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番外:岬・崎・鼻の名前にはどのような傾向があるのか(岬・崎・鼻データベース2018改訂新版=その3) [番外DB]

▲黒崎・大崎・長崎・赤崎…が多い
 岬・崎・鼻のそれぞれの前につく名前には、どんなものがあり、どんな名前が多く使われているのだろうか。
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 日本の岬で、一番目に多い名前は黒崎という名で51あった。ほかに黒崎鼻・黒鼻もあり、これらを合わせると65になる。この最も多い名が、西日本に多く北海道にはまったくないというのも、アイヌ語源で地名が多くつけられてきた地域と、そうでない地域の違いであろうか。
 黒崎というのは、ほかの赤・白とともにその色彩の感じ方でつけられたという判断もできるだろうが、どうもそれがすべてではないような感じもする。赤や白の場合には実際にその土壌や岩の色でついた名も多いと考えられるが、黒の場合は実際に黒い岬などは、どちらかというと少ないはずで、「黒く見える」「黒々としている」といった感じ方でついたというほうが多いのではなかろうか。
 二番目に多いのが大崎で40だが、これにも大崎鼻(大崎ヶ鼻・大崎ノ鼻を含む)というのが24もあるので、合わせると64となり、黒崎グループと大崎グループが拮抗してトップグループを形成している。この名は、実際に大きな岬という意味もあるだろうが、大きい小さいは比較相対の問題なので、「大きく見える」「その付近で目立っている」といった意味合いも兼ね含んでいるように思われる。これは黒崎と違って北海道にもあるが、大崎鼻だけでみるとほとんど西日本に限られている。
 多い名前の三番目は観音崎で35、赤崎が34で続くが、鼻を合わせてみると、観音鼻・観音岬などは7しかないのに対して、赤崎鼻・赤鼻・赤石鼻まで含めると21もある赤崎グループが55となって、42の観音崎グループを逆転する。
 赤崎が島嶼部に多いというのは、実際に土壌や岩が赤いというのも当然あるだろうが、船から見るとき朝日や西日に映えて赤く見えるから、という状況も考えられる。
 五番手は長崎鼻で30。ただし、それとは別に長崎が24もあって、同数6位につけている。長崎のほかにも、大長崎や大長岬というのが5あるので、崎も鼻も合わせた長崎グループとしてみると59になり、赤崎グループを抜いて黒崎G・大崎Gに次ぐまでになる。
 つまり、日本の岬の名前で多いのは、黒崎とつく名、大崎とつく名、長崎とつく名、赤崎とつく名…がそれぞれ50以上ずつもあって大勢を占めている、ということになる。
 以下では、東日本に多い弁天崎が23だが、弁天岬や弁天鼻などを含めた弁天Gでは46となり、仏崎と仏の文字がつく名の岬は24、明神崎・明神鼻などは21でこれに続いている。
 十番目に顔を出す松ヶ鼻は20だが、松ヶ崎も19、松崎も11あって、松ノ鼻・松ヶ崎鼻を加えると52になる。そのほかにも「松」という文字がつく名前の岬を数えあげれば、14もある。これを含めて大きく松グループとしてくくってみると、66にもなる。なんと、松Gとしてみると、一気に黒崎Gを抜いてトップに踊り出ることになるのだ。
 だからといって、松Gが第一番目に多い名前として、最初にあげなかったのは、松という一字がつく名前は松山崎・松原鼻・松倉崎のような雑多なもので、それをすべて同一の名前グループとしてまとめるには、いくらか抵抗があったからだ。
 ただし、日本の岬の名前と「松」とのかかわり合い方は、確かに絵になる。海に突き出た岬の上に、松が青く立っている、茂っている。その下は荒磯かもしれないし、穏やかな砂の浜かもしれない…。
 そんな風景こそは、日本の岬のイメージとして、それを代表し象徴するにふさわしいものかもしれない。忘れずに留意しておきたい。
 
