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1386 薄木・粟辺の無名岬=三宅村阿古(東京都)溶岩流が海に達してできた“吾輩も岬である。名前はまだない” [岬めぐり]

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 まだ2000年噴火のずっと以前に、三宅島の2万5000分の1の地図を買ってきて眺めていたことがある。どういうわけか、火山島に行ってみたかったのだ。そのときは、結局地図を眺めるだけで終わったのだが、島の南部の地形に引きつけられた。大小のマール(水蒸気爆発によってできる縁のある円形火口)がいくつもあるし、北から南の海に向かう溶岩流の形跡がいくつもあった。
 その地図は、1983(昭和58)年の噴火後の修正を施したものであった。
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 1983年の10月3日、雄山の南西山腹の二男山付近に生じた割れ目から噴火した。いわゆる割れ目噴火という形で、地割れが上下に成長しながら火口となって噴火する。気象庁の記録ではこの噴火に(溶岩噴泉)とかっこ書きしているので、溶岩流が特徴的であったものだろう。
 溶岩流は、火口から主に3方向に流れている。北西方向に流れ出たものは阿古地区の民家を埋没し焼きつくし、火山体験遊歩道を今に残している。南西方向に流れたものは、谷の途中で止まり、阿古漁港に被害はなかった。そして、尾根のピークに当ってそこから南に向きを変えた流れが、薄木の東をかすめ、ほぼ粟辺の集落と県道を乗り越えて、とうとう海にまで達している。
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 粟辺の県道から北側には、黒い溶岩原が広がる。その上のピーク付近が、1983年噴火の火口が開いたところだろう。
 そこから南西に斜面(写真では尾根の向こう側)を下り、272ピークのところで南に流れを変えたため、粟辺からみると、山を越えて突然流れ出てきているように、はっきりとその黒い流れが固まったままだ。
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 その溶岩の様子は、現在でも植生に覆われることなく、ほぼそのままのようである。
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 そして、県道と集落を越えて、島の南海岸にまで流れ込んだ溶岩流の先端が、平らな岬となって終わっている。
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 現在の地図では、その岬には名前はついていないが、何本かの出っ張りとともに、東寄りに少し大きな溶岩の塊が認められる。それが1983年の噴火によるものかどうか、確認しようと古い地図との比較もしてみたのだが、どうもはっきりわからない。この無名岬にいずれ名前がつくことになるかどうかもわからない。
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 このときの噴火では、割れ目噴火とともに海岸でも、新たな噴火口も開いて、大規模なマグマ水蒸気爆発を起こしていた。
 粟辺の集落をも押し包んだであろう溶岩原と海中に流れる先端の岬が望める風景の中央に、ひときわ目立っている三角形がある。これが、そのときに新たにできた火口の名残りらしいが、それはまた後でね。
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 記録では、1983年噴火での死者はゼロだったとある。全体に、何度も大噴火を繰り返している割に、三宅島では人的被害は少ない。人口密集地でないことと、昔からの学習効果もあろう。それと、溶岩の流れは多少の避難のための時間もつくってくれる。
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 県道の歩道脇に、これも道路工事で移したかのような、石を立てた墓石のようなものがあり、花が供えてある。名前の文字を写真に撮るのは遠慮したが、姓の異なる複数の名が記されていた。そのときは、粟辺の犠牲者の家があったところなのだろうと思ったが、死者がゼロだという1983年でも2000年でもないとすると…。
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 このとき海岸付近で続発した水蒸気爆発は、意外な特徴で大きな被害を生じたらしい。それは、火山弾というのとはまた少し違うようだが、多量の大きな岩塊が周辺に落下したというのだ。
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 県道の脇には旧歩道がそのとき落ちてきた石とともに保存されていた。最初、その石を見たときにはきれいに並んでいたので、道路工事のときに並べて置いたものかと思ったが、東京都三宅支所が立てた擬木の大きな標識案内板で、そうではないとわかった。空から降ってきた大きな石はそのまま“噴火災害保存箇所”として保存されたのだが、この案内板は1983年以降2000年噴火以前に立てられたものだろう。
 この付近ではもっと古くは、1712(正徳元)年と1763(宝暦13)年にも雄山や薄木の噴火が記録されていて、山の斜面には溶岩流か火砕流がつくったとおぼしきカール(氷河ではないのでそうは呼ばないのだろうが、地形的にはほぼ同じような凹地の谷)が刻まれている。
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▼国土地理院 「地理院地図」
34度2分55.88秒 139度29分34.18秒
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dendenmushi.gif関東地方(2016/05/20 訪問)

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