093 南無谷崎=南房総市富浦町南無谷(千葉県)南無阿弥陀仏と手を合わせ [岬めぐり]
岬や海や海岸の風景というものは、さほどに千変万化というわけでもない。ぶっちゃけ、どこでも似たようなモンなのである。それでも、一度行ったことのある岬は、なんとなく安心感をもって眺められるように思うのは、気のせいだろう。
大房岬から北側の海岸を見ると、南無谷崎はほぼ正面に見える。さらにその向こうに見えるのが西ヶ崎・鬼ヶ崎であり、その左手にぽっかり浮かぶのが、勝浦漁港から額縁にはまったように見えていた浮島である。さらに浮島の向こうには、明鐘岬がある。
富浦の駅前には観光案内所があるので、そこでレンタサイクルを借りて、次の内房線下り電車が来るまでの間、南無谷崎まで往復してきた。ここらは、やはり合併で周辺町村をまとめて「南房総市」となっている。房総半島最南端の野島崎灯台や白浜・千倉なども同じ市内で、房総半島の南の端を館山市だけ残して、東西に広がっている。広域合併で、どこに市の中心とするかは、明らかな差がある場合以外はもめるようだが、ここの場合は鉄道の関係もあったのか、市役所のあるその中心はここ富浦であるらしい。
ここを南北に縦断する127号線は、いくつものトンネルを抜けなければならない。つまり、いくつもの尾根が山から海へ向かってせり出し、そのあいだあいだに砂浜が広がっている、それがこのあたりの風景なのだ。道はその尾根に当たるたびに穴を穿ち、延びている。
レンタサイクルは、安全優先でスピードが出ないようになっているらしい。前を行くマウンテンバイクのこどもを交えたサイクリストの一団があったが、とてもついて行けず、たちまち置いて行かれた。それにしても、自転車で歩道もない車道の脇を走るのは、はなはだ緊張を要する。
南無谷崎という名前も、その由来が気になるようなものだが、それはここへやってきてきて、すぐに想像できた。確かめてみたわけではないが、岬の上の峰が南無阿弥陀仏と手を合わせて拝んでいるように(あるいは三尊仏か?)見える。
南無谷崎までやってきても、別にここに何があるというわけではない。砂浜が続く奥に小さな漁港があって、年取った夫婦が小さな船をあやつる。海岸ではしきりにわかめかなにかの海藻を探す人もある。日本中どこの海岸に行ってみても、どこにでもありそうな光景がここにもあった。これも、日本中どこの海岸でも同じなのだろうが、全般に南房総にやってきたときはいつも風が強い。やはり、この日も風が強くて、浜の道を行く自転車もその風に向かうとなかなか進まない。港を見守る社の祠も、ここではコンクリートで固めてある。これなら、少々風が吹いても神様も安心だ。
沖には、夜が明けるのを待っていたようにして、大型タンカーや貨物船が列をなして続々と浦賀水道に入っていく。そういえば、昨夜泊った大房岬には灯台がなかった。南無谷崎も目立つとはいえ、航路の標識が必要なほどではないのだろう。こういう灯台や標識灯が必要な“基準”というも、なにかあるのだろう。
でんでんむしの岬めぐり、これで内房は全部終了したことになる。実は、今回はそのためにここまでやってきて泊ったのだ。そして、これから外房の残りも片づけなければならない。
▼国土地理院 「地理院地図」
35度3分56.68秒 139度49分12.21秒
関東地方(2007/03/13 訪問)
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