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571 青井崎=小浜市青井(福井県)もし…たら…れば…それは限りなく大きく重い [岬めぐり]

 小浜市といえば、オバマ大統領の選挙のときからサポーターの名乗りを上げたことで、全国にその名を馳せた。まったく、なんの助けにもならないし、さして意味があることではないが、それを道具に使えると考えた人は、なかなかのものだ。またそれをユーモアとして受け止められる方もそうだが、日本人のセンスもそういうところでも躊躇なく発揮されるということに、ちょっと感じた記憶がある。
 もうひとつ、小浜の記憶はNHK朝ドラ『ちりとてちん』である。女落語家という設定がおもしろかったので、時たまに見たが、焼サバから塗り箸から五木ひろしまで総動員で、なにかご当地売り出しドラマの典型のようだった。
 その放映が終わってから2年以上が経つというのに、小浜の町を歩くといまでもあちこちにその看板やポスターがあり、それに加えて早くも来年の大河ドラマ(今度はお市の方の三人の娘の話だという)の幟までたくさんはためいている。小浜市は、当分PRネタには困らないようだ。
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 蘇洞門めぐりから帰ってきた遊覧船が、港に入る前に、青井崎のすぐ前で向きを変える。この岬の周囲は、浜から徐々に登りになる自動車道路がめぐっているようだ。
 フィッシャーマンズ・ワーフで船を降りて、海岸沿いに西へ少し歩くと、今夜の宿を予約したホテルがある。割烹旅館と両方やっているが、シングルの部屋があるので、ここなら一人でも大威張りだ。早々と本館の展望温泉に浸かって、広い窓から眺めると、青井崎はすぐそこにある。
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 だが、そこから見えているのは、青井崎のはずれの木が道路から飛び出たところで、メインの岬は、そのちょっと先になる。
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 海岸を行くと、人魚の像やら、ハクチョウのモニュメントやら賑やかな海浜は、小浜の海岸を楽しむ公園が続く。
 いつくらいまでその効果が期待できるのかが気になる、『ちりとてちん』のロケ現場であることを強調する看板があるマーメイドテラスの人魚の像は、ごていねいに二体が対になっているが、これは対馬海流の黒潮に乗ってジュゴンが流れ着いたことから、人魚伝説が生まれた、とこれを建てた小浜市の説明にある。なんでも、その伝説は、八百比丘尼という800歳まで若々しく生きた女性の話と結びついているようだ。ジュゴン=人魚=八百比丘尼…という三段構造の時系列的なつながりは、説明板でもよくわからない。
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 もう多少ガタがきているが、それでも海水浴には賑わうんだろうなという白い国民宿舎の建物を過ぎると、ゆったりした登りになり、やがて青井崎に到着する。
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 これも道路がめぐる岬ではよくあるパターンで、道路がカーブするところと、岬の先の間の膨らんだスペースが、駐車ゾーンになっている。土曜日のせいか、数台の車がいっぱいに停車しているが、断続的にエンジン音を響かせている一台は、どうやらカップルのお楽しみ中らしかったので、遠慮してなるべく見ないようにして岬の先端に立つ。
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 正面には、さっき船で訪れた双児崎や松ヶ崎がきれいに見えている。
 こういう場所には、たいていの場合、申し訳に設けられたベンチと、なにやらの石碑や祠などがつきものなのだが、ここにもちゃんとあった。
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 “駆逐艦榎慰霊碑”の碑文と、その傍らには1500トンの榎の、在りし日の勇姿がレリーフとして飾られている。
 ついでなので、その碑文を読んでみる。
 「第十一水雷戦隊駆逐艦榎此地に於て終焉す 太平洋戦争の戦局急を告ぐる昭和二十年六月二十六日米軍機の投下せる機雷に触雷 艦後方を大破浸水 戦斗機能を喪失しあまた尊き殉国の友を失う 痛恨極まりなし 
 爾来三十有余年 我々元乗組員一同相諮り慰霊碑の建設を企画せり
 願わくば此小碑が 駆逐艦榎 最後の地を記念し更には散華せる戦友の鎮魂の礎石として又我国の平和と繁栄を希求し 萬世に亘り風光明媚な此地 小浜湾の波静かならん事を願って 此碑を建立す
 昭和三十六年六月二十六日               」
 あの戦争が、なかったら…とはいわないまでも、少なくとももう少し早く終わっていたら…。
 そう思う人は少なくない。東京大空襲も、他の全国各地の爆撃も、沖縄戦も、この駆逐艦榎のような無数の例も、そしてでんでんむしの父親のように故国を遠く離れた戦線で倒れ帰らぬ人となった多くの人々も、さらに満州やシベリアの悲劇も、もちろん広島や長崎も…。
 歴史に“たられば”はないと、よくいうけれども、このわずか数か月の“たられば”は、計り知れぬほどに大きく重い。
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▼国土地理院 「地理院地図」
35度29分41.02秒 135度43分49.90秒
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dendenmushi.gif北信越地方(2010/06/05 訪問)

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タグ:福井県
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