1558 塩谷鼻=小豆島町田浦(香川県)やれやれでんでんむしはいったいナニやってんだろうね [岬めぐり]
塩谷鼻は北西の權現鼻に対して、出っ張りの南に向かって飛び出している。權現鼻もウン崎も飛び地で、その所在は古江だったので、塩谷鼻がはじめて田浦所在の岬となる。
「岬の分教場」とか「岬の村」というときの「岬」は、どの岬のことを指しているのだろうか。どうやら、それはウン崎でも權現鼻でもなければ、この塩谷鼻でもないらしい。分教場からはほぼ正面に見えるだろう權現鼻が、そうだろうとみる見方が不可能なわけでもない。しかし、どうもそれは個別の特定の岬を指しているのではなく、古江と坂手から大きく西へ張り出して、海を内海湾と坂手湾の南北に二分している、ちょっと曲がりながらでこぼこしながら伸びている、この半島全体のことを言っているのだろう。原作の「細長い岬」は、そう考えるほうが無理がなさそうだ。
權現鼻や対岸の飯神山が見えるところから、岬のくびれ部分を越えて反対側の海岸へ出る道が、どこかにあるはずだ。そう思って雨の中歩いてきたのだが、どうもそれらしい道はない。かろうじて、細い道が一本、ビニールハウスの横にあったので、そこを進んで丘に登っていく。
すると、そこは田浦自治会が管理する墓地だった。丘の上の平らな場所に、集落の歴史を刻んできたかのような、たくさんの墓が並んでいる。海岸に降りる道はなく、墓地で行き止まりとなっている。その間を進んで反対側の展望がなんとか効くところに出ると、木立の間に塩谷鼻がのぞいていた。
ちょうど先端部には灰色の大きな岩場の塊があって、それが鼻というよりも鳥のくちばしのような形になっている。そのくちばしの先には岩島があって、見ているうちにその向こうを漁船が一隻やってきて通り過ぎて行った。
あとで地図をよく見てみれば、この墓地がある標高14メートルの丘もそこに至る行き止まりの道も、ちゃんと地理院地図には描かれていた。
反対側の海岸に出る道を探すには、田浦のほうへ戻るのではなく、もっと先へ映画村の向こう側に行くべきだった。そこには映画村の西を砂浜の海岸へ抜ける道があった(「映画村」の文字に半分隠れていた。)のだ。
また、よく考えてみれば、スピーカーの騒音には耳を閉じて、映画村の入場券を買って入っても海岸に出られたのだった。
それなのに、道のない反対側にきてしまったのは、聞いたこともないような歌を流し続けるスピーカーと、降り続く雨に負けてしまって、ゆっくり地図を取り出して、落ち着いて検討するという気持ちの余裕をなくしていたからだろう。現地へ行ってしまうと、その場の流れと雰囲気で、こういうこともとかく起こりがちだ。
南東に向かって開けたその砂浜の海岸に出れば、塩谷鼻だけでなく、ずっと北東側の坂手にある雨倉鼻と大手城ノ鼻も、海岸から左手に見えたはずだったのだが、この墓地からではそれも見えない。
やれやれ、いったいナニやってんだろうね、とふと足元を見ると、そこにはでんでんむしがポツンといて、触覚を振りながらのろのろとしていた。雨の岬めぐりの道で、でんでんむしに遭遇するのは、これが初めてではない。
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