1544 室崎=姫路市家島町真浦:西島(兵庫県)大きな時代の流れとはどういうもんかのう [岬めぐり]
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先日、NHK-BSが山田洋次監督の“民子三部作”を放送していたので、また観てしまった。その二作目にあたる「故郷」は、石つながりでここに無理やり引っ張ってきた。
1972(昭和47)年のこの映画では、広島倉橋島の採石場から埋め立て現場へ石を運ぶ小さな木造の石船を走らせる夫婦(船長と機関長)が主人公で、老朽化する船とその仕事と故郷を諦めて、尾道の造船所勤めを決断し島を出て行くまでがその話だった。
平らで手摺も柵もない甲板いっぱいに、海面ぎりぎりまで石を積み込み、埋め立て現場に着くと、そこで網に石を入れたクレーンを反動をつけて振り、船全体を傾けて石を投棄するのが印象的だった。
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もうひとつ印象に残るのは、鋼鉄船の時代になって小さな木造船の修理もできず、このまま石船の継続が絶望的とわかった船長の夫が、船を走らせながら独り言のように言う「時代の流れとか、大きなもんには勝てんとか、それは何のことかいのう」という言葉。「大きな時代の流れとはどういうもんかのう。なんでわしらはいままでどおりにやれんのかいのう」…、彼はそう嘆くのだった。
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倉橋島で産出される石は花崗岩で、家島諸島でも男鹿島は花崗岩だったが、この西島では安山岩だという。男鹿島と西島は7キロほどしか離れていない。ちょっとの違いでなぜこんなふうに石の種類まで変わってしまうのが、どうにも不思議に思えてならない。
地殻に入り込んできたマグマがゆっくりと冷えてできる深成岩である花崗岩に対し、マグマが地表近くで急激に冷えてできる火山岩のひとつが安山岩。どちらも幅広い石材としての用途があるが、安山岩は墓石としての需要も多いらしい。
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西島の安山岩の採石は、年間約100万トンに達すると家島船舶協同組合のサイトではいうのだが、その規模や量の見当がつかない。ただ、家島諸島の採石が100年以上もの間、営々として続けられてきたこと、それが現在にもまだ続いていることには驚く。
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石材の生産から加工、運搬までの全工程を、家島諸島島内だけで請け負うことが可能なような環境が整っていることが大きいのだろう。
現在では、岩盤の斜面に階段状になるように掘削し、まず上の段から順に穴を開けて爆破しながら採石を繰り返し、順繰りに段を降りていくベンチカット方式が主に採用されている。-1d503.jpg)
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岩盤を爆破しながら削り取って、取り出した岩を砕くのが砕石で、この工程で5種類もの石や砂という商品をつくりだすという。そうしてできた石や砂を運ぶのが石材運搬用のガット船で、もはや小さな木造の石船はとうに姿を消しているのだろう。
家島諸島のガット船の保有数は国内トップクラスで、採掘・輸送・技術総力は日本一だと、家島船舶協同組合のサイトでは自慢している。船が多ければ、その維持・補修のための設備や技術や人もいる。それらをも含めたものが、諸島の総合力なのだろう。
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ガット船で阪神地域の需要地まで運んで行く、というのはまだ想像の範囲内で納得できるが、近年では羽田空港の現場までも石を運んだというというので、また驚く。
室崎は、広い採石場から北に張り出している細い岬で、こことここから南への海岸線にはなんとか緑も残っているが、あとはほとんど岩を削り出した跡が続いている。
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