1370 素石ヶ鼻=八丈町樫立(東京都)いかにも火山島らしいみごとな風景をつくっている岩と断崖の海岸線 [岬めぐり]

ひょうたん八丈島の下のほう、東山(三原山)の南側では、住所表示が西から樫立、中之郷、末吉と三分割される。これらは、いずれも東山南麓の150メートルくらいのところを通っている都道215号線に沿って、それぞれの集落が続いていくからだ。

樫立と中之郷はほとんど隣につながっているが、末吉だけは山を一つ越えた東にはずれている。そして、人家のない東山の東海岸を全部含みながら、三根に接していく。その集落の固まり具合は、地理院地図ではわかりにくいが、iOSのマップによるとよくわかる。

冒頭にあげた都道215号線から海岸に向かう道は何本かがくねくねとあって下っているが、海岸にまで降りられるのは、樫立では乙千代ヶ浜の畳根の道と、中之郷では温泉に向かう道だけである。それ以外の海岸は、ほとんど崖ばかり。


つまり、この付近は道からも集落からも、海まではだいぶ距離があり、隔てられている。したがって、“樫立住民総会百年記念”の像もある。樫立の都道からわずかに海が見えるところも、こんな感じ。

海へ降りて行く道は結構複雑で、入り組んでいる。基本的には下って下って行けばいいだろうとたかをくくっていたら、一度は行き止まりのヤブの中に突っ込んでしまったし、もう一度はもうひとつ西の道に入って素石ヶ鼻の上に出ようと思ったのに一つ手前の道に降りてしまったりした。


そういうよそ者のために、いちおうところどころに標識はあるのだが、「おっちょが浜」のこんな標石でまっすぐ降りて引き返すはめになった。引き返してよくみたら、下の矢印が→…。よく見ないで、まっすぐ突っ込んで行ったアンタが悪い!

そんなこんなで、うろうろしながらも、なんとかメインの道路に出て、乙千代ヶ浜が見える畳根の上に下ってきた。この道はやけに広くて立派だが、50メートルの崖の上から、さらにUカーブを繰り返しながら海岸の岩場まで降りて行っている。

下を見ると、畳根(千畳敷などと大げさには言わない)という岩場が広がっていて、その岩棚のなかにプールが…。どうやら、小学校のプールらしい。このために立派な道路もつけられているのだ。四方を海に囲まれていて、泳ぐ場所をこうして確保しなければならないというのも、どこでも共通しているようでなにか皮肉な景色だ。

乙千代ヶ浜は、そのプールから北西に連なる長い黒いごろごろ石の海岸であり、その先にちょんと飛び出ているのが素石ヶ鼻である。
こうした八丈島の溶岩の岩根岬でも、横から見るとそれなりに岬らしくも見えるものだ。

ここから、素石ヶ鼻、奈古ノ鼻とその上に屹立する黒砂の峰、さらにその奥に八丈小島が半分覗いているというこの風景は、なかなかみごとである。

火山島である、八丈島らしい風景のひとつであろう。

「素石ヶ鼻の上に出ようと思ったのに一つ手前の道に降りてしまった」と書いたが、実はそれは別の日のことであった。素石ヶ鼻の上に向かうつもりで下りた道が違っていたらしく、なかなか崖の上にも出ないし、隣に見えるはずの黒砂の峰も少し遠くて近づけない。


溶岩台地にもいくつもの溝があるので、尾根筋を一つ間違えても、横に行くことができない。

入り込んでしまった道の先には、大きなビニールハウスが並んでいて、なにかヤシかシダのような葉っぱが見えた。フリージアなどの花卉園芸や観葉植物の栽培は、島では重要な産業のひとつである。

なにかで読んだ記憶があるが、東京のビルなどで使われている鉢物植木や観葉植物の類は、そのほとんどが八丈島がらみらしい。
なかでも、町の木にもなっていてそこらじゅう街路樹などにもなっているフェニックス・ロベレニー(和名:シンノウヤシ)というヤシ科の植物は、島では「ロペ」と呼ばれ、稼ぎ頭だというから、これもそうなのか。

▼国土地理院 「地理院地図」
33度3分59.42秒 139度47分26.26秒




タグ:東京都
コメント 0