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番外:『オブリビオン』=横須賀HUMAXシネマズ(神奈川県)SF映画のなかにアンドリュー・ワイエスの絵が… [番外]

 ふた昔くらい前まではまだ色付きの眼鏡でみられていたSF映画だが、近年はごく普通に隆盛なようで、手塚治虫の初期作品でタネを植え付けられ、『地球の静止する日』(1951(昭和26)年・ロバート・ワイズ監督。ちなみにあの『ウエスト・サイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』の人ですよ)で、はじめてその世界の入口に立った、古いファンとしてはなかなかに感慨深いものがある。その背景には、CG技術の進歩と普及で、つくる側の “そんな表現方法ができるんだったらやってみたい”という製作意欲を刺激するものもあったのだろう。
 だが、一方には観る側のほうにもヘンな差別意識がなくなってきた、という変化は非常におおきなものがあると思う。昔は、SFというとよく理解されずバカにされたものだったから…。(ハヤカワの福島正美編集『SFマガジン』が本屋の店頭で『SMマガジン』(なぜか装幀題字デザインの雰囲気まで似ていた)と並べて置かれていたものだ。) それでも、一般的にSFが認知されるのは本よりも映画のほうが早かったといえるかもしれない。
 マイナーなSF映画に最初の変化が現れたのが、いつだったかどの作品だったとするかは、人によって見方によって違いがあろうが、でんでんむしとしてはSF映画の普遍化には、やはり今やテレビで繰り返し放送され、超々有名になっている次の3つの作品の登場による三段階が、ポイントとしてあげられると考えている。

 『2001年宇宙の旅』(1968年日本初公開)
   今はない銀座のテアトル東京の70ミリで観た。客の入りは悪く閑古鳥で早々に打ち切られ、興行的には失敗したが、批評家はこぞって絶賛し、この年のキネマ旬報のベストワンに選ばれる。10年後の1978年に再ロードショーがあったときには、封切館の前には行列ができた。
cafelamamaさんからは、『猿の惑星』とコメントをもらった。そうなんです。これね、困るとこなんですけど、いちおうひとつに絞りました。)

  『スター・ウォーズ』(1978年日本初公開)
   アメリカでは1977年の5月に公開されていて、そのニュースは伝わっていたので、ちょうどその年アメリカを東海岸から西海岸へ横断したときに、是非どこかで観たいと願っていた。結局旅程も最後になって、ハワイのホノルルの映画館でやっと観ることができた。
 
 『バック・ツウ・ザ・フューチャー』(1986?年日本初公開)

   1985年の12月にアメリカで公開されているので、日本では翌年公開か、それともこの頃はもう同時公開だった? 横浜の映画館は超満員で、やっとの思いで座席を確保したことを覚えている。
 これらが、10年ごとの間隔をおいているのもなにやら訳ありげで興味深いが、1985年の公開映画にはほかにも『デューン/砂の惑星』、『スター・ファイター』、『ターミネーター』などがあり、それに欧州でも『ネバーエンディング・ストーリー』のようなファンタジーまで登場してくる。

 
 その後のSF映画について、書き出すとこれもキリがないが、まったく普通にたくさんの作品がつくられ公開されている。現実にはありえない、むりやりつくりだされたひとつの世界を、その世界の中に入り込んで楽しむというのが、でんでんむし的SFのだいご味なのである。それには、必ずしも巨額の投資をした大作話題作というわけでなくても、充分におもしろいし、SFなのだから少々話にムリがあってもいっこうにかまわない。そういうふうに考えなければ、もともと現実離れしているSFは楽しめないのだ。
 最近は、東京まで行くのもめんどくさいので、もっぱら映画は横須賀の汐入にある横須賀HUMAXシネマズで観る。同じシネコン形式ではあっても、豊洲などとはまた違って、なんともいえない“愛すべき場末感”が漂うところがいいし、ついでに横須賀本港に面したベルニー公園のバラなども楽しみながら…。次はウィル・スミス親子の『アフター・アース』や『攻殻機動隊ARISE』(これは横浜どまりで横須賀にはこない)にも行かなきゃだが、その前に…。
ユニバーサル映画『オブリビオン』公式サイト (予告編動画あり)
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 『オブリビオン』は、主演のトム・クルーズ、ヒロイン役のオルガ・キュリレンコと監督のジョセフ・コジンスキーが来日して、軒並みテレビ局をまわって宣伝に努めていたし、地下鉄の駅にも大きな看板があって、かなり力を入れていた。
 これは、原作があってというのでなく、監督などがアイデアを練り上げてつくるタイプの作品で、空中に浮かぶステーションなどは、あえてCGによらずセットをつくったというのも、念が入っていて美しい新しい世界を創出している。いくつかのシーンで、どこかでみたようなという印象が先立ってしまうのはもはやしかたがないが、自由の女神もエンパイアステートビルもマンハッタン橋もワシントンのオベリスクも、がれきと土に埋もれ、滅亡し砂漠化した地球という設定も、それはそれでまたかなどとは思わず楽しむのである。半分破壊されている月は、新しいオリジナル・シチュエーションでなかなかいい。
 どういうわけか、最後に大破壊からも免れ残された山中の渓谷に、まるで西部開拓史のような山小屋が、かつて存在した古き良き地球の自然と文明を象徴している。そして、その部屋の壁に掛けられた1枚の絵が、大写しされるカットをみて、はっとした。予告編には写らないが、
何度か繰り返し強調されるそれが、アンドリュー・ワイエスなのだ。もう随分昔のことだが、彼の日本で初めて展覧会が東京駅の大丸で開催されて見に行ったことがあるので、その絵はよく知っていた。ひとりの女性が草原を這うようにして、丘の上の一軒の家のほうにめざそうとしている…。
 日本人ならさしずめ向井潤吉のわらぶき屋根の家がある風景に匹敵するのかもしれない(…いや、やっぱりしないか? しないな)。それでも、この絵が失われた古き良きアメリカの原風景の、ひとつの象徴として使われていることは明らかなのだ。そう考えて、なるほどと思ったのは、何層にも折り重なった先祖の歴史というものをもたない、アメリカ人の懐古的な情緒基盤の設定表現がおもしろかったからだ。逆にいうと、歴史をもたないアメリカ人は、かえって未来を描こうとしたがるのかもしれない。
 ちょっと飛躍してしまうが、そういう意味では改めて思えば、先祖の長い時代の地層の上に立っているわれわれ日本人は、なんとすばらしい存在ではないか。たとえ、このような映画はつくれないとしても、誇りに思っていい。
 この頃では、邦題をつけることはほとんどなくなっている。かつてへんてこな邦題が映画のイメージを損ねることもめずらしくなかったので、その反省からか。洋画のタイトルのほとんどが原題のカタカナ表記なので、英語に弱い当方としてはいちいち辞書を引いてみなければならない。「oblivion」とは、忘れられていること、つまり “忘却とは忘れ去ることなり
”なのであった。
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 映画館のある商業施設からJR横須賀駅にかけての湾岸に長いベルニー公園は、横須賀築港に尽力したフランス人の名前を冠している。横須賀本港はアメリカ軍の基地と自衛隊の港が仲良く同居しているが、ベルニーを使って幕末に最初に横須賀に造船所をつくることに奔走した奉行・小栗上野介の名は、ほぼ完全に忘れ去られている。かげろうのなかに(実は単なるピンボケ)オレンジ色の「しらせ」が浮かぶ…。
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▼国土地理院 電子国土ポータル(Web.NEXT)
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dendenmushi.gif関東地方(2013/07 記)

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コメント 10

cafelamama

映画の記事、面白く拝見しました。
「2001年宇宙の旅」と同年公開の「猿の惑星」は、ヒットしましたね。
by cafelamama (2013-07-07 18:36) 

dendenmushi

@それもありましたねえ。あのラストの砂浜に半分埋もれた自由の女神のシーンが、この頃はまだ強烈で新鮮でしたね。
これはその年には、ハヤカワ文庫で新刊本が出ました。『2001年…』のほうは、しばらくしてからノベライゼーションが出ています。
『猿の惑星』も記念すべき作品ですが、ここは「キネマ旬報」ベストワンのほうでいってみました…。
by dendenmushi (2013-07-08 20:45) 

