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903 津上崎=福岡市西区宮浦(福岡県)宮浦の港の目印になったであろう岬の南の小田地区がおもしろそうだ [岬めぐり]

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 東側の約3分の1が福岡市、残り西側が糸島市になっている糸島半島は、おおよそ5つ(フラクタル図形のようは枝の数え方によっては7〜8つ)の出っ張りをもっている。そのうち北端にあって福岡市に属するいちばん大きな蒙古山の出っ張りの東半分には、宮浦という字名がある。西半分は西浦。
 そして、その下(南)は、小田なのだが、ここは蒙古山の出っ張りの東西に海岸をもっている。つまり、ここでは山が切れて、東西の往来ができるルートがあったことになる。
 津上崎は宮浦の南端にあたるのだが、そこへ行く前に、手前の小田で寄り道をしてみたい。というのも、地図を見ていて、おもしろいことに気がついたからだ。
 津舟崎と柑子岳を過ぎると、海釣り公園がある。それを過ぎていったん山が切れるところが小田で、ひとつの流れの周囲に三角形の小さな田畑がある。三角州のような大げさなものではなく、単に小さく開けた入江が、だんだんに陸地化そていったものだろうが、ここから北西方向に一本の道がのびている。そして、その道沿いに、なぜか北崎という名の小学校と中学校が並んでいる小田浜から北西へ、船津、木原、森、小田、山方、田中、川原、段、西園といった小字名が、ここだけちまちまと小刻みに並んでいる。
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 これは、この谷筋がなんらか古い歴史をもつものと考えて、ほぼ間違いあるまい。
 そうなると、やはり『筑前国続風土記』ではどう書いているのかが、気になる。その小田村の項は「草場村の西北に在。」で始まる10行ほどの記述がある。草場というのは、柑子岳の西麓に今も残る地名で、ここから小田の木原へ道がある。その東の丘の上にお寺のマークがあるが、これが風土記に言う福壽寺らしい。
 
 又望海山福壽寺といえる禅寺有。開山双峰和尚、建武二年に寂せりとなむ。年ふりて殊勝なる寺也。村の西の山邊に、地を掘れば瓷器(やきもの)の鼓の筒のごとくなる物出る所有。又草場村との堺二全(ふたまた)と云谷をほれば、鐵落(てつくつ)多出づ。如何成故にかゝる物残れりといふ事を知らず、古へは小田、宮浦、唐泊、西浦をすべて北崎と云いとかや。古き文書には、北崎と云名多く見えたり。
 
 なるほど、なるほど。
 まず、“寿福寺双峰和尚が寂せる建武二年”といえば、西暦1335年なのだが、それよりも「建武の新政(中興)」でその元号に記憶がある。鎌倉幕府の滅亡後に後醍醐天皇が自ら政治を行なおうとした、その頃である。
 700年近くも前の頃から、こんな鄙びたところに禅寺が開かれて、今に続いていることは、まこと“年ふりて殊勝なる寺也”といえる。
 さらに、この谷筋に、風土記の時代には既に昔が辿れないほど古くから、製陶や製鉄が行なわれていた跡があった。“鼓の筒のごとくなる物”というのは、半島や大陸にあった陶製の腰掛けを連想してみたが、どんなものだろうか。
 製鉄の残滓のような物が地中から出るのも、“如何成故にかゝる物残れりといふ事を知らず”というわけで、すでにその伝承も途絶えていた。
 北崎という岬は現在ではないのに、北崎小学校と北崎中学校がある理由は、これでわかった。つまり、この糸島半島最北端の出っ張り全体を、古くは「北崎」と称していたわけだ。
 このことをちゃんと今に伝えている学校の名も、また“殊勝なる”かな、である。
 さてさて、この小中学校のすぐ北にあるのが本項本題の津上崎だが、これもまた津舟崎と同様な車窓事情により、ロクな写真がない。
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 この岬は、標高65メートルの小山が海に向かって飛び出していて、その裾を道路が巻いている、何の変哲もないごくありふれた出っ張りである。
 このような地形は、日本の海岸線には無数にある。だが、それのすべてにわざわざ名前をつけているわけではない。名がつくには、それなりの理由があろう。
 でんでんむし得意の揣摩憶測をフル回転させてみるに、この津上崎は宮浦の集落と港のすぐ南にある。したがって、まずいちばんに考えられるのは、この港に出入りする船の目印になっていた、ということであろう。目印には呼び名が必要だ。「あれ」「あの」「その」ではなにかと不便だ。
 この場合は「津上」というのも、港のそばにあることを意味しているところからついた名ではないだろうか。

▼国土地理院 電子国土ポータル(Web.NEXT)
33.638106, 130.228563
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dendenmushi.gif九州地方(2012/10/30訪問)

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タグ:福岡県 歴史
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