1437 弁天岬=奥尻郡奥尻町字宮津(北海道)“バスセンター”から稲穂方面行き町有バスに乗って北へ向かうと… [岬めぐり]
奥尻のフェリー発着場は、奥尻市街よりも北に外れていて、そこには岸壁にフェリー関連の建物がひとつあるだけで、“バスセンター”と町有バスの時刻表にあるところは、岸壁の端にある駐車場の隅っこのことだった。
そこには、中小二台の町有バスが停まって、発車時刻を待っている。中型のほうのバスが青苗から神威脇まで行く便で、小型バスのほうが稲穂方面、野名前まで行く便である。それぞれ折り返し便で、またここに戻ってくることになっている。
町有だから運転手さんも、町の職員なのか。中型のほうは女性、小型のほうは男性だったが、当然、観光客以外の島の人とはみんな顔見知りで、毎日乗る中学生や高校生など、どこで降りるかも何も言わなくても意思が通じている。ピンポンと鳴らないのにバスが停まったなと思うと、のそのそと後ろのほうから降りてくる。男の子は黙ったまま降りていくのが多いが、なかには挨拶をしていく子もいる。
これが島のおばさんとなると、なにやら会話もあるが、聞いていても半分もわからない。津軽弁が入ってきていると知って納得した。津軽弁は、なにしゃべっているのか、まったくわからない。
南回りを運転していた女性運転手さんによると、この日は休日だったが、それでもこんなに島外のお客さんが多いのはめずらしい、という。確かに島以外からの観光客らしいのは、でんでんむし以外にも数人いたけど…。
奥尻島には、小学校と中学校が、青苗と奥尻にそれぞれ2校ずつあるが、このうち中学校のほうは統合されて、赤石岬の上にある奥尻高校の隣に移る計画らしい。その高校も、“町立高校”になるようで、それらは28年度中のことらしい。
泉谷しげるのサインが車体横中央に大きく描かれた小型バスは、運転手さんの話だとスクールバスにも使われているという。なぜ泉谷しげるなのか。
それは、彼の支援活動による募金で、このバスを購入したからなのではなかろうか。あるいは、その支援に感謝する町の意思表示なのかもしれない。
北海道出身の泉谷が、1993年に東京で始めた奥尻島救済キャンペーン「一人フォーク・ゲリラ」と題した路上チャリティーライブは、大きなインパクトを与え、他のアーチストなどをも刺激したが、本人自身がこれを契機として以後、雲仙普賢岳噴火災害、阪神・淡路大震災救済、宮崎口蹄疫被害復興支援、東日本大震災支援チャリティー、福島県各地の避難所めぐり、そして日本全国の地域活性イベントへと、その活動を続けることになるのだ。
そういう記念すべきバスに、町が自称する“バスセンター”から乗り込んで、今度は北へ向かう。こちらの路線は乗客はでんでんむし一人だけ。バスは、仏沢、球浦、東風泊(やませどまり)を過ぎると、大きな坂道を登る。その坂を登ったところに奥尻小学校と、その日の宿があるのだが、すぐにはそこで降りない。
この日の行程は、バスダイヤの都合を考えて、まずフェリー待合室のロッカーに荷物をおいて、北回り路線の終点の野名前まで行く。そこから折り返してさいの河原で降り、ここで次の便でバスセンターに戻り、またの折り返し便で奥尻小学校前の民宿に泊まる。そういう計画になった。
これも、当初考えていたせたな港から奥尻へ往復する計画での行程とは異なるわけだ。もう、函館本線・室蘭本線は復旧したのだろうか。だが、それもせたなルートを放棄した今となっては関係がない。
奥尻小学校は、東海岸の北寄り、奥尻中心街からは少し遠い宮津にある。島の北から通う子と青苗小学校の位置関係から、かつての宮津小学校を統合して奥尻小学校にしたらしい。
なぜそう思ったかというと、バスの時刻表では“奥尻小学校”とバス停名はなっているが、乗って走っているバスの車内に流れるアナウンスは“宮津小学校”となっていたからである。運転手さんに確認すると「ああ、テープまで直せないんですよ」と言う。
小学校を過ぎると、坂は下りに向かい、その先に赤い屋根の建物が見えてくる。これが宮津弁天宮。ここが弁天岬なのだ。その海の先には、瀬棚の山と岬が見えてくる。
弁天宮を載っけた小山には、バスの走る道路からも階段を降りて行けそうな感じもするが、どうやらここは深く切れこんだ鞍部になっていて、弁天宮に行くには港からの別の道から登るのがメインのようだ。
岬はこの小さな丸い小山の下で、それは帰りに北から南に向かって走るバスの車窓からでないと見えない。下に鳥居があるのがわかるが、ここから急斜面を164段の階段で登ると弁天さん。
ここに弁天さんを祭ったのは、江戸時代の大漁祈願からというが、もともとからアイヌのチャシ(砦)があった。宮津という地域名も、弁天宮がある湊だからだろうと思っていたら、“ミヤツ”というのはアイヌ語の「チャシ・コツ(砦の跡)」からきている、とある情報にはいう。ええっ、そうなの?
いつもこういう語源情報を見るたびに思うのだが、なんで“チャシ・コツ”が“ミヤツ”になるのか、そこんところを説明してくれる情報はないんだよね。
▼国土地理院 「地理院地図」
42度12分36.76秒 139度33分0.67秒
北海道地方(2016/09/04 訪問)
タグ:北海道
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