うつぎれい

「2001年宇宙の旅」のノベライゼーションと呼んでよいかはともかく、確か伊藤宣夫さん訳でのアーサー・C・クラークの原作本?は、あの最初にテアトル東京で期待して映画を見に行って帰って来て、欲求不満になったままだったSFファンには、正に解毒剤みたいなものでした。
象徴的な啓示にしか見えないあの映画のラスト部分は、アーサー・C・クラークの小説を読んだあと暫くしてなら、それなりに納得出来ても、小説版を読んだ直後では「何であんなに哲学的みたいな終わり方にしたんだ? 全然SFじゃあないじゃない。」でした。アーサー・C・クラーク自身もファンと同じ不満を持っていて、映画「2010年宇宙の旅」を作らせ、「これこそが私の作って欲しかったモノだ」と言ったとか言わなかったとかですが、やはり「2010年宇宙の旅」は大した作品ではなくて唯の俗なアメリカSF映画でしかなく、キューブリックのあのラストの哲学めいた作品の方が、今では本当に気の利いた不朽の名作なのだ・・・と私も納得させられています。

SFマガジンが書店の店頭でSMマガジンと並んで置かれていたのは良く憶えていて懐かしい光景です。
間違えた振りして時々SMマガジンの方も一緒に買ったりして・・・。( 笑 ) 読者層結構重なってると見て、編集者が画策したのかもしれませんねえ?

ともあれ最近はアメリカ映画をSFを含めて殆ど見なくなりました。例外的に見たのはアイアンマン1とテレビで見たアバターぐらいです。

カッコいい戦闘シーンのあるハリウッドのアクション映画の製作資金の殆どが、現在ではペンタゴンの広報予算によって作られており、そうした映画が実は海兵隊への志願兵を増やす為の宣伝映画として作られていると知った事で余計見なくなりました。

911テロを見て、現実にこんな事が起きたりするのなら、絵空事の作り話に夢中になってる時間はないと感じたことも大きいです。

あと、元々のSFがSFという形式をつかって時代や社会や常識に対する痛烈な批判や風刺を含んでいたのに、今は唯SFという枠組みを使ってストーリーを組み立てているだけで、根底の精神性を失っているように感じる点も大きいです。

歳を取るごとに段々「現実」の方が遥かに不思議で驚異に満ちている・・・と気付いてしまったこともあります。

因みに例の「911テロCGの証明」が近々ある雑誌に取り上げられて掲載されそうです。

ではでは、またそのうち。

オマケ ; もし恐竜とかの絶滅に興味がありましたら、このリンク先のページに出て来る一番大きな恐竜をクリックしてみて下さい。

by うつぎれい (2013-07-15 16:56) 

うつぎれい

訂正と加筆

「伊藤宣夫さん」は「伊藤典夫さん」の間違いでした。

あとブライアン・オールディスの「地球の長い午後」なんて名作、どうして本気で映画化されないんでしょうねぇ?

あれこそジェイムズ・キャメロンに絵画化してもらいたいです。

by うつぎれい (2013-07-15 17:26) 

dendenmushi

@確かにね。このケースでは映画の後から出た小説は、また別のものと考えたほうがいいかも知れませんね。そういう意味では、いわゆるノベライズでもない…。
アーサー・C・クラークの作品では好きなのが初期の『地球幼年期の終わり』(近年は「地球」が取れている)でしたから、この映画もラストのスターチャイルドがなるほどと決まった感じでした。
それにしても、うつぎれい さんはすごいですね。恐竜よりコワイくらいです(@_@;)…。ブラッドベリも大好きでしたが、『恐竜物語』はもひとつ…。
by dendenmushi (2013-07-16 20:41) 

うつぎれい

明けましておめでとうございます。

このお正月に、最近色々と分かって来た事実を加味して「いま本当は地球の周りがどんな状態になってるのか」を実感として感じさせるページを作ってウチのサイトのトップページにしてやろう・・・と思い立ち、2001年宇宙のオデッセイ的なHTMLコラージュ ( HTMLだけで作った貼り合わせ画面 ) を作り、それにチャイコフスキーの「花の大ワルツ」を組み合わせて7分で一巡するネット紙芝居みたいなのにしました。

