652 白銀崎=石巻市雄勝町桑浜(宮城県)黒潮が寄せるでこぼこ半島の南端を望みつつ [岬めぐり]
雄勝町(おがつちょう)は、まるごと石巻市になってしまったが、市になって便利になったことは、これといってないようである。それは、ミニバスの運転手さんも保証していた。
かつては、唯一の公共交通機関として、石巻から雄勝の船越や大須まで行くバス路線があったが、それも数か月前になくなってしまった。駅前のバス停には、まだその名残が残っていて、旅行者を惑わす。
そこで、タクシー会社に委託して、女川から雄勝へ行く乗合いミニバス(ミニワゴン車)おがつ号を走らせているので、それに頼るしかない。そこで、この日は朝から石巻を出て、女川駅前まで戻ってきた。ミニバスが出る時間まで、また港の公園をぶらぶらしていると、バカにでかい石碑があった。高村光太郎の文学碑だという。まこと、文学碑としては日本一でかいのではないかと思われるが、彼と女川にどんな接点があったのだろう。
時事通信社の依頼で、三陸地方のイラストつき紀行文を書いたのは、1931(昭和6)年夏のことであった。「時事新報」の夕刊に掲載された「三陸廻り」の一部が、原稿用紙2枚を並べたような形で、掘り込まれているのだ。
つらつらと、読んでみると、昔の女川の自然と風物が、いきいきと描かれていて、女川の人がそれを奇貨として大事にしたい気持ちは、よくわかるような気がしてきた。
毎年夏には、この文学碑公園で「光太郎祭」という祭りまで催されているらしい。
おがつ号は、まずは、女川から雄勝の中心地である公民館のところまで行く。しばらくは出島の北側の海を眺めながら、尾浦、御前浜と、女川町を走る。道路は、集落で低く降りることもあるが、だいたいは高いところを走る。
石巻市雄勝町の領域に入ると、海の向こうに槍のように細く長く突き出した岬が見えてくる。先端の岩島が印象的だ。ここは、実際は幅のある出っ張りで、道もあるので、ほんとうは歩いてみたいところだったが、二つ合わせれば半島を一周しているミニバスの本数が、なにしろ限られているので、どう考えてもムリだった。
これが、白銀崎である。半島の最南端部に位置する岬は、きれいに改修された広い道路を走るミニバスから、しばらくの間よく見える。
そこでまた半島の先まで行く別のタクシー会社のミニバスが、やってくるのを待つ。雄勝は、その大半を複雑な形ででこぼことうねっている半島で占めている。全町域の8割が山林で、平地は尾根と尾根の間にちょこちょことある程度でしかない。
ここもまた2005(平成17)年、である。日本中の町が熱に浮かされたように合併を急いだ、そのときの市町村合併ブームのただなかで、石巻市、桃生町、河南町、河北町、北上町、牡鹿町が合併し、新しい「石巻市」となったものである。
宮城県の北東部にあって、太平洋に面した比較的大きな半島をもつ町は、どう考えても、ここが石巻市と称するにふさわしい理由が、見当たらないほどに遠く離れて異質である。公共交通も、ほとんど途絶寸前といって…よいかな?
いわゆる海洋性気候で、平均気温は約13℃と聞くと、黒潮の偉大さが改めて実感できる北緯38度29分なのである。
▼国土地理院 「地理院地図」
38度29分19.62秒 141度32分7.54秒
東北地方(2010/09/21 訪問)
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