▲弁天・観音に松に竜…
 岬の名前で多いもの上位10までをリストアップしてみてきたが、そのほかに岬にどうしてそんな名前がついたか、その関連や由来ごとにまとめてみよう。
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 まず、色がつくものは黒と赤が多かったが、白崎・白崎鼻は16。そのほかに白がつく名前も含めると50を超えている。そのなかには白石崎・白岩鼻のようなものもあり、それらの白グループのいくつかは、石灰岩の露頭などが白く目立っているところからの命名だろうと思われる。
 金や青は、必ずしもそれ自体が色を示しているというわけではあるまい。
 多い名前上位10までにも、観音・弁天・仏・明神と出てきたが、神仏に関するものも、なかなか多彩で種類も多い。ほかには権現・恵比寿・地蔵・八幡・天神などが続くが、宮崎・御崎・神崎・寺崎のように、神仏を総合的に表わす名前も多い。
 それらの多くは、素朴な信仰心や神仏に対する畏敬の念が込められているものと解すべきであろう。また、実際に岬の上に祠や社・鳥居が建てられ、岬全体が神仏の領域となっている例は結構多くある。岬というロケーションを、うまく利用しているわけだ。
 恵美須・恵比寿は、豊漁を願う漁師の信仰からだろうし、住吉・金比羅のように海と航海の安全を守護するものもある。
 また、海や潮の流れの状況、岬の地形的な状況などに関わる文字が使われた名前もさまざまにある。なかでは瀬と大瀬を合わせると28になるが、これと洲17は、岬の形成の過程にも関わるものと考えられる。
 架空の想像上の動物だが、竜・龍がつく名も竜神以外に多く、34を数えている。この中の幾つかは「神」の字がついていないだけで、竜神信仰に関わるものも多いのだろうと思われる。
 そのほか、実在の動物としては、なんといっても牛がトップで、牛後に甘んじた馬には何馬身もの差をつけてぶっちぎりである。これはどうしてだろう。やはり想像するしかないが、より庶民の暮らしに近い存在として牛が抜きん出ていたということではないだろうか。農耕や運搬にも牛が先で、馬はどちらかといえば戦に欠かせない兵馬のほうが先にあったからだろうか。
 広島の沿岸で猫の岬はめずらしいと書いていた覚えがあったが、犬ほどではないものの猫も5と、象・虎・猿・蛇に並んでいる。
 植物の名前は、竹に大きく差をつけた松以外は、ほとんど目立たない。花の名では藤7のほか、梅や桃などないわけではないが意外に少ない。岬といういわば特殊な地形と、花はうまく結びつかなかった。
 鳥の名前では、岬のそばにいる鵜がやはり抜きん出る。船や漁に関連する文字が使われた名前や、戦やその武具などにからむ名前もある。また、文字自体に意味がありそうな名前では、城や番所や舘といったものがある。
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 岬は、昔の戦では重要な戦略拠点になり得た。小規模な砦のようなものや祭祀の場が、岬の上に建てられるということも多く、それが名前になっていることもあるだろう。また、船の航行を見張る監視所または関所を置く場所として岬が注目される場合もある。番所がつく岬は、海上の要衝または関所として、その役割を担う場所だったろう。
 そのほかでは、「大」や「小」の文字がついたものが多い。大崎Gには数えていないが大鼻5を始めとして、大がつく名前は96もあるのだが、これも内訳はバラバラで、要するになんにでも大はつく。同様に小も小崎8を始めとして、小がつく名前は80あるが、これもまとまりには欠け、集めてもそこに意味は求めにくい。そういう判断で、ここにはあえて入れていない。
 因みに、「中」は17あり、「長」のつくものも長崎G以外に51あった。また、カナ(かな)名前のものもアイヌ語源を含めて90程度ある。
 ここでは、同じ名前が多いものから順に集めて取りあげてみたが、その他ほとんどの大多数は個別のオンリーワンである。それこそが名前の本来なのでもあろう。そして、それにもそれぞれ理由があるのだろうが、それらについてはまとめて言及しにくい。また、個々の岬の命名の由来も、わかるものは各項目の本文でできるだけふれるつもりでやってきたが、これがなかなかそうした情報が伝わっていないので、たいていはよくわからない、というのが実情だ。そこは悩ましい。
 海岸の出っ張りをなんと呼んでいるか、そんなことはどうでもいいことで、誰も注意を払わず、どこでもそれらを意識して記録し伝えていくということが、ほとんど行なわれてこなかったためであろう。

dendenmushi.gif(2018/03/31 記)
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タグ:岬の名前
きた!みた!印(28)  コメント(5) 
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コメント 5

ハマコウ

分析すると面白いことがわかりますね。
色の名が多いのは岩や木の色に関係しているのでしょうか。
竜の名が多いのはなるほどと思います。
でんでんむしさんは、それぞれ思い出す場所がたくさんあるのではないでしょうか。
by ハマコウ (2018-03-31 11:51) 

dendenmushi

@ハマコウさん、そうなんですよ。データを拾っていく作業のなかでも、ここはこんな場所だったなあというのが、ちゃんと思い浮かびますね。だいたいは…。
今回のデータ整理にあたっては、すでに訪問したことのある(ブログに項目がある)場所にはURLを入れ、まだ行っていないところと明確に区別できるようにしました。
まだ行っていないところは、それなりに風景を想像しながら…。
by dendenmushi (2018-04-01 07:16) 

middrinn

最新記事にコメント欄が無いので、こちらに失礼させて頂きますm(__)m
御迷惑なら削除して下さいm(__)m 一連の大騒動の後、貴ブログの分析を
待っておりました(^_^;) 「本」ランキングも全く同じ展開でしたが、ただ、
1日にも何故か拙ブログがほぼ定位置化してた20位から6位に急浮上してて、
その時点で何かがあったようにも愚考(@_@;) 件のメンテ後にはnice!数が
ゼロなのに1位になってしまったので、nice!数と読者数の比重を変えたのか
と思ったのですが、元に戻りました(^_^;) とまれ、順位やnice!数を生き
甲斐とされている方が結構いることが判明したのは、収穫だったかと(^_^;)
by middrinn (2018-04-14 11:59) 

dendenmushi

@middrinnさん、やっぱり「本」ブログでも大騒動だったのですか。じゃ、So-net全体で混乱していたんですね。すると、サーバー障害とその後のメンテに問題があったのでしょうね。
それで、ランキングがグチャグチャになり、その復元に大わらわだった、ってなとこでしょうか。
middrinnさんのブログも1位になったんですね。おもしろいですね。
迷惑コメントが多発しているので、コメントを閉じたんですが、最新記事だけで以前の投稿済みには反映されないので、意味がなかったですね。
by dendenmushi (2018-04-14 16:43) 

nikki

nikkiもこちらにコメントさせていただきます。
地域ブログが以前は3000近くあったのに現在では2979
およそ20減ってます。nikkiのブログも一気にカテゴリーランキングだけ大幅ダウン。同じ文章を冒頭に3日か4日続けていただからかなとか。ほかのカテゴリーはほぼ更新されてないのにランキング入りしているのもあり。
ソネットブログの最新更新を見ているとなぜか自動車買取などのあまり意味がないブログがかなり多数あり。
by nikki (2018-04-14 22:58) 

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