1471 本目岬=島牧郡島牧村字港(北海道)富浦、歌島、美川、栄磯、豊浜、永豊などの字地名の間にある断崖と灯台の岬 [岬めぐり]
国道229号線(と276号線)が、弁慶岬をカーブで回りきってしばらく南下すると、寿都町から島牧村に入る。その境界から約10キロも南南西方向に走ってきたところに、本目岬はある。
バスの前方にやっと岬が見えてくるまでの間も結構長く、その間に、富浦、歌島、美川といった小さな集落が点在している。けれども、弁慶岬から南西側の海岸では、ずっとのっぺりした凸凹の少ない海岸が続くので、港らしい港はない。港がないということは、集落も大きくなりようがない、ということではないか。
富浦、歌島、美川といった地名は、いわゆる美称の色彩が濃い名前で、さらに先ある栄磯や豊浜、永豊などと合わせて、なにやら人々の願望が込められているような気もする。と、いちおう印象操作をしておいて…。
歌島の集落までは、比較的海岸から少しだけ遠い道が続き、歌島沼を過ぎると、静かできれいな砂浜の海岸が現れる。この付近は本目海岸といって、村営のキャンプ場かなにかあるという情報も、どこかで見かけた。本目というがこの浜の大部分は美川である。
名もない小さなコブを回り込むと、折川が流れこむ本目の集落がある。「本目」という名の由来もわからないが、ことばとしては囲碁の用語と結び方の名前と、ふたつ同じ名前が使われている。
本目集落には郵便局も駐在所も神社もお寺もあって、島牧村東部では大きな集落となっている。
ただ、折川の河口であるということが、ここに港をつくることを妨げた形跡(情況証拠)が、現在の地図をつくっている。河口というのは、一般的には港湾を設けるのに適地と言えるはずなのだが、寿都の朱太川のように、その条件が合わない場合も多く、河口だから港というわけでもない。本目が港に適さないと判断されたのは、川の氾濫もあったかもしれないが、何より湾が浅く風浪を避けるという港の最重要条件を満たしていなかったからではないだろうか。
そこで、本目の人々は周辺を物色してみたに違いない。そうして、本目から西へ2キロも海岸を進めば、ふたつの岬の出っ張りに囲まれた、港の適地があることはすぐにわかっただろう。
彼らは、迷わず集落から離れたそこに港をつくることを決め、実行したのではないか…そんなことが想像できそうだ。
それなら、最初からそこに集落をつくればいいじゃないか…って? 残念! そこは海岸からすぐ崖山になっていて、後背に集落が広がる余地がまったくないのです。
そこで、集落からは離れたその場所を示す字地名も、ずばり迷わず「港」。
本目岬は、その港を囲む北東の出っ張りで、南西の出っ張りは厚瀬崎(あっちゃせざき)という。
本目岬のほうは、切り立った断崖に囲まれ、その下には岩場が広がっている。そう高くない岬のてっぺんには黒白の灯台も立っているが、その写真は全部西から東へ向かってのもの。西へ向かう車窓からは、灯台はてっぺんの一部だけしか見えない。港と海の安全と豊漁を願ってのことであろう、神社もあるようだが、それはバス車窓からは確認できなかった。
西行きの車窓からは全貌を現わさないこの灯台は、帰りのバスからは、本目港の側から岬の岩崖とともによく見えよくわかる。
道路からもそう隔絶していなくて、集落と港の行き帰りに通る本目岬は、ちょうど使い勝手のいい岬だったはずである。
そういえば、本目結びというのは漁網に使う結び方なんだけどね。ま、関係ないんだろうね。
▼国土地理院 「地理院地図」
42度44分42.61秒 140度6分51.27秒
北海道地方(2017/07/01 訪問)
タグ:北海道
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