1427 屏風立岩=奥尻郡奥尻町字湯浜(北海道)屏風のような立岩と立ち寄り湯温泉と島唯一のホテルもある神威脇 [岬めぐり]

立岩はめずらしくないといっても、ここのはその名も“屏風”がついた立岩で、大きな岩島がふたつくっついたような形に並んでいる。これが屏風のように立っているということから、注目されて名がついたのだろう。

岬の名はないが、道路がカーブしてトンネルで抜ける岩の尾根もあり、その隣でも岩の根が続いている。これらを一体とした岬とみても差し支えないのだろう。

トンネルの北側から見ると、屏風とはこれかもしれない、という気がしてくる。

ここのトンネルは神威トンネルで、87メートル。北国岬のところにあった湯の浜トンネルも幌内トンネルも100メートルを超えていた。

実は、奥尻島ではトンネルの数が思いのほか少ない。平地が少ない海岸線を回っている道路には、崖を繰り抜いたトンネルも多いのではないかという予断もあったのだが、この南にある鴨石トンネルを入れて、計4つしかない。
その予断を覆したのは、海岸線がおもに海岸段丘で形成されていたからであった。細かい尾根の凸凹があると、トンネルも多くなるのだが、この島では段丘が続く区間が多いので、川筋があっても岬が少なく、それを貫くトンネルも少ない。

そのほかに、空港の近くと東海岸北部の勘太浜に覆道があるが、奥尻島の西海岸にだけ4つあるトンネルは、いずれも小さな岩尾根を貫くものである。
屏風立岩のところにあるのは、そのうちのひとつの神威トンネルだが、“神威”もまた北海道の名で、“カムイ”とは神格を持つ高位の霊的存在を指すアイヌ語からきている。なので、当て字にもいくつかあるがそういう読みの地名は多い。

屏風立岩のすぐ南にある、西海岸では最北に位置し、小さな漁港をもつ酒楽の名が神威脇。集落の南には神威脇川も流れているが、なぜ「脇」なのだろうか。


神威脇川の源流を遡っていくと、奥尻島の最高峰である神威山(676メートル)に行き着く。この山の麓だから神威脇になったという想像もできる。この山の上に自衛隊の基地(レーダーサイトのようなもの)があることも、前にふれた。

この集落は温泉でも有名らしく、フェリー乗り場においてあった町観光協会の作成になる「奥尻島まるごとマップ」には“神威脇温泉保養所”という施設が明記されていた。
それとは別にも、集落南の丘の上には“温泉ホテル緑館”というのもある。震災で消滅した幌内の温泉を含めて、奥尻の温泉はこの地域だけに限定されている。

温泉保養所というのはいわば名ばかりで、要は立ち寄り湯であるが、これも町が運営している建物も設備もかなり年季が入っているので、震災前から同じものを使っているらしい。

神威脇漁港のそばにあって、源泉かけ流しの湯は熱めで、温泉成分が結晶化して湯わき口などに茶色く固まっている。はて、これはどこかで同じようなのを見たぞ。

「澗」がらみで前項に紹介した「860 ヨリキ岬」の項では、国民宿舎「あわび山荘」に泊まったが、そこの温泉のそれはなかなかお目にかかれないくらいすごいものだった(写真はない)。
せたな町の大成区貝取澗の温泉から、西へ40キロ離れた奥尻島の神威脇の温泉も地下ではつながっているのかもしれない。

神威脇の北では、崖を削って防護措置を講じる工事が進められていたが、集落の部分は崖もなく、緩い傾斜地になっている。湯ノ浜温泉ホテル緑館は神威脇川を挟んで反対側の丘に、とんがり帽子の塔を備えた建物が目立っている。

ここは島では唯一と言ってもいいホテルで、当初は札幌でビルやグリーンホテルなどを経営する会社が始めたが、後に島の観光会社の経営になったようだ。

当初は、ここに泊まる計画も考えていたのだが…。

▼国土地理院 「地理院地図」
42度10分32.22秒 139度24分21.49秒




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