1523 破崎=横須賀市走水二丁目(神奈川県)水走る水源地と突堤と海にいちばん近い学校と… [岬めぐり]

東京湾で対岸との距離がいちばん狭くなっているところとしては、観音崎と千葉の海岸といういいかげんな情報もあるようだが、観音崎から最短の千葉は磯根崎で、その間9.4キロある。観音崎より北西寄りの走水港にある旗山崎と千葉の細長くとんがっている富津岬との間は7キロほどで、ここが東京湾がいちばん狭くなっているところだ。
054 観音崎=横須賀市鴨居(神奈川県)あの頃キミは若かった
073 富津岬=富津市富津(千葉県)死んだ筈だよお富さん
074 磯根崎=富津市小久保(千葉県)色即是空あると思えばない東京湾観音
この狭い海域を、たくさんのいろいろな船舶が往来する。その数は1日におよそ約600隻といわれる。見ているとなかなかおもしろいのだが、通り過ぎるまで時間がかかるので、よほど暇をもてあましていないと楽しめない。また、それを楽しむ場所としては、はやり航路がより近い観音崎のほうが適している。

富津岬の西には、第一海堡・第二海堡という明治期に東京湾要塞計画でつくられた人工島の砲台跡があり、神奈川寄りには同じく要塞化が進められた猿島がある。

破崎の西には伊勢町と呼ばれる漁業集落があり、そこから長い突堤が築かれて、船溜まりを沖に囲むようになっている。破崎は、そこから眺めるのがいちばんよさそうだ。


ここまでやってくるには、まず京浜急行本線の馬堀海岸駅で電車を降りた。馬堀海岸駅の次は、終点の浦賀駅である。あれっ? それじゃ浦賀へ行くのは、各駅停車しか走らない浦賀線で、それは本線じゃないのでは…? 本線は久里浜・三崎口のほうへ行くのではないか?

そう思ってしまうが、これが本線で、堀ノ内駅から分かれた久里浜・三崎口へ向かう線は、久里浜線ということになっている。
これも浦賀が造船所などで栄えていた頃の名残りで、各停が走るこちらがもともと本線であったことに間違いないのだろう。特急・快速が走る久里浜線は、ずっと後から三浦半島に住宅がどんどん増え始めてからできた線なのだ。

馬堀海岸駅の周辺は、比較的新しく住宅地が開けた地域で、これもおそらくは埋め立てでできた整然とした住宅地が広がる。ヤシの並木があるところなど、いささかの主張があるのだろう。その東の丘の上が防衛大学校のあるところで、その丘が急斜面で北の海岸に落ちたところが破崎と突堤のある走水一丁目になる。

岬に隠れるようにしている建物は、「日本で一番海に近い学校」を謳う横須賀市立走水小学校の校舎の一部だろう。

破崎の東にある走水港の東西を扼する旗山崎と伊勢山崎については、
072 旗山崎・伊勢山崎=横須賀市走水二丁目(神奈川県)さがむのおぬに
としてかなり早い段階で取りあげていた。そこでは、「“走り水”というからには、その海流も早瀬を巻いて流れているのだろう。」と書いていたのだが、そうやらそれは違っていたらしいことが、破崎を訪ねてわかった。

伊勢町の海岸には、横須賀市の水源地があり、今も湧き水が豊富に湧出している。その水を横浜製鉄所まで水道を敷設して引いたのも、ヴェルニーさんの功績で、湧き水にもその名がつけられている。だが、ここの湧き水はそれ以前から有名で、船に積み込んで売りに行っていたとも言う。となると、「走水」の名は海流の速さではなく、ほとばしる湧き水のことだったのだろうか。

日本武尊と弟橘姫の伝説もあるこの走水の岬には、御所ケ崎という名をうたうこともあるが、その名は地理院地図にはない。伝説については072項で触れたが、読み返してみるともうひとつ重要な証言がそこではなされていた。
「岬」というものは、都会にはないものらしい。旗山崎から先は、横須賀・横浜・川崎・東京・千葉と東京湾岸をぐるりと360度回ってみても、そこ走水の前に見えている富津岬まで次に連なる岬はないのである。
と、そこで書いていたのだ。それを書いたのは2007年だが、破崎とその前の大地ノ鼻、大山崎は、その時点では地理院地図にはなかったことが、これで確かに証明される。また、
真鶴岬からここまで、神奈川県の岬はこの再訪シリーズですべて収録してある。いちおう地元なので、せめてここくらいは地図にある岬と名のつく(「崎」「鼻」を含む)ところはすべて網羅しておこうと考えた。もっとも、これから先も海岸線をもつ全県について、それを実行するのは無理な相談というものであろうが…。2007/01/13再訪)
とも書いているので、この後にやっとつまみ食いではなく全岬・崎・鼻をめぐるという基本方針が定まったと言える。

ハナから無理な相談と弱気だが、確かに生きて元気なうちに全部終えるのはむずかしいかもしれない。ここまできてもなかなか道は半ば。近畿から以東の東日本はだいたい終わったが、まだ西日本が歯抜け状態で残っている。
ここらで一休みしながら、いつどこで行き倒れるかもしれないので、これまでのデータ整理にも取り組むことにしようか。

▼国土地理院 「地理院地図」
35度15分55.13秒 139度43分41.59秒


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