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072 旗山崎・伊勢山崎=横須賀市走水二丁目(神奈川県)さがむのおぬに [岬めぐり]

 走水の港を挟むようにして、旗山崎・伊勢山崎という二つの岬は、向かい合っている。そしてこの湾の入口近くを扼するが如くに、対岸の房総の岬と競い合って競り出している。“走り水”というからには、その海流も早瀬を巻いて流れているのだろう。

 ヤマトタケルの伝説も、あるいはそうしたこととも無縁ではないのだろう。記紀の説話のなかでは、荒れる海を静め夫を無事に渡海させるために、我が身を犠牲にする妻の物語が語られている。その海がここだ、といわれても、いささかピンとこなかった。大海の只中ならいざ知らず、こんなそこに岸も見えているようなところで、いかに海神の怒りをかったとはいえ、大切なオトタチバナヒメを犠牲にする必要があるような危難があるようにも思えないし、あったとしてもそれを回避する方法もまたいくつもの選択肢があるように思える。
 しかし、そうした考え方は見当違いなのだろう。プールでもタライでも命を脅かす危機はあり得るのだから。“御所ヶ崎”という別名を持つ北側の旗山崎は、ヤマトタケルの臨時の御所として、ここに軍旗が立てられたのだという。

 幕末になって異国船の警備のために、ここに砲台が設けられたりして、それは明治にも引き継がれていくが、横須賀が軍港となっていく過程でも、再びここに注目が集まる。港を見下ろす走水神社には、東郷平八郎、伊藤祐亭、井上良馨、乃木希典らの名前を連ねたオトタチバナヒメの歌の記念碑がある。

 「さねさしさがむのおぬにもゆるひのほなかにたちてとひしきみはも」というのがその歌なのだが、歌われているのは草薙での話のいわば回想シーンであり、ここ走水ででてくるのもおかしいといえばおかしい。碑の説明板はもちろんそんなことには頓着しない。“御歌に溢るる心情はすべて夫君の御上に注ぎ露ばかりも他に及ばず其の真烈忠誠まことに女子亀鑑たるのみならず亦以て男子の模範たるべし”という。“女子亀鑑たる”はまだいいとしても、これを“亦以て男子の模範たるべし”とまで拡大していくのは時の勢いというものであろうか。
 走水の上の丘には、今は防衛大学校の広大な敷地が展開している。遠く海の向こうには、房総の山々のみならず、コンビナートの煙突や富津岬・磯根崎までもよく見える。走水港は漁港でもあるが遊漁船などが多いらしい。JR横須賀駅と観音崎を結ぶバス路線が走る国道16号線に沿って、それらしい家並みが続く。

 「岬」というものは、都会にはないものらしい。旗山崎から先は、横須賀・横浜・川崎・東京・千葉と東京湾岸をぐるりと360度回ってみても、そこ走水の前に見えている富津岬まで次に連なる岬はないのである。いや、あったのだろう。あったのかもしれないが、それらはすべて海へ進出した工業地帯のなかに、呑み込まれてしまっているのだろう。
 真鶴岬からここまで、神奈川県の岬はこの再訪シリーズですべて収録してある。いちおう地元なので、せめてここくらいは地図にある岬と名のつく(「崎」「鼻」を含む)ところはすべて網羅しておこうと考えた。もっとも、これから先も海岸線をもつ全県について、それを実行するのは無理な相談というものであろうが…。

 (前回、急に10倍近くも「閲覧数」(その項目へのアクセス、ページビューだと思いますが、これと「総閲覧数」の違いも実はよくわからない)が増えて、驚いたのですが、その後の「燈明崎」にもこの現象は続いています。思い当たることは結局自分にあったのです。そう。「雨崎」の項からSo-netのいう「共通テーマ」を変えたのでした。これまで「旅行」にしていたのですが、それもなんだか変ダナというので、「地域」に変えたのです。そのせいだとしても、それがまたなぜ?どうして? いろいろ疑問は多いものです。
 そのほかまだ、全般的にSo-netの流儀もよくわからないので、こちらはもっぱら書き込みを蓄積しているのみです。「nice!」というのも趣旨使い方ともにいまいち???なのですが、xml_xslさんからたびたびいただいており、とりあえずありがとうございます。)

▼国土地理院 「地理院地図」
35度15分54.56秒 139度43分57.81秒 35度15分45.10秒 139度44分8.47秒
72いせはたやま-72.jpg (訪問時には、西の「破崎」の表記はなかった。)

dendenmushi.gif関東地方(2007/01/13 再訪)

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タグ:神奈川県
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