番外:奥入瀬川=十和田市奥瀬(青森県)川は太平洋まで注いでいるが焼山から子ノ口までがいわゆる奥入瀬の渓谷 [番外]
観光客が殺到する紅葉の時期にはだいぶ遠くシーズンからはずれていたが、それでも石ヶ戸の休憩所付近には多くの人があふれ、道の脇の渓谷中唯一の駐車場はたくさんの車で埋まっていた。
奥入瀬川は、焼山=子ノ口の全区間道路が並行して走っており、車に乗ったまま通っても、いくらかはその風光は感じられるが、やはり渓谷の水の流れのすぐそばを並んで流れている道を歩かなければ、奥入瀬川に行ったとも言えない。石ヶ戸休憩所と駐車場付近が人と車でいっぱいになるわけもそこにあろう。
おやおや、ここにもまた大町桂月(番外:仏ヶ浦)が…。
でんでんむしもその大勢の観光客の一人にまぎれて、初めての渓谷を歩いてきた。往きは十和田からの十和田観光鉄道バスに乗って焼山まで行き、そこでJRバスに乗り換えて川に沿って渓谷を遡る。子ノ口でJRバスを降りて、今度は遊覧船で十和田湖を渡って休屋まで行った。復路は休屋からまたJRバスに乗り、奥入瀬渓谷の途中で降りて、雲井の流れから石ヶ戸まで歩いてきた。
いったいどれだけ多くの人がこの渓流を訪れ、自然の豊かさを感じさせる森と水の語らいに耳を傾けたことだろうか。柄にもなく詩的になりそうなので、それは即やめて、いつものペースに戻さなければならない。
コトバンクによると、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典では、奥入瀬川について以下のように記述している。
青森県,十和田湖の東岸子ノ口 (ねのくち) に端を発し,東流して太平洋に注ぐ川。全長 67km。十和田湖から流出する唯一の川で,多くの渓谷を刻みながら焼山までの約 14kmは北流,東転してからは,三本木原の台地を刻み,両岸に河岸段丘をつくっている。子ノ口-焼山間は十和田八幡平国立公園に属し,日本一の渓流美を誇り,奥入瀬渓流 (特別名勝・天然記念物) として親しまれている。渓流の両側は山地が迫る急斜面で,火山岩や砕屑岩を切って雲井,白布などの名瀑や馬門岩,屏風岩などの奇岩が続き,ヒバ,ブナ,カエデ,トチ,ナラなどの原生林におおわれる。河水は,焼山の発電所や,中・下流域の灌漑用水に利用される。
河岸段丘左岸上の三本木原は、十和田湖の水が流れる奥入瀬川が運んできた土砂や、八甲田山の噴火による火山灰などが堆積してできた台地と考えられる。
前項(「番外:十和田中央」)では、その台地の上に十和田の街をつくった人工河川の稲生川について述べたが、最初に奥入瀬川から水を引き込んだ地点は、法量というところだったらしい。そこは十和田からのバスの終点である焼山・渓流館から13キロほど下流にあたる。狭い谷が若干広くなったところで、その北側の山に導水管を掘った。
いきなりトンネルから始まったのだが、当時の土木工事技術からみてもたいへんなものだったろう。まっすぐに長いトンネルを掘る技術はなかったからか、あるいはトンネル南側の山腹が開けているという条件を利用してか、まず山腹から何箇所も横穴を掘り、それから左右に広げて左右のトンネル同士を結合していくという工法が取られたという。
潰れかかかった旅館やホテルを高級リゾートに再生するという手品みたいな商法で、全国に手を広げている会社のホテルが焼山にもあって、旧施設なのかなんなのか三沢の系列ホテルの名もあちこちに残るチグハグさ。
焼山からJRバスに乗り換えるのは、この奥入瀬川から十和田湖に出入りするバス路線は、JRバスの独占になっているからだ。青森から八甲田の南を越えて蔦温泉から焼山にくるのと、新幹線八戸から十二里温泉経由で焼山にくるのと、ふたつの路線がここから奥入瀬川を遡って行く。
十和田湖遊覧船ももっている十和田観光電鉄(バスと船しかないがまだ「電鉄」を名乗っている)も、なぜかこの奥入瀬区間だけはJRに委ねている。このへんもなにか理由があるのだろう。
と思っていたら、石ヶ戸のバス停でJRバスの標識と並んで、十和田観光電鉄の標識があった。ただし、予定時刻表の部分の表示は剥がしてあった。ということは、かつては十和田観光電鉄のバスもここを走っていたのを撤退したわけだ。撤退の理由は、まずひとつしか考えられない。
奥入瀬初体験のでんでんむしの第一印象は、思っていたほど水が青く透き通るような清流というわけでない、といういささか残念なものだった。十和田湖という巨大な池の溜り水を子ノ口から流しているだけだから、淵や淀みではいくらか乳白色に濁っているように見えるのもやむを得ないのだろう。
普通、渓谷沿いに道路が並行していると、えぐられて深くなった渓谷と道路の間にかなりの高度差があるものだが、ここではほとんどその差がなく、川の流れと道がほぼ近い。バスの車窓からでも渓谷の眺めがある程度楽しめるのは、そのためだろう。
上流ではこうだが、三本木原台地の南では、流れと台地の高度差は30メートルにもなる。
車道とは別に歩行者のための遊歩道も、川により近いところを左右に細く通っているが、一部では車道脇を歩くことになる部分もある。
確かに、緑の渓谷もいいけれど、ここを歩いていると、また紅葉の季節にも歩いてみたいような気になってくる。
▼国土地理院 「地理院地図」
40度31分35.13秒 140度58分26.97秒
東北地方(2017/09/06 訪問)
タグ:青森県
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