1472 厚瀬崎=島牧郡島牧村字港(北海道)旧トンネル・旧道・廃道歩きの情報がいっぱいあるそのなかに懐かしい名前を発見 [岬めぐり]
厚瀬(あっちゃせ)崎は、本目漁港の西にくっついているし、本目岬との間も800メートルしか離れていない。したがって、建物の密集した港の側からはほとんど展望がきかないが、岬の先端には小島のような岩山のようなものが盛り上がっているように見える。
思う間もなくトンネルを…と、くぐり抜けるのは厚瀬トンネル。上りと下りの車線が別々のトンネルになっているようで、出入口がふたつある。340メートルほどの長さだが、この岬もさほど大規模な出っ張りではないということ。
70メートルほどの高さが海岸に飛び出していて、周りは全部、崖がぐるりを取り巻いている。当然、トンネルでなければ通れない。地理院地図には、港よりの岬先端付近に、)( の表記が残っているので、ここもトンネル開通以前は、この崖の周りを回って通る道があったのだろうか。
帰りに通った海寄りのほうのトンネルには「新厚瀬トンネル」という名前があったので、こちらが後から付け足されたのだろうか。
念のために調べてみると、厚瀬トンネルの竣工は1965(昭和40)年であり、「新」のほうは1996(平成8)年であった。検索で出てくる情報は、旧道廃道を好んで歩く人々の記録が、群を抜いて他を圧倒している。そういうのをつらつら眺めていると、この先の大平(おおびら)トンネルもそうらしいし、せたなの虻羅トンネルもそうだという。
そういう旧道廃道愛好家のブログやサイトの一覧に混じっていた、あるなつかしい名前を発見した。北海道旧道保存会のサイト「裏サンドウ喫茶室」に紀行を掲載している堀 淳一さん。その当時は確か、北大の物理学教授で、地図や地理が専門ではない。
実をいうと、でんでんむしもいっちょまえのしごと人間だった時期も長く、仕事仕事にかまけてひさしく省みることのあまりなかった地図に、再びぐっと引き戻してくれたのがこの人の専門外の処女作(であったと思う)「地図のたのしみ」(1972 河出書房新社)だったのだ。この本は、その意味で個人的に記念すべき本だったが、その後版元を変わったりしながら、文庫にまでなっているし、類似の出版も相次ぐきっかけにもなっている。
そのサイトでは、堀さんの紀行文は2009年で終わっていた。
厚瀬崎の西側には、栄磯・豊浜と集落があるが、この付近は海岸線の沖合にまで岩礁地帯が続き、岩島が点々と連なっている。
西側から見た厚瀬崎は、崖の先になにかの台のように見える岩が印象的だが、この岩と同じものを東からも見ていたはずだが、ずいぶん見る角度によって違うものだ。
栄磯と豊浜の間には、少し高い崖浜の上のところを国道が通っている。そこから見ると厚瀬崎の向こうで灯台を載せた本目岬がかぶって見える。
豊浜の南にある大平トンネル付近にも、ワスリと名づけられた岩の出っ張りがあるのだが、1キロ以上もあるトンネルの陰に隠れている。
そういえば、島牧も御多分にもれずのアイヌ語源で、「シュマコマキ=(岩石の後背)の意」だというのだが、こういう権威の解説を読んでもピンとくるのは少ないのが困る。
このトンネルを抜けると泊の集落で、村の中心というわけでもなさそうだが、なぜか島牧村の村役場はここにある。
村のサイトにある「村の概要」では、
面積は437.18k㎡、人口は約1,600人の漁業を基幹産業とする風光明媚な村です。
本村の大部分を占める森林の中には10,700haを有するブナ原生林があり、その懐には落差70m、幅35mの「日本の滝100選」に選ばれた「賀老の滝」があり、訪れる観光客を楽しませています。
とあった。明治末には大平川を境にして東西二村に分かれていたのを、1956(昭和31)年に東西を合併して現在に至る。ずっと浮いた噂もなく、単独の村であり続けてきたわけだが、それにはこの村の地理的な条件も関係していたのだろうと思われる。
面積は結構広くて寿都町の何倍もあるが、そのほとんどが国有山林で、とくに林業が盛んというわけでもなさそうで、漁業を中心とする村の集落は、およそ43キロも続く海岸線の国道沿いに集まっている。
そして、隣接市町村との交通は、実質的に寿都へつながる国道229号線(と276号線)のみであるという、いささか表現は悪いがいわば袋小路のどん詰まりのようなところにあるからだ。
バスの運転手さんに「役場がなんかあまりらしくないところにありますね」というと、「みな海岸に点々とあって、小学校はずっと離れたところにつくったしね。」と言う。このときはまだ、この後に起こる事態を想像もできず、その小学校の先まで歩くとは予定も想定もしていなかった。
▼国土地理院 「地理院地図」
42度41分29.53秒 140度1分12.78秒
北海道地方(2017/07/01 訪問)
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