造は事実上禁止となる。
◎逓信省が電話加入は軍事上国家総動員上から必要なもの優先。
◎内務省、「銃後の意気をそらす不快な広告の検閲」に乗り出す。

■流 行:和服に矢絣、髪型はロール巻き
■映 画:邦:五人の斥候兵・路傍の石・綴方教室・愛染かつら。洋:モダン=タイムス・舞踏会の手帖
■ 本 :中原中也/在りし日の歌・火野葦平/麦と兵隊・デュ=ガール/チボー家の人々
■ 歌 :愛国行進曲・日の丸行進曲・雨のブルース・旅の夜風・支那の夜・麦と兵隊。童謡:お猿のかごや
■ことば:相手とせず・大陸の花嫁・スフ・買いだめ・兵隊さんは命がけ私たちはタスキがけ

dendenmushi.gif(2014/09/09 でんでんむし蛇足の記)
 大陸での戦線の進展にともなって、内地の銃後でもいっきに戦時色が強くなり、市民生活のあらゆる面にわたって規制統制されていく様子がうかがえる。
 まだ、米英などとの戦争には入っていないうちから…。
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タグ:年表
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