最近色々と分かって来た事実・・・というのはメキシコのポポカテペトル山の火口に出入りしてる直径200メートル、長さ1000メートルもの葉巻型UFOがメキシコ国営放送の火口観察用定点カメラに捉えられたり、イラクやイランやインドから身長3 ~ 20メートルもの巨人の骨が次々発掘されてるという話が、実はガセネタではなくて本当に裏付けのあると分かったりと、驚天動地の様相であることで、更にはあのスノーデン氏が、どうやら本当に上部マントル層内に潜む地底人が存在してると本気で証言してるなど、ここのところSFどころではない、正に現実世界とは魔法の世界そのものであるらしいと実感せざるを得なくなってしまってるからです。詳しくは私のツイッターに色々記してます。
死後の世界が存在することまでが、脳神経科医のエベン・アレクサンダー氏によって証明されてしまいましたしねえ。
この現実の世界は、存外SFやファンタジーよりずっと不可思議で面白いものせしいので、精一杯探求するつもりです。

良いお年をお迎え下さい。

上のリンク、時間の有ります時に見てやって下さいませ。


by うつぎれい (2014-01-14 18:58) 

dendenmushi

@おおっ! UFOが飛んでますね。チャイコフスキーできましたか。やっぱりワルツが合いますねえ。
うつぎれい さんのページを見ていて、ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』を最初に読んで、興奮したのを思い出しました。
シリーズになって息長く読まれているようで、今でも文庫の平積みになってますよね。
by dendenmushi (2014-01-17 12:12) 

うつぎれい

見に来てくれてどうもありがとうございました。

この正月にコツコツとHTMLだけで作ったのですよ。
「星を継ぐもの」昔読みましたね。今でもどこかに有る筈です。捨てたりはしませんから。
ただ最近は小説もSFもホント読まなくなってしまいました。
原因は、作り話よりもこの現実の世界で実際にあったらしい事や、間違いなく今も有る「不思議な事」の方が、遥かにとんでもない驚異に満ちているのに気付いてしまたからです。

これは友人の南山宏氏も同じだそうで、彼もその理由でSFから足を洗ってしまったそうです。
南山氏の著書で「奇想科学論」という本が学研から出ていますが、そこには本当にビックリするような事実が沢山紹介されていますよ。

最近一番ビックリさせられたのは、例のスノーデン氏が暴露したCIAの極秘事項の中に「上部マントル内に実は人類より遥かに進んだ地底人が生息している」という情報ですが、メキシコのポポカテペトル山の加工に出入りしてる長さ1000メートルもの葉巻型宇宙船が実際に火口観測カメラに幾度も捉えられていることから、私達が宇宙人だと思ってる内の一部は少なくとも地底人であるらしいことが判明した点です。
チリのアタカマ砂漠で見つかって現在スタンフォード大学でDNA調査されてる身長15センチの小人「アタカマ・ヒューマノイド」の存在や、イラクやイランやインドで最近発掘されて写真の洩れだしている身長が3メートルから10メートル以上もある巨人の骨も、考古学会はずっと無視してるものの、どうやらガセネタではなく事実のようなので、聖書やマハーバーラタその他の伝承にあるネフィリムが実在していた可能性が高くなって来ました。

アゾレス諸島の海底で最近見つかったピラミッドがアトランチスの痕跡とも言われ始めていますが、その他にももう一つ沈んだアトランチス島の痕跡らしきものが見つかってもいます。

この世界って本当に、SF以上にワクワクする不思議世界のようです。

なお、「うつぎれい」でググると出て来ます私のツイッターにも最近は色々と書いてますが、上と同じ「花の大ワルツ」を使って、これより少し前に「回転木馬のオルゴール人形」というページも作ってます。
そちらはページの上の方で瞬いてる星の一つ一つと、下の方の空白をドラッグすると出て来る文字の全部が、それぞれ別のBGMのスイッチになってます。

図々しくこのコメントのリンク先にしときました。

by うつぎれい (2014-01-18 22:26) 

うつぎれい

すみません。
前に書いた内容を確認せずに、筆の勢いでかなりダブったことを書いてしまいました。
送信した後で気付いたため、もはや自分では削除できませんので、目障りでしたらこれと今回分のカキコとはそっくり削除してしまって下さい。
by うつぎれい (2014-01-18 22:37) 

dendenmushi

@いえいえ、このまま残しておきましょう。世間の常識人からはトンデモ本といわれているもののなかにも、なかなか傾聴すべきものがあると、でんでんむしも思いますけどね。
証明ができないのが、なかなかむずかしいところです。
by dendenmushi (2014-01-22 19:08) 

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