SSブログ

682 襟裳岬(その3)=幌泉郡えりも町字えりも岬(北海道)やまない風はないのか襟裳岬「風の館」 [岬めぐり]

 “ヒュルヒュル”と詩人が表現した風が、また別の詩人をして“なにもない”といわしめたのであろうが、えりも町ではこの風を観光資源として活用することを考え、実践している。
 なにしろ、“襟裳岬では風速10メートル以上の風の吹く日が、年間290日以上もある”というのだ。“日本屈指の強風地帯です”といえるならば、これを使わない手はない。襟裳岬「風の館」が観光スポットとしてオープンしたのは1997(平成9)年である。
kazenoyakata01.jpg
 「町立」などとはどこにも明記していないが、「風の館」は、町の施設であるらしく、観光客相手ばかりでなく、町のイベントなどにも広く利用される施設のようだ。
 よくある観光地の施設には、ないほうがよほどすっきりしていいのに…と思うようなものも少なくないが、ここ「風の館」は、開館時間、周囲とのほどよい隔離性、景観に溶け込んだ設計、フレンドリーな対応など、いくつかの点で高得点を稼いでいると思った。
 朝は8時半から開いているし、初日の出のときには特別に開く。お金を払わない人でもある程度中まで入って行ける(展望台への道を兼ねている)、崖の中にはめ込んだようになっているので景色との親和性が高く違和感がない。
kazenoyakata03.jpg
 望遠鏡を覘いていると、「わかりましたか?」と数えていたらしい係の人が声をかけてくれた。
kazenoyakata04.jpg
 広い窓の向うに広がる岬の岩礁地帯には、ゼニガタアザラシがごろごろしていて、それを観察する望遠鏡や階段式の部屋が設けられている。係の人が今、どの辺に何頭ぐらいのアザラシがいるかを数えて、ボードに示してガイドしているのだ。
kazenoyakata02.jpg
 望遠鏡でいきなり見ても、なかなかポイントを捉えるのはすぐにはできないが、いったんどこをみているのかがわかると、まあ、いるわいるわ…。
 白い点に見えるウミウなどの鳥も多いが、こんなにアザラシがたくさんいるのは、見たことがない。
kazenoyakata05.jpg
 係の人が数えたこの日の朝は「378頭」と、ボードには記された。大勢のこどもたちが見学にきても、並んで見ることができるように、球場のスタンド状になった観察室は、早朝のことで空いていたので、ゆっくりと望遠鏡を独占して、岩のあちこちを眺めていると飽きないが、これがまた肉眼に戻るギャップがおもしろく感じられた。
kazenoyakata08.jpg
 風が吹いて柱などにあたるときに風下に起る、「カルマン渦」という渦の模様をシンボルにした設計による部屋は、壁面も湾曲している。
 そこには、「風を呼ぶ 2135」という展示があって、小さく「日本全国風名簿」と表示してある。“風の呼名”と“風を呼び寄せる”とをかけたのであろう。
 それにしても、2135も風の表現のしかたがあるとは…。
kazenoyakata09.jpg
 もちろん、方言的なものが多い、地域差によるバリエーションによることが大きいだろう。
 そういえば、昔、『雨の名前』という本の題名にいたく魅かれたことがあった。雨は400とちょっとくらい「しか」ないので、風の名前の多さには驚嘆する。
 そういえば、やはり昔、『やまない雨はない』という本もあった。お天気キャスターの草分け的存在で、気象予報士が制度化されるずっと前に気象庁を定年退職し、テレビからも遠ざかっていたが、倉嶋厚はここの館長だったこともあるはずである。
 やまない風もない、のだろうか。
kazenoyakata07.jpg
 展望台から渦巻き状の階段を降りてくると、館の入口になる。「カルマン渦」がデザインされた通路をうねって行くと、駐車場からのメイン出入口になる。館をいったん出ても、再入場が可というのもいい。
kazenoyakata06.jpg
 岬が分ける東と西の海岸は、風の吹き方がまったく違うように感じられた。berimo17.jpg
kazenoyakata10.jpg
berimo18.jpg
 “日高山脈襟裳国定公園”という名でくくられているように、岬の頂上から海に落ちる岩礁地帯までが、大きく見れば日高山脈の終わるところで、海中までもし見ることができれば、さらにその峰が連続しているのかもしれない。
berimo15.jpg
 帰りのバスは、前日雨の日暮れの道を逆に辿って行くが、途中には風力発電の風車もある。当然そう考えるのが普通であろうが、北海道初の民間風力発電所がここにある。昨今の情勢からすれば、もっと地域全体でこうしたものを支え利用しあっていくような取り組みが期待されてよいと思うが、今のところえりも町での具体的な動きはないようだ。
kazenoyakata12.jpg
 様似町との境界を越えると、留崎という岬の名残りめいた地名になり、そのとたんに、灯台もどきのえりも町内のJRバスのバス停の形が変わってしまうのがおもしろいが、バス停の設置は町の権限と負担によるのだろうか。
kazenoyakata13.jpg
 この付近は、日高山脈がアポイ岳を中心にして海にせりだしているところなので、昔は山道を開発しそれを辿るのが大変だったらしい。“日高耶馬渓”という名もある海岸線は、美しく険しいのだろうが、ほとんどがトンネルと半トンネルで通り過ぎていき、初めての襟裳岬の岬めぐりは終わった。
kazenoyakata14.jpg
kazenoyakata15.jpg
kazenoyakata16.jpg

▼国土地理院 「地理院地図」
41度55分33.70秒 143度14分41.35秒
kazenoyakataM.jpg
dendenmushi.gif北海道地方(2011/07/15 訪問)

にほんブログ村 その他趣味ブログ
その他珍しい趣味へ 人気ブログランキングへ


タグ:北海道
きた!みた!印(32)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:地域

きた!みた!印 32

コメント 2

ぱぱくま

アザラシがいるのですね。
望遠鏡をいっしょに覗いてみたくなりました(^-^;
襟裳岬は風を感じる岬でしたね。
風力発電にこんなに適している地もないのではと感じます。
by ぱぱくま (2011-08-20 09:27) 

dendenmushi

@いるんですよ。なんの予備知識を持たずに行くのがでんでんむし流なんですが、ここも入口のおねえさんから教えられて、初めてその存在を知ったのです。
 肉眼で見ていたときには、まったく気がつかなかった。だってね、岩とおんなじ色しているんで…。
 そういえば、ズームでアップの写真を撮ることも、すっかり忘れて帰ったことに、これを書くときになって気がついたという、おそまつでした。
by dendenmushi (2011-08-22 06:38) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました