1020 トーサムポロ岬=根室市温根元(北海道)35号線を納沙布から西に向かうと岬と沼と牧場があって… [岬めぐり]
望郷の岬公園を後にした根室交通の「のさっぷ号」(そうです。まだこれに乗っているんです)は、ここから道道35号線を西に進む。35号線で根室半島の東部を、南海岸から北海岸へぐるりと一周することになるが、ここから西へは、路線バスもなにもない公共交通機関ゼロ地帯である。
だから「のさっぷ号」がありがたいわけだが、次の岬はトーサムポロ岬。
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トーサムポロ沼の北東に位置するトーサムポロ岬は、道路からは、少し離れているので、これくらいが精一杯のところである。
これでも、岬とバスの間は1キロ以上距離があるのだが、これほど近くに見えるのも北海道ならではだろう。根室半島では、この岬が最北端になる。
道路の南側は、一帯が広い牧場になっていて、牛や馬がたくさん群れていた。前に紹介した根室市街地の東には明治公園があり、そこから始まる牧の内は、東の納沙布まで17キロも続いている。その全部が牧場なのかどうか知らないが、集落と道路は主に海岸線の一部だけである。牧場も明治のほかにもいくつかあるようだし、明治の牧場が現在でもこのうちどこまでを占めているのかはわからない。ただ、この地域で広い牧場が残ったのは、戦時中は飛行場があったためかもしれない。その掩蔽壕などの遺跡?もいまだに残っているようだ。
明治乳業が牧の内に根室牧場を創業したのは、1939(昭和14)年である。そして、その5年後には牛のための疎開地が必要となり、春国岱の西の横昔に根室牧場の牛を疎開させる場所を確保している。
明治乳業では、牧場としてこれらを維持管理してきたことが、直接自然環境保護につながるものと考え、2007年に迎えた創業90周年にさいし、その記念事業の一環として牧の内と横昔に「自然環境保全区」を設定している。同時に、財団法人日本野鳥の会と野鳥保護に関する協定を締結して、さまざまな活動を進めてきているという。
なんでも、この地域の牛の数は18万頭といわれているようなので、明らかに人間より牛のほうが多い。根室は、豊かな漁場を北と南に持つ水産業に支えられた街のイメージが強いが、実は広大な牧草地が広がる酪農地帯でもあった。
なにしろ、風景が大きいので、逆にいうと道筋の目印に乏しい。大きな施設や看板、標識などから、その位置を特定しているのだが、ここでは沼の間に架かっている橋を渡るのに、道路が下って行くと、右手にはトーサムポロ沼の海寄りが見えるので、温根元の終わりもここで確認できる。
温根元の西の端、豊里との境界にあるトーサムポロ沼は、オキネベ沼やヒキウス沼と違って、川の途中ではなく直接水道が海に向かって開けている。沼とはいいながら、海水も入る汽水湖で、北の根室海峡から沼につながっているので、ここも海跡湖ということになるのだろうか。海に面する部分がカギ状になっているので、都合よく漁港に活用されている。
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歯舞漁協のあさり部会の部会員は9名。夏期は漁業経営の柱となるコンブ漁を営んでいるため、アサリ漁は沼がまだ凍っている冬から氷が溶け始める間の仕事だ。
アサリの採捕を禁ずる看板のある沼に架かる橋には、“協力橋”という標識が立てられていた。由緒は不明だが、この美しいが厳しい自然環境のなかで暮らしていくには、住民同士の協力は不可欠なのであろうことは、通りすがりにも理解できる。
▼国土地理院 電子国土ポータル(Web.NEXT)
43.398372, 145.76149
北海道地方(2013/09/06訪問)
タグ:北海道
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