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205 長井崎=沼津市西浦木負(静岡県)こどもも楽じゃないけど [岬めぐり]

 西浦と内浦は、50年前に沼津市になる前は、隣同士の別の村だった。それを分ける境界が、長井崎にあった。この岬は、高くはないがなかなか木々の繁みが美しい姿をしている。それが波静かな海に影を落とし、その向こうには観光ロープウエイもある淡島が、こんもりと盛り上がっている。


 往路では、バスでここの先端を回ってきたが、そのとき途中の内浦などからぞろぞろと乗ってきた通学の中学生たちがあった。セーラー服と詰め襟の制服に、みんな同じカバンをぶら下げるのでも肩にかけるのでもなく、ランドセルのように背中に背負っている。昔見たフランス映画のシーンを思い出す。欧州ではこういう手提げカバンを背負うスタイルも多いのだが、日本にもマネする学校がでてきたらしい。
 背負うほうが、手に重いカバンを下げるより合理的だというのも、その理由としてあるのだろう。両手が空いているというのは、なにかのときには都合がいいこともある。
 だが、前のほうを行く男の子は、背負うのではなく片側だけを肩にかけているようだ。わかるなあ。その気持ち。

 その中学生たちが降りたバス停は、「長井崎中学前」。「長井中学」ではなく「長井崎中学」であるところが、なんとなくうれしい。中学生たちは落ち葉の坂道を登っていく。この岬の上に中学校はあるのだが、地図で見ると、学校へ行く大きな道はほかになく、ここから登っていくのがいちばんの、そしてほとんど唯一の近道らしい。環境のいいところは、往々にして不便である。
 学校があるためばかりでもないだろうが、岬の先端を回る道路は、スピードを出さないようにだんだら模様になっていて、バスもゆっくりと180度向きを変え、岬を回り込んでいく。

 帰りのバスは、まっすぐトンネルを通って帰ったので、朝のバスは中学生の通学のために岬を迂回していたのかも知れない。
 赤崎と長井崎の間にあるのが、木負という集落である。「木負」。“きまけ”ではなく“きしょう”と読む。確か「負」に「しょう」という読みはなかったように思うが、案外これも「きまけ」では縁起が悪いというので、逆に「きしょう(勝)」と読み慣わしてきた、というようなことかも知れんなあ。ありがち。
 往路のバスは、中学生を降ろした後、この木負から海岸を離れて、狭い道をどんどん山の中へ入って行く。ビニールハウスがあったり、みかんの木が続く山の斜面に分け入って行くと、河内農協前というバス停があって、そこには今度は小学生たちが5〜6人、お行儀よく並んでバスを待っていた。


 西浦小学校まで、3キロちょっとの道を、この路線バスで通っているのだ。この盲腸のような路線も、こどもたちのためにあるのかも知れない。朝の路線バスは、スクールバスの役目も果たしている。
 そういえば、御前崎や牧之原でも下校途中のこどもたちをバスから見かけたが、彼らは全員、白いヘルメットをかぶって、道を歩いていた。
 かと思えば、静岡から沼津へ向かう東海道線の車内では、制服制帽にそろいのランドセルという私学の小学生が固まって乗っていた。彼らのうち最後まで残っていた子が降りたのは、静岡からは50キロ近くも離れた原(といえば、まず思い浮かぶのは広重の版画、鶴が田圃にいるあの絵柄だが)のあたりだった。冬の陽はとうに落ち、あたりは真っ暗だったが、明るくても、もはやどこにも田圃などは見当たらなかっただろう。
 考えてみれば、親がこどもを学校へやるということも、こどもが毎日学校へ通うということも、なかなか大変なことなのだ。

 knaito57さんからのコメントで、「木負」の「負」は「背負う(しょう)」からきているのでは?、というご意見をいただいた。
 なるほど、それもありかも知れない。
 そうすれば、ランドセルやこどもの通学カバンのことにもふれた、この項のおさまりもつきやすい、というものだ。
(2008/01/10)

▼国土地理院 「地理院地図」
35度1分30.94秒 138度53分0.85秒
205ながいざき-5.jpg
dendenmushi.gif東海地方(2007/12/05 訪問)

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タグ:静岡県
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コメント 2

knaito57

先日来の記事で、西浦という地名にぼんやりとした馴染みを感じる理由がわかりました。きっと蜜柑箱に印刷されていた名前で覚えたんです。
“負け”では縁起がわるいので“勝ち”にしたというテの事例はいろいろありますが、木負の場合は「負う=背負う(しょう)」かと愚考します。
 ♪♪ランドセルしょって元気よく(唱歌『仲よし小道』)
それにしても地名は難読ですね。私は時代小説で「きおろし街道」を知るまで、成田線の木下駅を「きのした」と読んでいました。
by knaito57 (2008-01-09 11:31) 

dendenmushi

@そういえば「西浦みかん」、そんな段ボールの箱が、スーパーの脇に積んであったりしますね。あれ、よく見ていると、なかなか勉強になります。こんなところでこんな野菜つくってるんだ…とか。
 木負、ご意見により補筆しました。
by dendenmushi (2008-01-11 08:06) 

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