石垣のマングローブはやっぱり西表には負けてるけどおかげさんで「西表石垣国立公園」になった(24) [石垣島だより]
“マングローブ”も、“南十字星”ほど一般的ではないが、南をイメージすることばとして馴染んできたと言えるかもしれない。熱帯または亜熱帯地域の河口など、海水と淡水が混ざりあう汽水域の湿地に育つ森林は、生態系からも環境系からも貴重である。浅い干潟、波の影響の少ない場所、豊かな栄養分を含んだ泥のなかで、マングローブは生長する。
ただ、“マングローブ”という場合、同じ表現で森や林を指すときと、木の種類を指すことがあるが、“マングローブ”という名の木があるわけではない。マングローブの森林を構成する樹木の種類は、世界中では100種類もあるといわれ、それらは植物学的分類では主にヒルギ科、クマツヅラ科、ハマザクロ科の3科に属する種であるという。
石垣島では、オヒルギ(ヒルギ科)、メヒルギ(ヒルギ科)、ヤエヤマヒルギ(ヒルギ科)、ヒルギダマシ(クマツヅラ科またはキントラノオ科、ヒルギダマシ科)、ヒルギモドキ(シクンシ科)、ハマザクロ(ハマザクロ科、別名マヤプシキ)の6種がある…と、情報を引っ張ると出てくる。
モドキだのダマシだの、名前を並べてもさっぱりわからないし、見てもその区別はつかない。だいたい植物の科とか種とかが、シロウトにはそもそもよくわからない。が、要は“マングローブ”と一言でいうけど、実はこんなに多種多様ですよ、ということだ。
でんでんむしは、石垣島のマングローブといえば、ラムサール条約登録地にもなっている西部の名蔵アンパル(網を張るの意だというが定かでない)が最大だと思っていた。
2007(平成19)年にそれまでの「西表国立公園」が拡張されて、石垣島も編入され、石垣島と西表島との間にある石西礁湖を取り込む「西表石垣国立公園」がめでたく誕生。これによって名蔵も国立公園の特別地域にもなったが、実は宮良川河口のマングローブが石垣では最も広いのだという。
「宮良川のヒルギ林」として国の天然記念物に指定されているが、西表島の仲間川や浦内川のマングローブを知りそれらと比較すると、いささかちゃちく見えてしまう。だが、ここは石垣島限定。
最近では、島北部の野底にある、吹通川のヒルギ群落も売出し中である。
素人目には地表のさらに上のほうからタコ足状に根っこ(呼吸根)を広げて幹を支え海中に根を下ろすヤエヤマヒルギが、最もマングローブらしく思える。
また、タネで飛び散って親木から自立しようと、海中にひょろりと一本だけ小さな葉っぱを広げて立つ姿も、いかにもマングローブらしいのだが、宮良川の場合、陸地からヒルギ林を眺められる場所は、宮良橋くらいしかなく、そこからではそれらが観察できるわけでもない。
名蔵では、海岸の道路脇にもいくつかそういう場所があるが、ここ宮良川では、河口付近にヒルギが芽を出しているという光景は、どうやら見られないようなのだ。そこで、雨の中を車で通りかかった名蔵のほうの海岸の光景も合わせて…。
宮良川のヒルギ林の見物は、やはりカヌーや舟でと、体験観光の宣伝もされているが、でんでんむしはまだ体験していない。なんでも、名物おじいがガイドしてくれるらしいのだが、カヌーは誰かが漕ぐのに乗ってもおもしろくない。やはり一人で漕いでみたいし、それなら西表島の仲間川のほうが…。
サンゴ礁に取り囲まれた島では、河口など一部切れ目割れ目のような場所にしか、船(または舟)をつけることができない。オヤケアカハチの居城が大浜であったにせよ、フルスト原であったにせよ、この河口こそがその活動の拠点になる港だったことは確かである。
今は、もうその名も消えてしまっているが、ここらは「フナツキ」という古名もあった。
沖縄地方(2012/01/25 記)
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